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所用のハシゴ、読了、稚拙な物語

午前11時起床。前日は2時半頃に寝たので、ようやく8時間睡眠確保。しかし11時まで寝ないと8時間確保できないとは良くない。もう少し早く休みたい。

昼から午後にかけて、所用のハシゴ。まず所用Aを電話で済ませて、出かけて所用B、そのまま少し足を伸ばして所用C。猛暑というか、ものすごい蒸し暑さでダラダラ汗をかいた。

外では普段ジムで着ている速乾性のスポーツウェアを着ていたが、汗を吸う前の段階で冷房が効きすぎたビルなどを行ったり来たりするうちに体が灼熱と寒冷を行き来するような感じになって危険を感じた。

帰宅してしばらく休んで、終盤まで来ていた以下を読み終えた。

非常に面白かった。参考図書には多くの本が並んでいるが、本書は2021年春の出版ということもあってアクセスできるものが少なくない。これを入り口にいろいろ読み進めたい。

著者のいのうえさんはプロフィールを見ると1939年生まれだというので驚いた。以前の感想でも書いたが、非常に軽やかでオープンな、言ってみればノリの良い文章で少なくとも戦後生まれの方だと勝手にイメージしていた。けっして攻撃的ではない、どちらかと言えば穏やかな筆致だが、パワフルでエネルギーを感じる本だった。

ここで紹介されている各種の新宗教の教義等を眺めながら、そこに共通しているのは「幼稚さ」だと感じた。現世利益を求める俗的な人々をターゲットにしているからなのか、「え?」と聞き返したくなるほど単純で極端な話ばかりが至上の教えとして示されている(「神」とか「霊」とか「サタン」とかが喩えではなく、現実世界に影響を及ぼす実体のある存在であるかのように扱われている)。

この「幼稚さ」を象徴するのが、著者のいのうえさんも最後にあらためて付記している「男尊女卑」という共通する女性観である。男尊女卑は、男性が無意識のうちに素朴に獲得している観念であって、それは男性自身が女性のあり方や心情を想像したり、自らのその素朴な感性を批判的に省みたりすることがなければ崩されることがない、単純で浅はかな概念の代表と言える。私は現在の日本政府および与党の政治家たちが選択的夫婦別姓に消極的である理由を、その多くを占める男性議員の幼稚さ・思考力の低さにあるものと見ていたが、それだけの問題ではなく、彼らがこうした新宗教と結びついていることも大きく影響しているのではないかと本書を読んで感じた。

第1次安倍内閣は「お友達内閣」などと揶揄されていたが、それは揶揄などというかたちで気軽に批判されるべきものではなかった、と今となっては思う。それは幼稚な政治家たちのあり方を容認する初めの一歩だったのだと思う。それは専門家たちの批判的な意見を汲み取り、昇華しながら建設的な方針を立てては実行していくといったやり方の真逆にある、自分たちにとって心地よい場所で自分たちが気持ち良いと感じることだけを優先し、批判されれば激昂し、支離滅裂な答弁を自信たっぷりに繰り返すといった幼稚な振る舞いに簡単に直結し、またそれは強引で陰湿な公文書の改竄や、彼(ら)の想像の範疇に存在しない社会的弱者たちに対して、憎悪すら感じられる攻撃的で冷淡な扱いを公的機関に行わせることにもつながった。自らを批判するものはすべてサタンとして扱うという、論理のかけらもない浅薄で単純な世界観と、その政治家たちの子供っぽい欲望はよく似ている、というかほとんど同じものだ。

この「幼稚さ」という問題は、そのような政府与党には留まらない。最近ではSNSYouTubeを活用したトンデモな政党が少なからぬ支持を集め、議席を獲得すらしているが、この背景にも上記の新宗教と同様のことがあるように思える。トンデモな言説はそのディテールだけを見れば緻密な論理で構成されているようだが、俯瞰的に見れば支離滅裂で極端、不整合で稚拙なものだ。

稚拙で単純で、しかし劇的な物語に人が引き込まれるのは、日常が苦しく、十分にものを考える余裕がないことが影響しているように思える。現在の政府は先述の「攻撃的で冷淡な切り棄て政策」によって弱者をさらに追い詰めているが、そのように切り棄てられた弱者はそれでも残されたかすかな拠り所を求め、自分を救ってくれる単純な物語に手を伸ばしてしまう。そしてその単純な物語の提供者は、自らと親和性の高い稚拙な政府と結びつき、さらに問題を悪化させていく。ここにトンデモな政党がフリーライドして、また弱者の心の拠り所として支持を集めていく。

教祖が神に次ぐ存在で、他の人類とは一線を画す高尚なものであるとか、良からぬことはすべてサタンが画策したことだとか、ちょっと身を引いて考えればありえない話ばかりだが、それを一般の人々が信じてしまう、いや「信じたい」と思ってしまうことに核心があるように思える。我々はここから抜け出せるのだろうか。あるいは少しでも事態を改善させることはできるのだろうか。