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中央値を動かす

社会問題について考える中で、最近思っているのは平均値ではなく中央値を動かさなければいけないということだ。

中央値とは、たとえば年収100万、150万、1,000万の3人がいるとして、その真ん中である150万のこと。
(ちなみに平均値は、この場合は約416万になる)

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上記の例で中央値を上げるにはどうすればいいか。1,000万の人が2倍や3倍の年収になっても何も変わらない。中央値を変えるには、最高額の人ではなく150万の人の年収を上げなければいけない。

では、社会問題における中央値を動かすとは、どういうことだろうか。

夫婦別姓の問題であれ、人種差別の問題であれ、大体は旧来型の古い考え方と、先進的な新しい考え方みたいなものがある。多くの場合は、単に腕力が強い者、あるいは多数派の言い分が古くから採用されており、社会の動き方としては、そこから徐々にマイノリティや力の弱い人々の権利が回復していくみたいな流れになっているわけだけど、その新旧の軸において誰か特定の一人だけが猛烈に先進的なことを頑張ったところで、社会は変わらない。社会が変わるのは、その大多数が旧来の考え方からより合理的でより多くの人が幸福になれる新しい考え方に変化・移動したときであり、ここではその状況を「中央値が動いた」と形容している。

中央値を変えるには、社会全体、対象となる構成員の全体が変わらないといけない。「全員」である必要はないが、その大まかな「全体」に影響を与える程度には大きな変化が必要になる。社会が変わるというのはそういうことで、そういうイメージを持たないと、つまり平均値ではなく中央値を変えるというイメージを持たないと、求める社会にはならない。誰か一人だけが変化しても意味がない。

一人ひとりの変化が無駄だということではない。社会をまともにしたい、もっと良くしたいと思ったら、まずはどんな他人よりも先に自分自身が率先して変わらなければならいが、ただそれだけでは足りないということ。自分だけ頑張って、ついてこない人を指差して「あいつらがついてこないから悪い」などと言っても意味がない。少なくとも中央値が変わる程度の人々が、その正当性を理解できる状況を作らなければいけない。