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数秒で生じる衝撃的な違和感

昨夜、NHKの震災関連番組を見ていたら、糸井重里さんと森公美子さんとはるな愛さんがゲストで出ていたのだけど、冒頭のゲスト紹介で、なぜか進行役の女性アナウンサーが、糸井さんとはるなさんは紹介するのだけど、その二人に挟まれた森公美子さんだけスルーというか無視して、「・・え!?」という感じになった。

あまりにも自然に、しかしあり得ない進行になっていて、どう考えても、というか普通に考えたら、先に森さん以外の二人を紹介する必然性というか理由を、その直後に明かすというか、「・・そして森さん、」みたいにすぐ個別に話しかけるのかと思いきや(それはそれで若干奇妙だが)、そのままVTRに行ってしまってここで本格的に驚いた。

元々の番組進行上の予定どおりだったのか、ハプニング的な軽微なミスだったのかわからないが(テーマが大きいだけに緊張していたとか)、もし予定外のことだったら、その女性アナウンサーの隣には同じくNHKの男性アナウンサーも居たので、せめてその人突っ込んでやれよ、という感じだが、とはいえ前記のとおりあまりにも自然に、かつ即VTRに入ってしまったので、逆にというかやはりというか、常識的な判断が表出する間もなかった、ということではあるかもしれない。

本当はその番組を見続けるつもりはあまりなかったのだけど、そのことが気になってしまい、番組の演出なのか、それともミスだったのか、後者であればVTR明けに、説明というか簡単なお詫びというか言及があるだろうと思って、それほど短いわけでもないそのVTRを見続けて、終わったが、やはりというか、なんとというか、何も説明はなかった。

その後の糸井さんのVTRに対するコメントも大変衝撃的で、なんて勇気のある人だろうと深く感心したのだけど、話が複雑になるのでここでは触れない。

テレビの収録現場というのは何度か立ち会わせてもらったことがあるけれど、その経験から言っても、スタッフや出演者の間では取り交わされている同意事項というか、共通認識のすべてが視聴者に示されるわけではない、ということはわかる。
わかるし、もし想定外のミスだったとしても、「まあ、とりあえず何事もなかったように進行しておきましょう」とか、VTRの放送中にスタジオでは何らかのやり取り(当人へのお詫びなど)があったのかもしれないが、見ていてその違和感があまりに大きく、その後の内容がまともに頭に入ってこない。

「うわー、なんも説明ないわ・・まじで? しかも何事もなかったかのように森さんに話振ってるわ・・」とか思っていた。

その辺りでチャンネルを変えてしまったので、その後なんらか言及があったのかもしれないが、やはりせめてVTR明けに何か言うべきだったのでは、とは思った。視聴者の視点というものが欠けている。
あるいは、僕がぼーっと見ていただけで、本当は糸井さんとはるなさんの間に森さんも紹介されていたのだろうか?(その可能性もある)

ただ、このようなことは震災を振り返る番組だったからこそ生じたのかな、という気もしている。
普通だったら、「おいおい、森さんの紹介がないよ!」とか、ゲスト側からも突っ込むこともできるかもしれないが(立ち上がって、芸人のように)、さすがにちょっと不謹慎というか、あまりそういうことはしづらい雰囲気というのがどうしてもある。

震災のことを扱う番組というのは、毎日のニュースや衣食住的なルーティンとして行うものではなく、言い換えれば多くの人が慣れないままやっているわけで、それで想定外のことに対して適切な対応を取れなかったということではあるかもしれない。
それはまた、震災を取り巻く多くの行動がそうなってしまった、そうなりがちであった、ということを結果的に象徴しているのかもしれないが。