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温水洗浄便座を自分で交換した話

もう数ヶ月前のことになるが、自宅の温水洗浄便座(いわゆるウォシュレット*1)が壊れた。そのけっこう前から、あれ、不調かもとは思っていたけど、それは以前にこの家に住んでいた家族が設置したもので、自分はこれまで温水洗浄便座なんて設置どころか購入した経験もなく、とにかく値段の相場もどうやって取り付けるのかもよくわからなかったから、まあそのうち何とかしようと思いつつ、とりあえず後回しにしていた。

学生の頃、一人暮らしをしていたアパートでは当然のようにそんなものはなくて、しかし今思えばよく温水洗浄便座のない生活なんてできたよなあ、と感心する程度にはそれがない生活なんて考えられないから、「あ、壊れてしまった」と思ったその日のうちにとりあえずAmazonで注文した。税込みで3〜4万ぐらいだったと思うが、ポイントを使ったりしてちょうど3万円を下回るぐらいになった。

ずっと後回しにしていたと書いたが、壊れたらどれを買うかみたいなことはもう数ヶ月前から、つまりその調子が悪くなり始めた頃からリサーチはしていて、買うならこの辺だろうという目星はつけていた。だから決めるのは早かった。

便器の本体(便座より下の部分)はINAX(現在のLIXIL)製で、温水洗浄便座を買うなら便器と同じメーカーの方が間違いはないだろう、と思ってLIXILのものを買ったが、後から考えてみれば、その便器本体の型に適合してさえいれば便座の方はべつにどのメーカーでもよかった。事前のリサーチを重ねてはいたものの、やはりいざとなると焦っていたのだろう。

さてしかし、問題は購入よりも設置の方で、初めは家電量販店に頼んで業者さんに設置してもらうつもりだったが、それだと最短でも1週間近く待つことになりそうで、何しろもうそれがない生活なんて考えられないわけだから、翌日着のそれをAmazonで買って、自分で付けるしかあるまいという結論になった。途中では何度もその判断を後悔したが、結果的には正しい判断だった。

設置に関してはやはり「失敗したらどうしよう」という心配が強かった。しかしYouTubeでその同じ商品の付け方を教える動画などを見てみると、まったく難しそうには見えない。ほとんどワンタッチだ。それもあって、自分で設置する方針を固めたのだった。

しかし届いた商品を箱から出して、早速その説明書やらYouTubeやらを参考に取り付けを試してみたら、全然そんな簡単なものではなく、結局その日のうちに交換するということはできなかった。古い方を撤去して、便器をみっちり掃除して*2、新しい便座を便器に乗せるあたりまでは順調だったが、最後に便座から伸びるホースを水栓につなげようとしたときに、この接続部の形状が微妙に合わないことに初めて気づいた。

もしそれまで温水洗浄便座を一度も使ったことがなくて、新しく購入・設置するというならそれなりに手間がかかるのもわかるが、既存の温水洗浄便座を新品のそれに交換するというのであれば、すでに水栓の工事だって以前に済んでいるわけだから、そこまで大変なことではないと思っていたし、実際にYouTubeでもこんなに簡単ですよ、プラグをカチッと差し込むだけですよ、みたいな説明しかなかったのだが、実際にはワンタッチどころか水栓まわりの工事というか、そういう未知の面倒な作業が必要になるようだった。

トイレの水栓まわりを自分でなんかやる、というのはまったく気が進まないというか、まあ工事の資格や専門知識などは必要ないようだけど、間違って壊したりしたら大変なことになるというか、とにかくモノがトイレなので責任が重すぎる。それでまじかー、自分でこの水栓のところをレンチとかでどうにかするのかー、まじで嫌だなーと心底思ったが、まあ仕方ないのでとりあえず何をどうしたらいいのか調べることにした。

それでいろいろ調べた結果、自分が新しい温水洗浄便座からホースをつなげようとしていた水栓の接続部は以前使用していた日立製の便座(「ファミレット」)に付属していた分岐水栓で、しかし今回の便座はLIXIL製だから、そのメーカーの違いによってホースの接合箇所(というか規格というか)が合わないということのようだった。

分岐水栓はもちろん今回のLIXILの製品にも付属しているので、だったらそれに変えればいいだけじゃないかと思うところだが、その日立製の分岐水栓とLIXIL製の分岐水栓はそのまま交換可能なものではなく、LIXIL製の分岐水栓を付けるためには、日立製の分岐水栓を付けたときに一旦取り外した「元の水栓の一部(器具)」が必要になるようだった。ようは日立とLIXILでは使用する分岐水栓が非互換なので、まずは「原状回復」をしなければならないということだった。

しかし、その原状回復をするために必要な「元の水栓の一部」はもちろん、もう無かった。それで終わった、今度こそ詰んだ、と思ったけど、以下の価格.comの掲示板でまさに同じことに悩んでいる人がいて、それに対する以下の回答を見て解決した。

まず止水栓を一旦、元に戻しましょう。
戻してから付属の分水を使いセットすればOKです。

bbs.kakaku.com

ここで回答者が教えてくれていたのが以下のカクダイ製の器具。

こいつを使って、まずは以前の日立製の便座が付く前の状態に戻す。その後、あらためて今回買ったLIXILの商品に付属していた分岐水栓を取り付けて、新規で取り付けるときと同様に便座をセットすれば良いようだった。

なお、後から気付いたが、価格.comのサイトでは同様の問い合わせが結構あり、そこでもこのカクダイの商品が勧められている。

この器具は600〜700円程度で、かなり助かった。じつはこれに行き着くまでに似たような器具を2つ買っていたが、1つは4千円超、もう一つは500〜600円だった。取り寄せてみるとどちらも空振りで、今回のケースには全然関係なかった。全然関係ない、ということは未開封の状態でもわかったので、幸い最終的には返品・返金できたが、↑のカクダイの器具に行き着いていなければダメ元で試していたかもしれない。価格.comの掲示板の回答者さんとカクダイさんには心からの感謝を贈りたい。

さてしかし、そういう注文をしたからには器具の到着までの日にちもかかるわけで、結局それまでは新しい便座を使えない、場合によっては購入した温水洗浄便座を一旦返品&あらためて量販店で設置工事とセットで再注文という可能性もゼロではなかったので、買った便座は一旦全部箱に戻し、古い便座を元の場所に再設置した。すると、何がどう作用したのか、壊れたはずの古い便座が直ってしまった。理由はわからないが、一旦取り外して簡単に掃除したり、接続ホースから水を抜いたりしたことで、それまで変なところに入っていた水や汚れが取れた、とかそういうことなのかもしれない。

もちろんだからといって、新しいのはもういらないということにはならないが、注文したカクダイの器具が届くまでは保ってくれた。そんなことはまったく期待していなかったので余計にありがたかったが、誰にも感謝のしようがない。100%ただの幸運だった。

数日後に注文した器具が届いたが、短時間の慣れない作業(というか人生初の作業)で水栓を破損でもさせたら大変なので、仕事のある平日ではなく、週末にじっくり時間をかけて取り付けることにした。これにより、壊れてからあらためて設置の作業をするまでまる1週間待つことになった。この待っている期間はかなり長く感じた。

いよいよ週末がやってきて、昼過ぎに作業開始。水の元栓を締めて、古い日立製の便座と分岐水栓を取り外し、届いたカクダイの器具を水栓に取り付けて原状回復。そこから新しい便座の説明書を見ながら、付属の分岐水栓を取り付けて便座も取り付け。

なんとかできた気がする・・と思って水の出を確認しようとしたが、元栓を戻してもシャワーが出てこない。しばらく逡巡したけど、これは便座に人が座っていなかったから出てこなかったようだった。説明書には便座に座らずテストする様子が図示されていたから、これで結構ハマった。

試運転も済み、ようやくすべてが無事完了。終わってみれば、これは業者さんを呼ぶほどの作業ではまったくなかった。ハマりどころはシンプルで、ようは「初めてやる人は初めてやるがゆえに不安に感じてしまう」というだけのことだった。何をやるのかイメージできれば、実際にやることはべつにそんなに大変ではない。

交換前の状況は人によって千差万別だから、結局のところその見極めというか、見通しが一番むずかしいのだと思う。そこさえ見通せれば、あとは簡単。見積もりのできなさというか、初めてやる人には作業の全体像がわかりづらいから、一番の難関はそこにあるように思える。

使った工具について。基本的には100円ショップで買ったマイナスドライバー、モンキーレンチがあれば十分だった。あんまり小さいものではなく、普通にちゃんとしたものを使う。ただしあまり大きいものだと、トイレに十分なスペースがない場合にナット等を締めづらくなるかもしれないので、作業スペースを考えながら選んだ方が良いのかもしれない。自分はそこまで真剣には考えなかったが。100円だし・・。

レンチは元々家にも結構ガッシリしたものがあったので、いざとなればそれも使う予定だったけど、結果的には商品に付属されていたペラペラのレンチと、その100円ショップで買ったレンチを組み合わせて作業は済んだ。今回のように、新規で取り付ける場合(交換ではなく原状の状態から取り付ける場合)、片方のレンチで軸を固定しながらもう片方のレンチでナットをぐいぐい回していく、みたいな工程が発生するけど、上記のように場所が狭いというのもあり、付属のおもちゃみたいなレンチの方がかえって作業しやすかった。

ちなみに、設置に必要な工具は基本的に全部商品に付属されているので、本来ならそれだけでも大丈夫なはず。ただ、上記の2種類(マイナスドライバーと適当なレンチ)はそれほど高いものでもないし、自分の場合は事前にそれを用意しておくことで、作業にだいぶ集中しやすくなった。

振り返ってみると、やはりあの価格.comの掲示板で見たやり取りが最も役に立った。あれがなかったらまったく関係のない4千円超の器具も試していた可能性はあるし、その末に取り付け自体諦めてしまっていたかもしれない。

そして今回の場合、やはり難易度を上げていたのは交換前後の便座が別メーカー(日立とLIXIL)だったことだろう。おかげで、分岐水栓の互換性がなく、原状回復が必要になってしまった。その互換性のなさに気づくまでにもずいぶん時間がかかった。

最後に、使ってみての感想だけど、水量とか便座の温まり方とかは以前のファミレットの方が数段良かった。というか、昔の温水洗浄便座って最近のものより大雑把で、その分最近のものより快適なのではとすら思っている。*3

いずれにしても、これでひとまず温水洗浄便座の設置方法についてはかなり自信がついたというか、今後は何度でもできるという感じになった。そんなに何度もやるようなものではないと思うけど。業者に頼んでいたらもっと時間もかかって、値段もまったく違っていた。そして業者に頼んでいたら、「一旦外して、また戻す」もやっていなかったので、上記の謎の復活も実現していなかったはずで、工事を待つ間はずっと温水洗浄便座のない生活をしていたはずだ。初めの方で「途中では何度もその判断を後悔したものだったが、結果的には正しい判断だった」と書いたが、それはこの意味で言っている。DIYでやったから、価格も抑えられ、短期間で設置が完了し、なおかつその設置までの期間も以前の便座を引き続き使えた。

作業の渦中にあるときは、いくら調べても自分の状況に当てはまる情報がまったく見つからなくて大変な思いをしたので、少しでもそういう人の役に立てばと思い、覚えているうちに書いておいた。

*1:「ウォシュレット」はTOTOの商品名で、LIXILは「シャワートイレ」を商標登録しているらしい。なのでここでは一般名詞の「温水洗浄便座」で通しておく。

*2:こんな機会でもないと掃除できないような部分もあるのでけっこう時間をかけた。

*3:少し前に古いビジネスホテルの古い温水洗浄便座を使ったら、それも水量とかが豪快で良かった。