年末にschola9巻がでて、今年1冊目にして第10巻のscholaは「映画音楽」。いまその編集でほとんどしんでいる。しかし幸福でもある。仕事の苦難はときにその幸福度に相関する。比例かは分からないが素晴らしいものであるほど大変にはなる。逆がまた然りかは分からない。
ふと作業中に、エイプリルフールという映画を中学の時に学校で見たことを思い出した。視聴覚室という、大きめのスクリーンで普段は授業に関わる映像などを流す教室で、体育の授業が天候のせいか何かで中止になり、その代替で先生がクラスの生徒を集めて見せたのがそれだった。ジャック・レモンが主演で、全編バカラックの音楽が流れる。「小さな願い」も「エイプリルフール」も流れた。映画が終わって、先生が「また見たいと思ったやつは空のテープ(VHS)持ってきたらダビングしてやるぞ」と言って、その先生は普段ものすごく怖いキャラだったので(なにしろ高校の体育教師なのだから)そんなことを言ってくることにとても驚き、しかしなによりあのスイートでセンスのいい(そしてB級な)映画をぼくらに見せたことが今考えると驚くべきことだった。そんな高校の授業(それも体育の)、ほかにあるだろうか?
授業時間の終わりとほぼ同時に映画も終わり、僕はといえば無言で感動していた。映画に、というより劇中で流れた「小さな願い」に額を撃ち抜かれるような衝撃を受けていた。何なんだこの曲は!と目の前が真っ白になるほどの動揺を覚え、しかし曲名がわかるわけでもないので映画の名前だけをぼんやり覚えてその数年後にようやく辿りついたのがディオンヌ・ワーウィックの廉価ベスト盤だった。「エイプリルフール」は美しい曲だがそのときには地味なバラードにしか聴こえなかった。しかし今聴くととてもいい。
小・中・高を通して様々な時間を過ごし、印象的な先生も何人かいた僕にとってその体育の先生はさして関わりも思い入れも深くはない人だったはずが、よく考えれば一番の影響を与えられたのがその臨時的映画鑑賞の授業だったのではないかと思い、感謝している。
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