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新幹線の中を走る

大阪から東京へ向かう新幹線の中で大阪方面に向かって走る人を見るとどうしてもつい「それじゃ大阪には行けないぞ」と言いたくなるけれど、「やってみなけりゃわからない」みたいに言われると「あ、はい……」みたいになるということはある。

村上春樹1Q84だったか、「説明しなきゃわからないってことは説明してもわからないってことだ」みたいな話があって「ですよねー」と思ったけれど、たしかに自分と他人との関係においてそれは往々にして遭遇しうる光景だ。

とはいえ自分にしたってつねに誤解から理解(あるいはAという誤解からBという誤解)への移動を行っていることを思えば、そうした説明がまったく無駄になるとも思われない。

有用な解を得るためには俯瞰視点を持つことが必要で、自分が新幹線の車内にいることを知ることができればとりあえず停車するまでは走っても意味ない、ということがわかるように「どこへ向かえばいいのか」ということは上に上に視点を上げることで認識しやすくなる。

夢の中で自分が夢の中にいることに気がつくのはいつでも後から(あるいは目が覚める直前)であるように、初めは誰も自分の居場所に気づいていないが、それを知ろうとすることで少なくともそれ以前よりは人生をより自分の望む方向へ動かしていけるはずだとは思う。