103

いつのまにか異常な世界に生きていた

人生の終わりが近い、と思っているわけでもないのに、残しておかなければ、という気持ちに時々なる。

安倍さんのことは少し前まで、どちらかと言ったら肯定的に見ていたと思う。家族に聞いてもそうだったと言う。たしかに、十分とは言えない。でもまあ、最悪でもない、という感じ。他に誰がいる?野党?まさか。という感じ。民主党政権を支持していたが、今の野党に国を動かすことなんてできないだろう、と。

以前にオバマ大統領が広島へ来たとき、ぼくは安倍さんが総理でよかった、と思ったものだった。何しろ歴史的な記念行事だ。オバマ氏の隣に立つ人物として、安倍さんはそれなりに絵になった。頼もしいとまでは言えないが、日本の代表として、顔として、ひとまず適している。役割を果たしている、と思ったものだった。

しかし、「あれ」と思うことが少しずつ増えてきた。最初に引っかかったのは、「総理をやめる」というあれだ。すぐに出てくる、わかりやすいニュースだとこれとか。

www.nhk.or.jp

そのニュースを、ぼくはテレビで見ていた。随分軽く言うんだな、ぐらいのことは思ったかもしれないが、そのときはそれほど気にしていなかった。
その後に佐川氏が国会に呼ばれ、うだうだと、よくわからない言い訳をしていた。不快だと思ったが、それだけだった。馬鹿な奴らが馬鹿なことをしている、そういう奴らもいる、というぐらいにしか感じていなかった。

しばらくして、とくにしっかりニュースを見ていなくても、夫人の昭恵氏が事件に関わっている、どう考えても「関わっていない」とは言えないだろう、という感じになってきた。自分から積極的に調べているわけでもないのに、目や耳に自然に入ってくる情報だけでも、それを否定することが難しい、すでに事実として周知されているようだと思った。しかし、安倍さんは総理も議員もやめていなかった。どちらかと言うと、憲法改正などのためにより総理大臣としてのキャリアを突き進もうとしているようだった。

さすがに変ではないか?と思い始めた。「やめるって、言ってなかったっけ?」と。やめてないということは、じゃあ、奥さんは森友事件に関係なかったということ?国有地売却に一切関係なかったということ?と思った。

もちろん、関係はあった。それは安倍さん自身も認めている。以下は比較的最近の話だが、

mainichi.jp

改ざん・削除された文書の中に「昭恵夫人の記述があることをどう受け止めているか」と問われた首相は「妻について書かれた記述は改ざんされた全体の中のごく一部に過ぎない」などと答弁した。

これに対し田村氏は、削除された部分の読み上げを財務省幹部に要求。森友学園籠池泰典理事長(当時)が近畿財務局との打ち合わせ時に、昭恵夫人から「良い土地ですから前に進めてください」と言われたと述べたことなどを首相に聞かせた上で、「これが削除されたことをどう思われますか」と再度尋ねた。これにも首相は「私の妻が全く出てこない決算文書の経緯の部分も同様にほぼすべて削除されている」などと答えた。

昭恵氏は国有地売却に関わっていた。安倍さんはそれを否定していない。というかむしろ、上記ではこの文書の中に昭恵氏が記述されていることを認めている。

「なぜやめてないんだろう?」という素朴な疑問が、頭の隅に引っかかってなかなか薄れなくなりはじめた頃、地味だが個人的にほとんど決定的な違和感として現れたのが、シュレッダーの件だった。

digital.asahi.com

桜を見る会」をめぐる20日の衆院内閣委員会の質疑で、政府は今年の招待者名簿について、野党から招待者数や支出額などの資料要求を受けた5月9日に「シュレッダーで廃棄した」と説明した。

驚いた。え、なんでそんなことするの?と思った。そしてさらに決定的だったのは、そのシュレッダーを野党が視察しようとしたのを拒否したことだ。

mainichi.jp

立憲や共産の衆参8議員が内閣府を訪れた。職員は「シュレッダーが稼働中だ」「責任者がいない」などと視察をさせなかった。野党側は「稼働していない執務時間外なら見られるだろう」と食い下がったが、約2時間の押し問答の末に「官房長の判断でだめと決まった」と押し切られた。

え、なんで拒否するの?と思った。何を隠しているの?と。べつに見なくてもいいけど、見てもいいじゃん。見せないのはおかしいじゃん。大の大人が、紙相撲のように押し合って何をしてるんだろう。誰がどう考えてもおかしい。ここまでみっともない対応を取ってまで見せないという、まともな理由がない。

この、シュレッダーを物理的に見せない(議員を建物に入れない)様子を見て、頭の中の政府観が完全に変わったと思う。こいつら、駄目だ。かなり、駄目だ。完全に、駄目だ。

それから徐々に、記者会見で記者にまともな質問をさせないとか、首相がくだらないヤジを飛ばしたり、野党議員のことを人として貶めたりするのを見て、以前から「なんだこいつら」とほとんど無意識に思っていたことが、じわじわと思い出されてきた。それまでもそういう状況を見ていたが、意識にはのぼっていなかった。それがのぼってきた。こいつら、かなり駄目じゃん。

元はと言えば、わざわざ自分から、言う必要もないのに「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」なんてキャッチーな発言をしてしまったのが、この変化の始まりだった。それがなければ、今この時点で安倍さんや政府のことをこんな風にはまだ思っていなかったかもしれない。

しかしたぶん、それは遅かれ早かれ来ていたのだろうとも思う。安倍さんのその理解不能な虚言はつい最近のこれでも強く感じられた。

mainichi.jp

立憲民主などの会派の芳賀道也氏(無所属)が「都合が悪くなると、首相は『悪夢の民主党』と言って一切答えない。子供の教育に悪い」と皮肉ったことに反論した。首相は「自民党大会などで『悪夢のような民主党政権』と、経済政策において申し上げている」と認める一方、「国会答弁で答えたことはない。正確な質疑をしたほうがいい」と語った。
実際は、首相は2019年2月の衆院予算委員会などで「民主党政権は悪夢だった。間違いなく」と述べている。

著しく記憶力が悪いのか、思ったことがそのまま口から出てしまうのかわからないが、聞かれてもいない間違いをなぜ言ってしまうのだろう。常識的に考えて、正常さを失っていると思える。

昨日あたり話題になった、これもそうだろう。

www3.nhk.or.jp

安倍総理大臣は13日の自民党役員会で、「休業に対して補償を行っている国は世界に例がなく、わが国の支援は世界で最も手厚い」と述べ、休業に伴う補償や損失の補填(ほてん)は対象となる事業者の絞り込みが困難で、海外でも例がないとして、否定的な考えを重ねて示しました。

「わが国の支援は世界で最も手厚い」については、基準も曖昧だし、付き合う価値もないというか、「お前の中ではな」とだけ言えば良いとも言えるが、「休業に対して補償を行っている国は世界に例がなく」とはどういう意味だろうか。ちょっと調べれば、そんなことは明らかな間違いだとわかるのではないだろうか。それとも、これもまた微妙な用語の定義の違いなどで辻褄を合わせるのだろうか。

そう、安倍さんとそれを取り巻く人々のやっていることは、一言で言って「辻褄合わせ」だ。ずっとそれをしている。初めにめちゃくちゃなこと、異常なことをして、それを後から、あたかも正常なことであったかのように取り繕う。その繰り返しだ。そしてそこから振り落とされたのが、たとえば亡くなった赤木氏のような人だろう。

これほど異常な世界だが、彼らはまだまだこれを続け、拡張しようとするだろう。だから、それを今度は駄目だと言わなければならない。この異常さは、それを今までずっと見逃してきた、自分の責任でもあるからだ。