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すこし前の更新で、言葉というのは自分の胸に貼っ付けることで機能するものだと、他人に投げたりできるものではナイのだと、書いたんですが、今日それに近いモデルを思い浮かべた。
自分とまったく同型の人形というかロボットというか、分身みたいのがあると。見た目はまったく同じなんだけど、そいつは自分からは喋らないし何しろ生き物ではない。
でもそいつの頭をパカッとあけて、トポトポと薬を流し込むと、口から言葉が出てくる。「おはよう」とか「いやだね」とか言う。
おはよう、と言わせるための薬があり、そんなことないよ、と言わせるための薬がある。僕は自分では口がきけなくてそいつに喋らせるためにいろいろな薬を調合しては頭からトポトポと入れていく。
これはフィクションではなくてまったくの現実だ。目の前の誰かに、「お前は**だな〜」と私が言ったとき、その言葉は目の前の相手に届くよりも前に私の体から発せられており、私の口から言葉がもれ出てくるその情景をもしいつも見ていたら、話される言葉は少しはマシになっていたかもしれない。
その話をしている私の顔。それをもし見ながら喋っていたなら。
話者のない言葉はない。その言葉を、誰が言っているのかは重要だ。その言葉が、どのような条件で言われているのかが重要だ。2つ以上の同じ言葉が同じことを指さないことはたくさんあるが、条件を限定すればブレは減る。