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2016-08-31 Wed: シャフリングのような編集作業

  • 今日水曜の作業時間は4:33:23。昨日火曜は6時間を超えて6:06:12だった。
  • 昨日はメインの作業をほぼできず、今日はメインの作業を集中的にやったのだったが、トータル時間は今日の方が少ない。不思議である。
  • このところのメインの業務はschola(スコラ)といって坂本龍一さんの音楽全集の制作である。
  • http://www.commmons.com/schola
  • 坂本さんが次世代に残したい音楽をCDブック形式でリリースする、というこのプロジェクトもかれこれ16巻目。スタートは2008年だからまる8年になる。今ぼくは41で、その頃は33だった。当たり前だが。
  • 当初は年に3冊(巻)出していたが、徐々にペースが落ちて今は年に1冊がようやくである。理由はよくわからない。以前から全力で走っていたが、今も全力で走ってそうなっている。
  • 制作メンバーはむしろ増えている。二つ前の14巻の頃はぼくの負担が最も大きくて、原稿の編集はもちろん、著者陣との連絡からスケジュール全体の進行管理まであらゆることを中心的に担ったが、今はそうした作業をサポートしてくれる人が1〜2人いる。(数え方によって変わる)
  • とくに、前回から書籍・雑誌編集のスペシャリストがフルタイムではないが恒常的にサポートしてくれるようになった。これが革命的な変化で、労力はともかく精神的にめちゃめちゃラクになった。
  • 「労力はともかく」というのは、これまで一人でやっていたことを複数人に分担するわけで、わざわざ言語化する必要のなかった知見を伝える作業というか、いわばマネジメント的な業務が新たに発生せざるを得ず、それを勘案すると単純に「人が増えたぶんラクになった」とも言えないということ。
  • それでも大きな違いというのは、やはり「業務内容について雑談できる相手が増えた」ということで、これは何にも代えがたいメリットである。
  • 「ここにテン入れるとくどいですかね?」とか、「ここの漢字はひらいた方が読みやすいですかね?」とかSlackで気軽に聞ける。
  • 実際には、そういった疑問に「正解」はない。というか、ぼくがそれを正解だと言えば正解になる(責任者だから)。でもそれを信頼できる誰かに「聞ける」ということがもうかけがえのない恵みなのである。
  • 何年前だったか、8巻が出る前後に主要スタッフが一部入れ替えになって、新たに入ってきたその人が良くも悪くもテキトウな風合いをもっていてとても助かった。ぼくもテキトウなのでお互いに気を遣わず、本当に大事なことについて、不毛な形式や手続きを経ずに、ダイレクトに、すぐに相談することができた。
  • その頃はSlackではなくSkypeを使った。
  • まあ、丁寧語や礼節は最低限必要なのだが、それでも結局は「最後に仕事がうまく収まれば仲は良くなる」。
  • いくら相手の気持ちや「今何を考えているか」を想像したってわかるわけがないし、それを気にしすぎて本当に言いたいことを言えないまま肝心の業務が進まず、仕事が失敗したらその相手に対して「失敗した仕事を共にした(そしてその原因になった)そいつ」みたいな印象を持ちかねない。
  • 1巻から現在に至るまで、ぼくの担当作業はどんどん増えた。周りの人たちから任せてもらえた、ということなのでとてもありがたい。経験値も高まった。
  • その間、ずっと継続して担当したのは、大きなところでブックレットのメイン・コンテンツである「座談会」と、巻末付録的な「年表」で、しかし元々は「年表」の作成担当みたいな感じで声をかけてもらっていた。
  • 「座談会」というのは坂本さんとゲストの専門家の方々が話した内容をテキスト化したものだが、1巻の制作中にふとその進行状況を聞くと、どうも最初の文字起こしをする人というのがまだ決まっていないようだった。
  • そもそも進行状況を聞いたのは「誰もやらないんだったら俺がやろうかな」と思ったからだったので、「じゃあやりましょうか」という感じになった。
  • 坂本さんが喋った、これから本になるはずの音声ファイルを自分が起こすなんて! まったく夢のような気分だった。その頃の自分に「夢」と言えるものはなかったが、夢が叶ったかのような気分になった。
  • その後、いつのまにか文字起こしだけでなく原稿の仕上がりまで任せてもらうようになった。ぼくから頼んだわけではない。「たまたまそこにいた」だけだ。ぼくを信頼してくれる人がそれを任せてくれた。
  • さらにいつのまにか、同様の感じでブックレットすべてのページに責任をもつようになった。そしてさらにいつのまにか、ブックレット以外のことも……。
  • ブックレットのページ数は上限が決まっていて(基本P120)、いつもそれに収めるために頭を悩ませる。
  • 内容が豊穣すぎて収まらないのである。
  • しかしあれこれ試行錯誤して最後には何とかそれに収める。これはほとんど魔法のようなもので、後になってみると「どうして120ページに収まったんだろう?」という感じになる。
  • 座談会の原稿も同様で、「今回は最大でもこの分量に収めなければならない」という上限ページ数があり、しかし坂本さんたちはどんどん面白い話をしていくので、普通にまとめるだけではまったく収まらない。だからそれをグングン圧縮していくのだが、この作業がとてもつらく、面白い。
  • そしてこれもまた、気がつくと綺麗に収まっている。なぜ収まっているのかはわからない。「眠っているあいだに別の人がやってくれた」という感じである。
  • 村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』という小説に「シャフリング」という作業(というか何というか)が出てくるのだけど、ぼくが座談会の原稿を作ってるときってまさにそれをやっている感じに近い。
  • シャフリングについてはわざわざ説明しない。すでに知ってる人は「それか」と思うだろうし、知らないけど興味があるという人はいつでも読んでください。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 (新潮文庫 む 5-5)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 (新潮文庫 む 5-5)