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転職して1年3ヶ月が経った

2018年11月にフリーランスから会社員に転職して、1年3ヶ月ぐらい経った。

いろんなことが変わったが、一番の違いはお金の心配、将来への不安が減ったことだろう。

以前はなんというか、遠洋漁業の漁師のように(知らずに書いてますが)、年に1度だけ帰ってきて収入を得てまた1年の漁に出る、みたいな感じで、ちょっとギャンブルっぽいというか、体が丈夫でなければできないし、社会保障って何、という感じだったけど、そういう不安というか、問題がことごとく解消した。

ぼくはそれまで一度も就職したことがなかったし、組織の戒律みたいなものとは無縁だったから、たぶん普通の会社だったら不適合というか、そもそも入ることもできなかっただろうけど、そんな自分が持っている数少ない、そしてだいぶ偏った長所をちょうど欠けたパズルのピースのように求めていたのが現在の会社(ヴェルク)で、これはやはり幸運な出会いだったと言えるだろう。

ヴェルクの社員は現在10名で、社長は以前から同社の社員を最大10人まで、と決めていたらしいからこれ以上は増えない。(たぶん)

それは良いことで、なぜならヴェルクは現在、知る人ぞ知るという感じの小さな会社だけど、数年したらそれなりに知られていることになるかもしれないとぼくは思っていて、もしそうなったら、その外側に出る情報だけを見て興味を持った人が入ってきて、無用なミスマッチが生じることになっただろうから。

現在のメンバーは、とくに有名でもない現在の会社の「中身」を知ってわざわざ入ってきている人たちだから、それだけでけっこうコンテキストが一致しているというか、無駄なコミュニケーションコストが生じない。

ぼくの仕事はカスタマーサポートと社内編集者みたいなもので、割合的には7:3から8:2ぐらい。サポートが忙しいときはまったく編集をしない日もあるから、時期によっては9:1ぐらいかも。

編集でやっていることは以下にざっくり紹介していて、
note103.hateblo.jp

サポートとしてやってることは昨年登壇した以下の発表で簡単に紹介した。
note103.hateblo.jp

動画もある。(1分40秒過ぎから)
www.youtube.com

サポートをしながら思うのは、ぼくは前職の頃からとにかく「相手の身になる」というのが自然にできるというか、そう言うとなんだか自慢のようだけど、そういう意味ではなく、これはクセというか性格みたいなもので、努力してそうなってるわけでない。妄想力というのか、気づくとどんどん考えが滑って向こうに移動してしまって、自分の思念から相手の思念に変わってしまっている感じ。

こういう人、けっこういるのではないかと思う。誰かに何かを言おうとして、でもその直前に、「こんなこと言われたらイヤだろうな・・」と思って口をつぐんでしまうとか。それって一般的には良くないことのように言われがちで、「そんなこと気にしないでどんどん表現すればいいんだよ」とか、「自分が傷つきたくないだけでしょ」みたいに軽く扱われたり下に見られたりしてしまうけど、実際には「他人の身になってモノを考える」という点でとても良いことだろうと思う。

とくにぼくは結構クレーマー気質というか、細かいことをいつまでも追求するし、なにか利用しているサービスに不手際があれば、これってこの会社に特有の悪意にもとづく現象ではないか?とか考えがちなので、自分で自分のことを「こういうお客がいたら面倒くさいだろうな」とよく思う。

で、ぼくは基本的にすべてのお客さんに対して、「自分のような面倒くさくておっかない人」というデフォルト設定をしているので、対応は必然的に丁寧になるし、しかしほとんどすべてのお客さんはそんな面倒な人ではないので、「いいお客さんばかりだ・・」といつも思ってる。

*たぶんいわゆるBtoC、つまりAmazonやLINEのように一般の人たちがお客だったら全然違っただろうけど、うちはBtoBという、会社の看板を背負った人たちがお客さんなので、勤め人同士の会話ができて、それが功を奏しているのだとは思うが。

少し変わってるのはぼくの出社時間で、毎日午前10時から11時半ぐらいまでは自宅で作業して、それから出社して、13時半ぐらいからまた会社で業務を再開する。

この方式にする前は、毎朝出社して午前10時から会社で作業をしていたが、そのためには家を朝早く出る必要があり、かつ朝の電車は何かと遅延しがちで、せっかく早く家を出ても始業時間に間に合わなかったり、間に合ったとしてもそんな誰が悪いとも言えない遅延にいちいちイライラしがちで、心身も疲弊するし、何より努力に結果が見合わない、と思っていた。

その点、朝イチの作業を自宅でやることになれば、始業直後の忙しい時間帯でも余裕を持って、万全のコンディションで対応できるし、昼前の出社なら電車も空いているし、心身の負担も激減する。起床時間も朝に出社するより遅くて済むので、睡眠も十分に取れる。良いことづくめなのでそれを社長に提案したら、OKしてもらった。

こんな対応は、普通はなかなかできないだろう。提案する人もいないかもしれないが、とはいえこの会社だから提案できた、というのもある。合理的なアイデアで、誰が考えてもこれは「改善」だろうと思ったのでそのように相談した。

収入が安定して変わったことといえば、欲しい本を見つけたら迷わず買えるようになったこと。そして必要な家電があれば前向きに検討できるようになったこと。

以前は、そういう欲しい物があっても、いま手元にあるお金が「次の収入」までどの程度の期間もつか不確定だったから、「残せるなら残しておきたい」という感じがどうしてもあった。しかしそういうことをあまり過剰に心配しなくてよくなった。

まだフリーランスで、しかしそろそろどこかに就職したほうがいいかもな、と思っていた頃、どれだけ有名な会社で、どれだけ高給だったとしても、「コレだけはやっちゃ駄目だろう」と思うようなことはやりたくないな、と思っていた。それは、人を騙す仕事。人を人として見ず、他人の人生の恵みを、可能性を、奪い取る仕事。嘘の情報や、一時的な煽動によって利益を上げる仕事。様々な業態で、そのような犯罪的行為を通して利益を上げている会社がある。そういうのは、やだなと思っていた。

考え方によっては、自分の命を失うことに比べれば、他人に迷惑をかける方がマシだと思うことも可能かもしれないが(それを完全には否定できない)、できればそこまでは行きたくないな、ということ。

以前の音楽全集の制作は、その意味では誰に対しても誇れる尊い仕事で、それに比べたら現在の仕事は少々地味かもしれないが、それでも誰かを騙すような商売ではなく、むしろ良心的な価格で、特定の層に対しては必要十分以上の機能を提供し、さらにその品質において他の追随を許さない状況になっているから、そのような仕事に携わりながら、上記のような待遇を受けられることはやはり幸運なことだったろう。

以前の仕事はなかなかボリュームがあって、ぼくは1年中、朝も昼もなく、盆も正月もなく、体が動くかぎりそれを作っていたが、会社員になってみると、業務をしていない、会社員としてではなく過ごす時間が増えて、この時間を使ってライブに行ったり、書店を巡ったり、韓国語を勉強したり、英語をやってみたり、プログラミングで遊んでいたりする。

転職してすぐの頃、それを知らせるブログ記事を書いて、最後に「こういうときはAmazonのウィッシュリストを貼るものだけど、入社したばかりですぐやめてしまうかもしれないから、そういうのは1年継続したら貼る」みたいなことを書いたけど、いざ1年が経ってみると、今さらそのようなことをしても、これまで抱えていなかったストレスというのか、新たな気遣いみたいなものを抱えてしまうだけではないか、と思う部分もあり、それをそんなには望んでもいないよな、と思ったのでやめておくことにする。

もしぼくのこうした記事を見て、好意を持ってくれたり、その気持ちを何らかのかたちで表明したいと思ってくれる人がいたら、ただそのことを直接伝えてくれたら嬉しい。オンラインでも、オフラインでも。そしてそのうち、機会があったらゆっくり話しましょう。

あるいは、もしそんな機会が訪れないとしても、このブログに掲載しているいくつかの記事は、ぼくの本当の考えをいくらかなり写し取っているはずだから、それを読んでもらうだけでも出会いの恵みになるはず。何ということもない記事も多いけど、いつか感覚に近いものを探して、とりとめもなく読んでみてくれたら嬉しいです。