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千葉市美術館の荒井良二展へ

会期が終わりそうな荒井良二展へ。

new born 荒井良二 | 企画展 | 千葉市美術館

正直ほとんど知らないというか、荒川修作との違いもよくわからない感じだったが、行っておいてよかった。原マスミと奈良美智を思い出した。あとは友部正人とか。

旅行に行くと、日常のあれやこれやが俯瞰的に眺められるようになって、「世界ってこんな広かったのか、今までなんであんなことで悩んでいたんだろう」と極端に客観的になってしまったりするが、ある種の創作物に触れたときにもそんな感じになることはあり、要はそれが「詩」と呼ばれるものだと思うが、その意味で実に「詩」そのもののような作品群だった。

いわゆるヘタウマな感じもあるけど、マネとかモディリアーニの模写(日記のように毎晩やっているらしい)を見ても技術力はかなり高く、ヘタウマというよりはピカソのキュビスム以降のような、必要だから崩して描いてるみたいな感じかとも思った。

絵本を実際に開かなくても絵本を読めるようになっている部屋もあって、この中の『きょうはそらにまるいつき』というのが良かった。子供にも響くものはあるのだろうが、疲れた大人のための絵本のようだと思った。あとは何かの歌詞のようでもあった。

ちなみに、自分はもう紙の本はけっこう無理というか、もちろん好きだが、開くのが面倒という気持ちになることが多く、今回は荒井さんの絵本を開いて読める場所もそこそこあったけど、そういうのはほとんど読んでおらず、だからこの実際に本を開かなくても歩きながら壁を眺めていれば読めるという形式は非常にありがたかった。

それから何と言っても、全室にわたって流れるBGMというか、音楽が非常に良く、最初はパスカルズかなと思ったが、何度Shazamで探してもまったく引っかからず、誰の曲なのかと思っていたら最後の部屋に試聴機と合わせてキャプションが掲示されていて、野村誠さんという方による音楽だった。これどこかで聴けないものかと思って検索したらはてなブログを書いていらっしゃったので関連する記事にリンクしておきます。
makotonomura.hatenablog.com

展示は絵や立体物の他に、壁に直接何か書いていたりもするので、これ巡回とか不可能ではと思っていたけど、特設サイトを見てみたらめっちゃ巡回していた(&する予定の)ようだった。
arairyoji-nb.exhibit.jp

図録を買ってこの雰囲気を持ち帰りたい、という気持ちにもなったが、パラパラ眺めてみたら自分が「これはいい青」と思った青がちょっと違う感じだったのでやめておいた。その青は最初に会場に入ってしばらくのあいだ、「いい雰囲気だけど、まあよくあるといえばよくある、不思議っぽい大人の人がやるああいう感じか」という上から目線のバイアスに染まっていた自分が、「おお、この青自分も好き。こんなのを描いて展示できるとは、すごい共感する」とそれはそれで上から目線だが、それでも偏見みたいなものが取り外されるきっかけになるような絵でもあったので。でも距離等の都合で会場に行けない人にとっては、あるいはこの展覧会自体を何度も追体験したいという人にとっては良いものなのかもしれない。

かなりの情報量というか熱量で、2〜3周見回ったらヘトヘトになったが、せっかく来たので、ということでその後に常設展とつくりかけラボの「野鳥観察日和」も見て行った。

常設展では浮世絵の役者絵と、山田正亮という人の作品がよかった。浮世絵は思っていた以上にデコボコがはっきりしていて、レリーフのようというかエンボスのようで立体作品じゃん、という感じだった。山田正亮さんのは紙に油絵具で描いていて、それって後々黄ばんでいったりしないのか?などと思ったが、とくにそのような雰囲気はなく油絵ならではの質感と「音のない広い場所」のような緊張するほど静かな雰囲気が好きな感じだった。

つくりかけラボはとくにワークショップ的なことには参加しなかったが、映像が綺麗に作られていてよかった。これもゴテゴテした不要な音が入っていなかったのが好みに合っていたのかもしれない。映像は構図や色調なども大事だが、やはり音が良し悪しを分けると思う。あと作品にはあまり関係ないが、映像を見る部屋にあったビーズクッションが良い感じだった。家にもひとつ欲しいと思ってその後検索してしまった。