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松山に行ってきた(3)〜 柳井町 後編・三津浜 前編

RubyKaigi2025に参加するために行った愛媛県松山市のレポート3回目。以前の内容は以下。

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2025/04/19 Sat (承前)

旅先で洗濯

松山には4/15(火)に到着したので、この日、4/19(土)は5日目。4/22(火)に帰る予定なので、あと3泊。

柳井町商店街で出会ったヤマトさんと彼が勧めるベトナム料理レストラン「ハノイカフェ」で食事、お喋りを十二分に楽しんだところまでが前回のあらすじ。食べ飲み終わり、「また滞在中に会おうね!」と言いながら解散。はあ、極端に楽しかった。

のんさんのライブまではまだ時間があったから、ホテルに戻ってコインランドリーで洗濯をした。

・・と簡単に書いてみたが、これが初めての経験。今まではホテルに何泊しようが、洗濯をしたことなんてなかった。しかし今回は先述のとおり7泊8日のスケジュールで、この日数分の服を全部持ってくるというのはさすがにナシというか、そんなことしたくなかったので適当に何着か持ってきただけだった。当然それでは足りなくなるので、いよいよどうしようかと考えたのがこの日の夜で、「じゃあ洗濯してみるか! やったことないけど!」となったのだった。

これまでもホテルに泊まるたび、コインランドリーで洗濯している人を見たことはあったが、自分がそれをするなんて考えたこともなかった。とりあえず洗剤は自動で投入されるらしいこと、必要なのは洗濯物とお金(硬貨)だけだと洗濯機の説明を見て理解した。

その説明によると、洗濯ネットを使うことが推奨されるようだったが、そんなものは持ってきてないので全部じかに突っ込んでいった。そのホテルの洗濯機は2種類あり、ひとつはドラム式で洗濯・乾燥まで一気にやってくれるやつ、もうひとつは乾燥機が別になっていて途中で自分で入れ替えなければいけないやつだった。前者の方がラクなせいかすでに全部埋まっていて、自分で入れ直すやつはまだ2台空いていたのでそっちを使った。料金はドラム式が600円、もう片方は洗濯機が300円で、乾燥機は30分につき100円。自分の量だと乾燥機は60分(200円分)が無難そうなので、合計500円。手間のかかる方が100円安いわけで、まあ、うまくできている。

洗濯機をスタートして、部屋に帰ってシャワーを浴びた。うとうとした頃に、スマホにかけておいたタイマーが鳴ったのでコインランドリーまで行って、洗濯物を乾燥機に入れ替えた。部屋に戻ってまたうとうとする。気がつくと、私はもうかなりくたびれて身も心もダウナーだった。そして、やはりライブはやめるべきだったのでは・・と思えてきた。だって、こんなに疲れてるんだから。今回に限らず、私はいつもこうなる。イベントに行く予定を入れるが、その直前に行くのが嫌になる。重たくて大きな、米俵のような形をした「めんどくささ」が、暴力的に、有無を言わせず私の頭にドスン、ドスンとぶつかってくる。イベントやライブを面倒だと思っているわけではない。そうではなく、イマ・ココから動くのが嫌だと全身で思っている。

ここでぐったり横になったら、さぞかし気持ちいいだろうと思った。のんさんには、すみません、寝ちゃいましたと謝ればいいのではないか。おそらく、のんさんは怒らないだろう。しかし、残念な気持ちにはさせるかもしれない。もしかしたら、人間なんてそういうものだと思わせてしまうかもしれない。それが嫌だった。そうじゃない、たしかに世の中はそういうものかもしれないが、そんなことばかりってわけでもない。遠くのどっかから変な中年男がやってきて、そいつにはまったく似つかわしくない深夜のクラブに、当日急に5千円も払って音楽を聞きにやってくることもある、そんな現実だってあるのだと示したい。

イベントのオープンは22時半。ライブ行きますと伝えたときに、「のんさんの出番は?」と聞いたら1時半ぐらいだと言う。1時半? ということはANARCHYの登場は少なくともその後だから、ほとんど朝までコースじゃん、と思わず笑いそうになったのを思い出した。ああまったく、そんな先のことなんて考えても仕方がない。曲がり角の向こうに何があるかなんて、考えてはいけないのだ。とにかく見えるところまで進めばいい。近くまで行く。そこで自分が何をするのか、何を考えるかなんて、そこに行くまでわからないのだ。

60分が過ぎて乾燥機を開けると、服はちゃんと乾いていた。独特の芳香剤みたいな匂いがするけど、まあOK。それよりも、着替えが一気に増えたのが嬉しい。これができるなら、もう今後の旅行でも大して着替えを持っていく必要はないだろう。その未来が見えたのが嬉しい。

CLUB BIBROS

服を整理して時計を見たら、1時ちょっと前だった。測ったようにちょうど良い。ホテルを出て、歩いてまた大街道の方へ行く。夜の松山、アーケードの下はそこそこ若者が歩いているが、ちょっと外れたアスファルトの道は沈黙と緑の闇に塗りつぶされたような静けさ。エドワード・ホッパーの『ダイナー』のような、人工的な光のコントラストをもっと激しくした感じ。

1時過ぎ、CLUB BIBROSに到着。雑居ビル特有の異様に狭いエレベーターに乗って、いざ7階へ。先に乗り込んだのは男1人+女2人の3人組で、「何階ですか?」と聞いてくれたので7階だと答えたら、「お、同じだ」とちょっと驚いた様子。たしかにどう見ても同じ場所に向かう人間には見えないだろう。大柄な男子から「誰見に来たんですか?」と聞かれたので、のんさんとANARCHYだと答えると「アネーキーって知ってますか? ANARCHYの姉で・・」と真顔で冗談を言い終える前に女性二人が破裂するように「そんなのいないよ〜!」と男の肩を叩いて大きく笑う。つられて笑いながら、これ生きて帰れるのかなと思った矢先にドアが開き、大柄な男子が「どうぞ」と促してくれたので御礼を言って先に出た。どちらが入口かもわからず、首を左右に回して、大音量のする方にカウンターらしきものがあったのでそちらへ向かった。あたり一面薄暗くて、まさに手探り状態。なんとかチケットカウンターにたどり着き、すぐ脇から爆音が漏れてくるのでもうスタッフが何を言っているのかまったく聞こえなかったが、とりあえず料金を払えばいいのだろうとカンで5千円札を出したら、「手の甲を出せ」とジェスチャーをしている。右手の甲を出したらボムッとスタンプを押されて、これがあれば再入場もできると言っているようだった。頷いて中へ入ろうとしたら、いわゆる黒服の人が「スタンプを見せて」とこれまたジェスチャーで示している。いや、そこで押してたの見てたじゃん、と思ったが素直に手の甲を見せたら仰々しく胸に手を当ててお辞儀をして、扉を開けて中に通してくれた。見たことある、こういうの、ZeebraのMVとかで。なんてふわふわ思いながら扉の向こうへすり抜けていく。全部が夢の中のよう。

フロアに入ると、とにかく大音量でいきなり耳が死んだ。でも、しばらくすると心地よくなってくる。ああ、思い出した、たしかにこんな感じだった。20代とか30代、こういうところに来たことがある。もはや音ではなく、空気の波動が直接頬を殴りつけてくる感じ。その荒波に揉まれ続ける感じ。騒音の向こうからDJが流す音楽が何かの信号のようにだけ聴こえてくる。それは体に直接触れる物体として耳に届く。ほとんどマッサージ、または格闘技か。

スタンプを押してもらったときに一緒にもらったドリンクチケットで、ジントニック。フロアの前方と壁付近のソファ席は混んでいるけど、その中間あたりはドリンクを持ってフラフラしている人がけっこういたので自分もその辺に体を置いた。すぐに酒が回って、音楽がさっきまでよりさらに心地よくなってくる。そうだった、こんな感じだったとまた思う。向こうからのんさんがやってきて、お互いの耳元で大声で挨拶。もうすぐステージだと言った後、来てくれた御礼にとドリンクチケットをくれた。

そしてのんさんのライブ。ヤマトさんと話してるとき、「のんさん、ライブだとまたちょっと違う感じですよ」と言っていたけど本当に全然違った。めちゃ声が前に出ていて、発声がその道の人だった。と同時に、のんさんらしさみたいのも醸されていて良かった。誰かの物真似ではない感じ。あっという間のパフォーマンス。まじで尊敬する。

のんさん

その後に地元に根付いたヒップホップクルーUnchaindogs。これも良かった。みんなスマホで動画撮りながら音に体を揺らしてる。そして満を持して、ANARCHY。さっきまで外にいた客も一気になだれ込んできた。スマホの撮影隊もさらに増える。皆のスマホがペンライトのようにゆらゆらとライブを彩っている。予習しておいた新曲が次々と披露される。その間をつなぐ流麗なMC。これがプロの完成度。

ANARCHY。写真だと遠く見えるけど、けっこう近い。

ANARCHYはステージに上がるときと降りるとき、どちらもフロアを突っ切って行くのがよかった。本当なら裏口からステージに上がれるはずだけど、あえて客の間をかき分けていく。事件だ!という雰囲気の演出。盛り上がる。

ANARCHYが終わるとまたグッとフロアの人数が減った。ようやく落ち着いて音楽が聴ける・・みたいな感じになり、もらったドリンクチケットで買ったビールを飲みながら体を揺らす。フロアの後ろの方にさっきまでパフォーマンスしていた人たちが戻ってる。その一人に感想を伝えた。向こうも何かを言ってくれるが、ほとんど聞こえない。多分インスタやってるからそれをチェックしてよみたいな話。何も聞こえないが笑って頷く。DJがまた変わって、良い曲だなと思ったのでShazamで探したら曲名が出てきた。こんなに簡単にわかっていいものなのか。もうすぐ4時というところで気力が切れて、帰る気になった。

フロアを出て、エレベーターに乗って下へ。耳がわんわん言っている。大男に後ろから力強く耳を押さえつけられている感覚。エレベーターに同乗した男子2人組が「俺たち、年取ったら耳どうなってるんだろ・・」なんて言ってるので笑った。こちらを見て「ANARCHY見に来たんですか?」と爽やかに聞いてくれる。嬉しい。ライブ良かったですねと笑い合い、手を振って別れる。

また洗濯

予想していたことではあったが、着ていったものが何から何までとにかくタバコ臭い。若者たち、タバコを介さなければ息ができないのかと思うほど常にタバコを吸っていた。それも、紙タバコ。普段なら部屋にあるファブリーズをかけてハンガーに干しておくだけだが、このままでは寝てる間に受動喫煙で大変な目に遭いそうだったから本日二度目の洗濯。来ていったものをウインドブレイカーから何から全部ナイロンバッグ*1に詰めて、コインランドリーへ。もう午前4時過ぎで誰も使ってなかったから、今度はドラム式に突っ込む。部屋に戻ってシャワーを浴びて、仕上がり予定の2時間後にタイマーを付けて仮眠。

タイマーが鳴ったことにはもちろん気づかなかった。7時過ぎに目が覚めて、慌ててコインランドリーに行くと全部ちゃんと乾いていた。回収したものをベッドの端に広げて、あらためて爆睡。

2025/04/20 Sun

11時頃、目が覚めた。当たり前だが、二日酔いが残っている。クラブで飲んだ量はさほどでもなかった。ジントニック、ビール、スミノフアイス、ビール。でもその前に、ベトナム料理屋でまあまあ飲んでいたから(ビール、蒸留酒のカクテル、そしてビール)、その累積が効いていた。とりあえず、愛媛に来てから今日までの中では一番重い二日酔い。

まあ、仕方がない。「明日のことなんかどうでもいい」と考えてそうしたのだから。それが酒を飲むということ。私は明日を蹴飛ばして昨夜を過ごした。その明日が今日だから、私はいま昨日の私に蹴飛ばされている。どんな目に遭っても文句は言えない。

起き上がって、前日のパン屋で余分に買って冷蔵庫に入れっぱなしにしておいた惣菜パンを食べた。もちろん冷たいけど、おいしい。ふと、昨日までトートバッグに付けていたパレスチナ模様の布飾りがなくなっていることに気がついた。トートバッグにぶら下げていたが、そのトートバッグは昨夜コインランドリーで洗ったので、布飾りはその前に外してあった。その外した後にどこにやったかを覚えていない。思い出そうとしても、記憶がグレーのモヤの向こうに紛れていて、よくわからない。そこで記憶ではなく論理に頼って考え直す。一緒に洗濯したなら、他の洗濯物と一緒にその辺にあるはずだが、そこにはない。ということは、コインランドリーの洗濯機の中に残っているとしか考えられない。

着替えてコインランドリーに向かい、昨夜使った洗濯槽のフタを開けたら、それはあった。薄っぺらい布切れで、裏面が黒くなっているので見落としていた。洗濯槽の内側に張り付いていたそれを剥がして、写真を撮った。

見たことがないぐらい丸まっていた

部屋に戻り、ベッドにばたんと仰向けになり、あらためて今日の予定を考えた。事前の計画はゼロ。外は完全に晴れていた。明日から天気が崩れるようだが、愛媛に着いてから今日までは見事にすべて晴れていた。今日一日、誰との約束もないから、どこに行ったっていいのだが、何も決めていなかった。

とりあえずは、昼飯。何か特別なものを食べたい。Googleマップにブックマークしておいた中で、優先度が一番高いところに行こう。明日死んだっておかしくないのだ。いや、今日の昼飯を食べた直後に死ぬ可能性だってある。最後の食事になってもいいものを食べなければいけない。

日の出食堂

事前にリサーチして、まだ行ってない店がいくつかあったから、そこから絞り込むことにした。とりあえず、昼しかやってない店が優先だと思った。今回の旅ではタイミングが合わなくて、行けないかもしれないと思っていた店があった。山西駅のそばにある、日の出食堂。

majimena.ehime.jp

↑のページもわかりやすいが、自分はやはり(またしても)「愛媛めし」でこの食堂を知った。

www.youtube.com

完全無欠の地元メシ。家族経営で、長年この地域の人々に愛されてきたお店。ここの「中華そば」にしようと決めて、伊予鉄道の高浜線で最寄りの山西駅に向かった。

これまで伊予鉄道は路面電車にしか乗ったことがなかったが、伊予鉄道には普通の線路を走る電車も何本かあって、高浜線もそのひとつ。しかしどこに松山市駅のホームがあるのかまったくわからず、Googleマップを開きっぱなしでも迷いまくった。同じ場所を何度も行ったり来たりして、ようやく電車に乗れた頃には1時半を過ぎていた。

山西駅を降りると、日の出食堂は目の前にあった。おそるおそる中に入ると、2時近くにもかかわらずけっこうお客さんがいて、1〜2人用みたいな小さい席は残っていなかった。店員さんに「一人です」と指を一本立てて示すと、6人ぐらい座れそうなテーブル席に促されたので座った。ざっとメニューを眺めた後、最初から決めていた「中華そば」を注文して、追加で愛媛めしに出ていたおでんも注文することに。じゃがいも、ムール貝、タチ(牛の内臓)、じゃこ天、大根、牛すじ。カウンターに置いてあるおでんのケースの前でタネを言うと、先ほど案内してくれたおじさんが一つひとつ取ってくれる。

おでんを持って席に戻ると、すぐに中華そばも到着。めちゃめちゃ早い。そして、麺を口に入れたら想像を遥かに超えて熱い。普段食べるラーメンに比べて数段熱く感じる。そしていつまでも冷めない。先の動画によれば、そばの上に乗せる具材は鍋焼きうどんで使う鍋で温めているようなので、それも関係しているのだろうか。

いつまでも冷めない

スープは素朴だが、甘みがあって、他にはない不思議な味わい。おでんはタチというのがレバーのようで、新鮮な食感。店内の棚にはお稲荷さんがいくつか乗った皿が置いてあって、客はお店の人に一声かけてそれを取る。私もそれをひとつ食べたいと思ったが、かなり満腹になってしまいそうだったのでやめた。店にはいかにも家族経営の空気が満ちていて、常連さんとお店の人たちがひっきりなしに喋っている。常連さんを含めて、ひとつの家族のようだ。あるいはチーム。あるいは・・やっぱり家族。近くに住んでいる、もう若くはない子供が、親のいる家に帰ってきて近況を報告しているかのような、ほんとにまったく何でもない話が交わされている。私は友達の家で「お昼食べてく?」と出されたラーメンを食べながら、その友達が家族と話している声を聞いているような気分になった。

料金は1,100円ほど。ラーメン1杯におでん5種だから今どきにしてはかなり安い。たしか動画の中でも、意識して価格を維持していると言っていた。御礼を言って店を出て、じゃあ帰るか・・と思ったが、このまま電車に乗ってまた松山市駅に帰るなんて、なんだか馬鹿馬鹿しいと思った。周りを見回したが何もなく、同じ駅から電車で帰る以外のオプションは何も思いつかなかったが、だからこそそれは選択したくないと思った。ラーメンだけ食べに来たのかよ。そういうわけじゃないはずだった。それで駅の前を通り過ぎ、帰り道とは逆方向に歩き始めた。「結局何もなかった」ということになる可能性は高い。それでも、そのまますでに知ってる場所に帰るよりはましだと思った。

三津浜に至る

山西駅から、市の中心地である松山市駅とは逆方向に進んでいくと、一体何があるのか。想像もつかなかったが、「三津」という名前の駅があることはGoogleマップからわかった。とりあえずそこまでは行こうと思った。幸い雨は降らなかったが、海が近いせいか肌寒くなっていた。今回の旅にはウインドブレイカーと薄い上着を一枚ずつ持ってきたのだが、今日は日の出食堂に行くことしか考えてなかったから、Tシャツの上に薄い上着を羽織ってきただけだった。半袖のままよりは良いが、このまま体が冷えたら嫌だなと思った。

山西駅から三津駅へ向かう道中
公民館的な何か
圧倒的固定価格

いくつか目についたものを写真に撮りながら、三津駅に到着した。寒くなってきたし、もういいだろう、電車で帰ろう。と思ったが、宿までにかかる時間を調べようとGoogleマップを開いたら、事前にリサーチしていた三津浜焼き(独自に進化した三津浜ならではのお好み焼き)の店が近くにあるようだった。日の出食堂に行ったばかりだから、今は食べられないが、明日来るかもしれないから、下見として店の場所だけでも確認しておこうと思った。ノープランの醍醐味。散歩の即興的延長。

三津浜焼きの店は三津浜商店街の方に複数あるようだった。商店街は駅の目の前にある橋を渡った向こうにある。商店街の地面は石畳のようになっていて、オシャレというか、ハイカラというか。吉祥寺とか下北あたりにありそうな、若い人がやってそうな今風の店も多い。路地では子連れの若い家族同士で井戸端会議をしていたりする。こんなコミュニティがこんなところにあるなんて。あまりにもさっきまでの町並みと変わっていて、映画のセットに迷い込んだみたい。

事前にチェックしていたのは、「愛媛めし」で紹介されていた「お好み焼き みよし」。

www.youtube.com

じつは「みよし」という名前の店は商店街の入口にもあって、そちらもけっこう有名なようだった。こちらがチェックしていたみよしはといえば、お客さんが一人食べていた。店の前にはなぜかパトカーなどについているぐるぐる回るライトが黄色く光っていて、ものすごく目立つ。これなら次に来ても迷うことはないと安心して、今度こそ帰ろうと思ったが、辺りを見回すと海のすぐそばまで来ているようだったので、せっかくだから海を見ていこうと思った。散歩の再延長。

ラ・ムー

松山に来たら海、とは思っていた。海を眺めてボーっとしながら何か食べたりしたい、と。しかしこれまで一度も海は見ていなかった。昨日のパン屋さんは「伊予灘に行け」と言っていたっけ。結局伊予灘ってどこなんだ。とりあえず海がありそうな方、建物がなく、空しか見えない方に向かってあてもなく歩いていく。砂浜とかはなさそう。漁港とか、船が停泊している港だろうか。実家の近くにもそんな港がある。砂浜みたいなゆったり眺める海ではなくて、どでかいコンテナを積んだどでかい船が行き来する港。ケタ外れにでかいものを見たいならその方が良いが、波の音を味わいたい人にはあまり合わない港。でもせっかく来たので、そのまま行く。大体、こういうところってだんだん関係者以外立入禁止になったりしがちなので、それが見えたら引き返そうと思った。それが近づいてきた感じがしたころ、でっかいディスカウントスーパーが現れた。「ラ・ムー」。

tabelog.com

しばらく人の気配がなくて寂しい気分になっていたから、とりあえず入ってみた。けっこう沢山の人。こういうローカルなスーパーみたいなところで、お土産を買いたいと思っていた。真剣に物色。でも、お土産になりそうなものはなかった。

店を出て、あらためて海の方に行こうとラ・ムーをぐるっと回ったら、人が並んでいるスタンドみたいなものがあって、ソフトクリームやかき氷、たこ焼きなどを販売していた。価格は100円。・・まじか! さすがに安すぎる。空腹ではなかったが、デザートは食べたかった。地元の人の後ろに並んで、ソフトクリームの食券を購入。バニラ、チョコ、ミックスがあり、前の人は皆ミックスを買っていたけど、私はシンプルにバニラ。店でソフトクリームを買って食べるなんて何年ぶりだろう。少なくとも5年は食べてない。いやもっとか。

港のアイススタンド

けっして大きくはないけど、十分な量。ラクトアイスとは全然違うずっしりした食感。普通にうまい(笑)。コーンも柔らかすぎず、持ち手の紙以外全部おいしく食べられた。すごい満足。他のお客さんはかき氷とかたこ焼きも買っていた。途中でたこ焼きが売り切れになって、残念そうに諦めている人もいた。人気店!

100円ソフトクリーム、まじやばいな・・と思いながらあらためて港の方へ。海が見えて、やはり船ばかり。もうこれ以上は行けないかと思ったところで、何か人だかりが見えた。行ってみると、遠く向こうにどでかい客船が見えて、ちょうど出航するところだった。老若男女がそちらに向かって、大きく手を振ったりスマホで写真を撮ったりしている。自分ももちろん釣られて撮った。

何かを眺めている人々

客船からこちらを見ている人たちもいるが、こっちの人はちょっとどうかと思うぐらい真剣に手を振っているのに、船の方から手を振る人は誰もいない。一人ぐらいいてもいいのに、と自分は振っていないがなんだか納得が行かない。しかしこちらの人はとくにそんなことは気にしていないようで、いつまでも全身を使って手を振り続けている。そんな人に、私もなりたい。いずれそのうちに・・。

画本図書館

客船が見えなくなって、いよいよやることがなくなったので今度こそ引き返すことにした。でもその前に、ラ・ムーに戻ってまたソフトクリーム。2個食べても200円! これが貧乏性か。商店街の方に戻り、さっきとは違う道から帰ろうと思った。道の構造はシンプルだから、最終的に駅の方に向かってれば迷うことはないはず。若い人の店だけでなく、見るから〜に味のあ〜る古〜い飲食店も多い。店内で常連さんたちと喋っているのが外まで聞こえてくる。もう飲み始めているのだ。

ふと、まだ通っていなかった寂しげな通りがあったことに気づいたので、そちらに入った。このまま進めばあっちの通りに抜けられそうだな、なんて思ったところで地元の人向けの掲示板が目に留まった。どこにでもあるような、地域のイベントや〇〇教室の生徒募集みたいなチラシが貼られている掲示板。

トタンに目を奪われて半分ぐらいトタンになってしまった

その脇に目をやると、「画本図書館」と手書きで書かれた看板があった。どうも公共のものではなく、有志で作られた私設の図書館のようだった。看板が示す方に目をやると、奥の方にそれらしき建物があり、入口には「開館中」というこれも手書きで書かれたのれんが掛かっていた。何もかもが手作りの雰囲気で、果たして行くべきか、やめるべきか、けっこう迷った。時刻は午後4時過ぎ。もう随分寒くなっていたし、夕食のことを考えたらそろそろホテルに戻って休んでおきたい。「行ってみたけど、興味を惹かれるものは何もありませんでした」ということになる可能性もあった。・・けど、結局行った。1割でも2割でも面白い可能性があるなら、行った方がいい。二度と来れない可能性の方が高いのだから。ひと言で言うなら、「行かないのはもったいない」と思ったのだ。

私道のような敷地をおずおずと進み、「開館中」ののれんをくぐって中を覗いてみると、ラヴェルのような静かなピアノ曲が流れていて、館の管理をしているらしき女性が座っていた。室内には机と椅子、そして本が並んでいた。でも、図書館というほどの量ではない。こんにちはと挨拶をすると、上にも本があるというので靴を脱いで2階へ上がった。果たして、想像の遥か上を行く漫画王国が広がっていた。

(つづく)

*1:RubyKaigiでもらったANDPADのノベルティ。RubyKaigiのノベルティってその旅の最中から使えるものが多いので本当にありがたい。