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鶴見済さんと雑談をする会@甲羅文庫に行ってきた

先週土曜の1/18、千葉県市川市の甲羅文庫に鶴見済さんが来て著書に関する雑談をするというので行ってきた。

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雑談と言っても、あてもなくダラダラ話すということではなく、2017年に刊行された『0円で生きる』という鶴見さんの著書を中心に、それに関連して鶴見さんがどんな活動をしていて、どんなことを考えているのかという話を聞いたり、参加者から質問を受けたり、その参加者各々の考えを述べたり、といったことをする読書会のようなものだった。

事前に近著をいくつか読んでいたので、鶴見さんの話はどれも腑に落ちるものだった。マルセル・モースの贈与論を踏まえた議論、「あげる・もらう」がもたらす不可避的な力関係の発生、物自体が意思を持って人手を渡っていくかのような感覚など、これまでに考えたことがなかった論点も多かった。

物をあげることによって、その人が優位に立ってしまう、という話については、筒井康隆が似たようなことをどこかに書いていた。たしか、「仮に純粋な好意であったとしても、お金をもらったらその時点で自分の立場が下になる(だから迂闊にもらってはいけない)」みたいな話だった気がするが、出典は覚えていない。

また、子どもを共同で育てるという話が出てきて、それを聞きながらふと思い出したのは加納土監督の『沈没家族』だった。
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これはあるシングルマザーが、一緒に子育てをしてくれる人を募集して、さまざまな人たちと同じ屋根の下で子育てをしていくという実話で、その育てられた土さんが自ら監督して制作したのが映画『沈没家族』。自分は土さんが寄稿した以下の本を読んで初めて知った。

子育てをするメンバーには「だめ連」の神長さんやペペさんもいて、映画にも登場する。この共同の子育ては非常に上手くワークしていたように思えるが、そうでなかった場合との違いはなんだったのだろうか、と思ったりした。

『0円で生きる』にも書かれていることだが、なるべく出費をせずに生きていこうと思ったら、ある種の共同体の一部として、他人と少なからず深く関わって生きていかざるを得ない。コンビニで、店員の顔も見ず、一言も交わさずに物を買えるという現実は、その物を有料で買わなければいけないというデメリットの代わりに、他者とのコミュニケーションは不要になるというメリットを実現している。

どちらが正しいということではなく、他者との関係が濃くなるということは、その関係に基づく責任を背負っていくということを意味していて、あたかもその責任を負った見返りのように、出費をせずに何かを得られるという状況があるようにも思える。そうであるなら、果たして他者とは深く関わらずに、それでも共同体の一部としての恩恵に与りたいといった場合、我々はその絶妙なバランスを探っていかなければいけないのか、あるいはそんなことが可能なのか、そもそもそれは我々が目指すべきことなのか、などいろいろ考えた。

寄付の話

寄付の話題も少し挙がった。寄付は巡り巡って自分に、あるいは社会に還元されるに違いないが、同時に寄付先をどうやって探すかという課題もあるという。

自分は数年前、コロナ禍に突入した頃、いくつかの組織やプロジェクトに対して、単発・継続を問わず寄付をした。思いついた順に挙げるだけでも、ビッグイシュー、もやい、Colabo(コラボ)、ほっとプラス、難民支援協会、Dialogue for People(D4P)などさまざまだ。

しかしその調子で何年も続けるのは難しいというか、自分の生活を損なう可能性も出てくるので、寄付先は徐々に減らしていった。その過程にあって、「ちょっと大変だけど、まあこのぐらいなら無理はないか」と思いながら寄付をしているときに考えていたのは、「寄付は税金の一種」ということだった。

たとえば、現在も支援を続けているColaboについて言えば、彼らが行っている若年女性の支援活動は非常に大切な取り組みであるにもかかわらず、本来それを率先して行うべき自治体や国は必要な取り組みをほとんどできていない。そして我々が支払っている税金は、こうした活動にほとんど振り分けられていない。そこで、私は未来を、そして社会をより良くするための一種の税金として、直接Colaboに寄付をしている。
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鶴見さんは非常に柔らかい印象の人で、近著からそのような感じの人かなと思ってはいたが、思っていた以上にそうだった。自分はけっこう緊張していたから、あまり十分には話せず、後から「あんな話もすればよかった」と思うことばかりだった。またこのような機会があればと思う。

甲羅文庫に置いてあった『脱資本主義宣言』はまだ読んでいなかったから、購入してサインもいただいた。本に関わるメッセージも書いてもらって、嬉しかった。

市川の甲羅文庫ではオープン当時から4ヶ月程度、棚を借りて書店内書店みたいなものをやってみていた。行ったのは今回で5〜6回目ぐらいだったが、いつ行っても居心地が良いところ。また近いうちに行きたい。

https://kamebooks.jimdofree.com/%E7%94%B2%E7%BE%85%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%B8%82%E5%B7%9D%E5%B8%82/