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2004.10.27 Wednesday @JGM-16th

  • ペン大日記。ではなく


1. ペン大
 は最高におもろかった。
 でもその前に、今日は絶対書かなあかんことがあるので、そちらを先に書きます。(っていうか、それで疲れたら、ペン大話は後日です)

2. 何だ?
 何を書かなあかんのだ?と問われれば、もう、これです。
ジョゼと虎と魚たち 特別版 (初回限定生産2枚組)
 『ジョゼと虎と魚たち』を観た。(下条アトム風に、ではなく!)

 これは・・・面白かった。っていうか、よかった。よかったよかった。
 何だろう、ここ2年ぐらいでベスト1ですね。これは。
 池脇千鶴という人は、NHKでやってた「火消し屋小町」という素晴らしいドラマを観て「うわぁ・・・うまいなこの人」と思っていたけど、これを見て確信は果てにまで深まる。すごいオーラや。
 妻夫木君は・・・とかって解説してたら朝になってしまうので(喩えではなくて)、一番思った順に書きます。
(勢いで書いてしまうので、文感変わります)
 
3. ”今年観た映画ベスト1は、『独立少年合唱団』ですッ”
 とか言っていた年があって、あれは何年前だったろう?3年ぐらいかな。(『リトル・ダンサー』と『ハイ・フィデリティ』と『セシル・B ザ・シネマウォーズ』を同じ週に観た年だ)でもそれは、あとになって”ホントに他になかったかな”とか思うような、そんなベストの選択でもあった。
 ではこの映画を、「ここ1、2年のあいだに観た映画(/ビデオ)で一番よかった」なんて言っていることも、やはり同じように「んなこたないか!」なんて思う日が来るだろうか? と言えば、それはきっと来ないと思う。ほんっと久しぶりに、こんな気分になったのだ。(・・・おすぎみたいだ。彼はいつもこんな気分なのだろうか? そうかもしれない)
 
4. センスのすべてが
 まるで僕だけに向けられたメッセージであるかのようだった。
 挿入されるD[di:]の絵や、やはり度々挿入される、「このスチールすごいいいなあ」と何度も思っていたらなんと佐内正史の作品だった写真の数々とか、「くるりの映画音楽って、どうなん?」とかやや斜めに言ってたのが、「サントラ欲しい・・・」なんてなったりするぐらいの音楽とか、全部がよかった。
 でも僕が感動したのは、ここまでに書いたどれにもまだ関係していない。
 書きたいのだけど、順番があるのだ、たぶん。
 
5. 僕が感動したのは
 その中に写っている、”匂い”だ。季節はずばり、今に近い。秋から冬にかけてのあたり。寂しくて、でもなぜだか解放感もあるその頃。風景がいい、とか言っても同じだけど、よくはない。僕は思いっきり、その中に流れている(はずの)匂いを嗅いでいて、そいつに滅法やられていたのだ。

 その”匂い”には、光も音も含まれていて、おまけにそれら目に映る(今度はこっちの”うつる”だ)、耳に聞こえる、鼻の奥まで届くひとつひとつは全部、僕のこれまでに体験したものだった。だから僕はそれが僕だけに宛てられたものだとさえ感じてしまった。

 冬に近づく土の匂い。それはたしかに、フィクションでなく、僕の「かつて」にあったよなあと、懐古とは別の、もの凄い希求力でそれが襲ってくる。
 映画の中には、いわゆる悲しいシーンも刺激的に痛い瞬間もあるが、それとは別に、頭の中がわんわん言ってる。それは、かつて僕の見たものだ、と。

6. 部屋に射し込む光の暖かさを
 たぶん今後も味わえないかもしれないと思うぐらい、それはすごく暖かく見える。この匂いをこのようにして嗅ぐことはこの先も出来ないだろうな、と思うぐらい、それは体の奥の奥まで届いてくる。

 話はファニーで、冷たく厳しい。やさしくて、しようもない男という、どう考えても演ずるのは難しいであろう役を妻夫木君はやり通す。原作の田辺聖子のつくる話について、「男には読むのが厳しいのよ」という意味のことを山田詠美が言っていたけど、確かにこれは易しい話じゃなくて、でもそれを監督さんはえらいレベルで作品に仕上げた。すごいと思う。

7. 犬童一心監督の作品を初めて観たのは
 大学生の頃で、それはデビュー作の『何もかも百回もいわれたこと』だった。
 舞台は地方の小さな美大予備校で、自分の境遇が近かったこともあって、かなり感情移入というかアイデンティファイ(という言い方の方が近い)しながら2回観た。面白かった。
 なんてことない話をなんてことない感じでやっているのだけど、そしてその後はほとんど思い出しもしない、とくに「感動」というほどの何かを受け取ったわけではない作品だったけど、好きだな、と思った。

 じつはその後、僕はその映画で主演した女性をかなり間近で見ることになるのだけど、それは全然関係ないので置いておいて、でもその時からなんか近い監督だな、とは思っていた。思っていたけど、こんな作品が出てくるなんて思わなかった。 
 一生で一番好き。というほどでは、確かにない。でも、それにかなり近い。中原俊の『桜の園』とか、山川直人の『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』とか、邦画ばかりだけど大好きな映画はいくつかあって、その中でどれが一番っていうのはない。どれもそれぞれに、いい。ただそういうのがまた一個増えたということで、それはでも、奇跡に近い体験でもある。


8. と、いうことで
 それでも随分な時間になってしまったので、これで終わります。


note103 日記 03:52