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書き手と編み手の Advent Calendar 2019 全記事レビュー(後編)

後編のはじめに

以下の続きです。

note103.hatenablog.com

後編のこちらでは、全25本のうち14日目以降の記事を紹介します。
前編に比べると、ちょっと長くなってしまったものが多いかな・・。

ではどうぞ。

14日目: 万井さん

blog.ayako-m.work

図らずも前日の鹿野さんの記事と合わせて読むとより立体的に読めそうな文字起こしの話ですが。
タイトルを読みまして、「僕もです」と思いました。

ちなみに、2年前のアドベントカレンダーでは id:minesweeper96 さんが以下の記事を書かれていて、

インタビューで意識すること3つ - From The Inside

僕はテープ起こしをしません。テープは録るし、発言や正確な言い回しを確認するという意味で聞き返しはしますが、わざわざ頭から終わりまでを起こしはしません。インタビュー中のメモが基本的にはそのまま記事になります。

とのことだったので、いやー、様々ですね。

で、ここで書かれている

  • 自分にはこの過程がないと次の「編集」に移れないらしい
  • ICレコーダーとiPhoneのボイスメモの2台で冗長化
  • 壮絶に遠回りかもしれないけど、全部起こしてそこから再構成するとやりやすい

あたりは全部自分にも当てはまることで、当てはまりすぎ、と思ったぐらいです。

とくに

インデックスするというか、マッピングというか。記憶の映像と撮った写真の順番もなんとなくインデックスされて、このシーンならこれ、と思い出せるようになります。

なんてめちゃめちゃ同じ感じがします。逆にというか、ぼくの場合はそのぐらい、もう取材現場が終わると一旦完全に忘れてるというか、骨子も流れも全然覚えてないというか、データが自分の中に残ってないんですよね。

だから、それを取り戻すためにまずは最初の土台を作る、という感じで全起こしをする、みたいな感じだったと思います*1

たとえば、ぼくがやってたのってこういう本ですが。

【vol.17】 Romantic Music| commmons: schola(コモンズスコラ)-坂本龍一監修による音楽の百科事典- | commmons

大体この中に収録されている「座談会」というのが4時間半ぐらい喋っているもので、そのほとんど全部を起こしていて。7〜8万字ぐらい?

万井さんはタイムスタンプやキャプションを入れているそうですが、それも同じで、ぼくはMarkdown記法の見出し(#)で大まかな話題をメモしておいたり、タイムスタンプはリスト記法で地の文と見分けやすくしておくとか。

ただ雑談にしても、その中で超イイこと言ってたら採用したいので、「雑談だから切り捨て」とも行かなかったですが。結局、その発言が不要である、と確信するためには文字化されたそれを目で読む必要があって、だから文字化されてない時間帯がある、ということがもう不安なんですよね。そもそも覚えてないし。

ああ、でも「これはオフレコだな、外に出たら良くないやつだな」という話題があったら、それは起こさなかったですね。万が一、コンピュータウィルスとかに感染してPCから流出したら大変なので、そういうのはキャプション(見出し)だけにしていたかもしれません。そういう意味では、今後AIとかで音声ファイルからの自動文字起こしが実現した場合には、音声の段階でそういうのをカットしておく必要があるのかなあ・・。

話を戻すと、基本的にはそうやって全部の発言をわーっと文字化するんですけど、以前にその状況についてよくイメージしていたのが、ジョン・コルトレーンを評して言われる「シーツ・オブ・サウンド」というやつで。Wikipediaによれば「音を敷き詰めたような」演奏スタイルのことらしいですが(以下で言うと多分テーマが終わった0:28以降とか)

ジョン・コルトレーン - Wikipedia

www.youtube.com

ほんとにそのパタパタパタパタ・・とキーを打ちながら文字がエディタを埋め尽くしていくのがコルトレーンのあれみたいだな・・とよく思っていました。

「そもそもメモが取れない」もわかる気がしますね。取材現場って取り返しがつかない1回かぎりのものだから、まずはそれを成功させることに全力を投じる、みたいな。仮にそのせいで、その後に編集するエネルギーが残らないとしても、良い現場と記録さえ残れば他の人が引き継いでくれるかもしれないですし。

全起こしは無駄かもな・・とは僕もよく思っていましたけど、でもじゃあ効率的な方法というものがあるとして、その方法で作った場合にクオリティはどうなるのか。またその場合の労力・負担はどうなのか、という観点も大事な気はしますね。ぼくの場合、全起こしって確かに大変なんだけど、ただ同時にそれって全然頭を使わないというか、ある種のエクササイズみたいに機械的にできるものでもあるので、それがただ楽しかったり、面白かったりして、そういう理由でその方法を選択していた気もします。

ちなみに、そうは言っても時間的・分量的にどうしても全起こしは無理!ということはあって、そういう時は起こさずにマッピング・インデックス化をするためにこういう方法を取っていました。

文字起こししないインタビュー記事の作り方 - the code to rock

で、じつはその方法を考えたきっかけになったのが前記のミネさんによる「文字起こししない」という記事だったんですよね。つながってる〜。

いやあ、つい熱く語ってしまいました・・。

15日目: 安田理央さん

rioysd.hateblo.jp

名刺管理法、すごくいいですね。Evernoteは最近全然使ってないのですが、何かしら現在使っているツールで代替できないものか・・。

紙のノートとの併用というのもグッときました。ぼくも紙ノートめちゃ使っているのですが、これが常にリングノート、それもA5です。
リングノートを使うのは、狭い机でも片面だけ出しておけるからで、A5なのもそれより大きいと机の面積を取りすぎるし、それより小さいとしょっちゅうページをめくる必要が生じて面倒だから、という理由なのですが。

ちなみにぼくの名刺管理法は、古いのは全部ScanSnapでスキャンして、Dropboxに定期的に放り込み。以前はカテゴリ分けとかもしていたのですが、Dropboxって基本ツリー構造(フォルダ分け)で管理するので、複数のカテゴリにまたがるような場合はかえって探しづらくなるし、そもそも作業の手間が増えたりとデメリットの方が大きいので、今はスキャンした日付のフォルダを作ってそこに入れてるだけ。で、こんな使い方なのでそのデータを再利用すること自体ほぼないですね(笑)。

で、新しめの名刺については保存・管理・記録すらせず、右手のすぐ出せる引き出しに入れて、ただ下から上に積み上げていく。そうすると常に直近の名刺が一番上に出ていて、見つけやすい。という・・かなりやる気ないというか、単純に名刺を使う機会がないだけの気もしますが。

いずれにしても、ノートにいろいろ貼り付けるのはすぐ試せそうなので、やってみたいと思います。

16日目: 上野さん

note.com

編集者だけど様々な自由を得るためにInDesignを覚えた。という感じでしょうか。

ぼくも前述の音楽全集の仕事ではInDesignを使っていましたが、これはまさにこの記事で挙げられている以下、

・表現力の幅が広がる
・ギリギリまで作業できる

この辺りと同じ目的だったと思います。とくに前者。
ようは、他人に頼むっていうことは、その時点でもう自分のイメージからは必ず離れちゃうんですよね。

これが原稿執筆やブックデザインみたいな、依頼主にも正直どうなるかわからないようなものだったらまた別ですが、自分の頭の中に理想とする仕上がりがあって、しかし1人ではできないから分担する、みたいな場合にはどうしたって自分の頭の中のイメージを完全に共有することはできないので、あとはそのズレをどれだけ最小限に抑えられるか、あるいは許容できるか、みたいな話になるという。

で、そういう問題を解決するためのある種強引な手段として、ぼくは自分でInDesign買ったりしたわけですが。

これにより、たとえば一旦原稿をデザインに流し込んだ後に、たった1文字だけ助詞を変えたい(「〜が」を「〜を」にするとか)っていうとき。もし自分でInDesignを持っていたらスキマ時間に数秒で直せるけど、持ってなくてデザイナーさんに頼むしかなかったら、まずメールを書いて、そのたった1文字の詳しい箇所を相手が絶対勘違いしないようにいろいろデータも揃えて依頼して、ようやくそれが終わっても今度は相手がいつ修正してくれるか不明確、場合によっては別の作業にまぎれて双方忘れてしまうかもしれず、もし直ったとしても今度はその仕上がりをデザイナーからこっちに投げてもらって、それをこっちの時間があるときに見直して・・なんてことをやらないといけない。

そんなの、めっちゃバカバカしいけどInDesignが使えなかったらそうするしかない、というのがイヤでイヤで、まあ人によってはそんなことやってられないから、という理由で適当な内容で出版できたりもするかもですが、それもできないってなると逆に買うしかなかったんだよなあInDesign、って思い出しました。

あとは1ミリ単位でレイアウトを動かした、という話についても同じような経験があって、ぼくが初めて編集(&執筆)した本*2って、最初はデザインもInDesignオペレーションもデザイナーさんがやる予定だったんだけど、参考書籍の書影を入れる場所とかをほんとに1ピクセル単位で調整したい、それができないなら作る意味ない、みたいな感じだったのでデザイナーさんに頼んで事務所に泊まり込んでマシン借りて入稿当日まで徹夜で修正していたことがありましたが、そういうのも結局メールとか電話とかで頼んでできるような作業ではないし、自分でやった方が精神的にも肉体的にもラクだし、かつデザイナーさんの作業量も減るしで、メリットが多いんですよね。

一方、以下のあたりについては新鮮というか、自分でInDesignを使っていたときには考えたこともないメリットだったので、なるほどなという感じでした。

・ほかの案件と平行で作業できる
・適正価格での発注が可能

とくに、価格の件については切実に役立つ話というか、ぼくが携わっていた長期シリーズでも10年前のスタート時点とその終盤とでは、だいぶ使える予算が違ってきましたからね・・。後から初期の予算とか見直すと、うわー随分多かったな・・って思ったり。

でも上記のように、本来なくてもいいはずの無駄な時間ややり取りを削って、かつ自分の作業もラクにする中で結果的に予算の余裕を生んで外注費も維持できるっていうのは、いろいろヒントになりそうだなあと思いました。

17日目: 加勢さん

note.com

いやあ〜、いやちょっと、こちらは物凄いですね。物凄い。この1本だけでカレンダー1ヶ月分作れそうなぐらい、本1冊読むような奥行きのある話でした。あ〜、面白かった!!

教養・・本物の教養の片鱗に触れたような気がしますが。詩を読むように楽しめるのも良いなあ、と思いました。一週間ぐらいかけて寝る前に少しずつ読みふけりたい感じです。

内容的には、「語り手」とは誰か、またそこで19世紀末の女性たちが果たした役割とは、あるいはそこにタイプライターやオカルトがどう関わってくるのか・・みたいな興味が新たな興味を呼び込んでくる非常にカラフルな話で、このレビューを書くために今30分ぐらい読んでいましたが、まだまったくきちんと読み切れていないので、取りこぼしたところはこの後にあらためて味わってみたいと思います。

しかし1万字超の、かつ一見複雑に見えなくもない文章ですが、実際には読者とともに散歩しながら丁寧に語っていくような平明な内容で、その辺りも含めてほんとに「はあ、すごい」という感じでした。

ちなみに冒頭で紹介されているインタビューも拝見しましたが、これもめっちゃ興味深い!ぼくもある意味「1社に1編集者」みたいな立場で今は仕事をしているので*3、共鳴したり、いやここまでは全く及ばないな(笑)みたいな感じだったり大変面白く読みました。

18日目: Mmcさん

mmc.hateblo.jp

わ、暗黒通信団、知ってます。以前に何かの調べ物の最中にAmazonでヒットして、これは・・同人誌?それとも商業出版物?等々、悩んでいるうちに結局問題の方が解消して購入には至らなかったのですが、インパクトが強くて覚えていました。

自分の専門ではない分野の校正、というのはぼくもそこそこ経験があって、たしかに一定のルールを設定してそこから外れたものを検知していく、という作業なので結構できちゃう、というのはありますね。

むしろ、専門家ではないからこそ客観的に、誰が読んでもこれは変でしょ、という部分に冷静に気づけたり、あるいは入門書的な位置づけのものだったら余計に「これだとわかりづらいよ」と言いやすかったりするので、そういう意味でもあんまり深く理解していなくても大丈夫、というのはあるかなと思います。

まあ、それでも多少は自分から調べたり、興味を持ったり、という部分がないとアサッテな指摘ばかりしてしまいそうなので、結果的には続けているうちに何となく詳しくなっていく、というのもあるとは思いますが。

てにをは・統一・略称等の具体的なTipsは校正担当者がいない同人誌作者の人にも役立ちそうですね。

ちなみに、こうした校正時のチェック項目についてはラムダノートの鹿野さんによる以下も猛烈に役立ちます。

note.golden-lucky.net

最後のエピソード部分も、わかる気がします。基本的に出版物って最後はお客さんの手の中に残るもので、その場所でこそ生きるもの、その場所でおいしく味わってもらえるものを作るというのが最終目的だと思ってるので、その途中の段階でどんな登場人物がどんな理屈をこねようと、読者に不完全なものを届けることを正当化する理由にはならない、という姿勢で作業に臨んでいました。

「自分のせいではない理由」なんて100でも200でも作れるけど、お客さんには一切関係ないことだし、まあ最終的にはそれも愛情の問題というか、そういう作業に愛情を持てるかどうかの違いかもしれないですが・・。

19日目: カイさん

bloggingfrom.tv

ブログ「カイ士伝」はもう10年近く前から存じていますが、このアドベントカレンダーと結びつくとは思っていなかったのでびっくりでした。

しかし内容はカレンダーのテーマど真ん中で、原稿の書き出しから売上集計とその見方まで。電書を自作する際に必要な内容全部入りという感じでもの凄く参考になりますね。

ぼくはまだ電子書籍の自作って一度もやっていないですが、ここに書かれているとおりにやれば普通にできそうだな、と思いました。

まだツール紹介の部分などきちんと読めていないので、あらためてチェックしておきたいと思います。

20日目: 五味さん

g3-enterprise.com

ひー、これまためっちゃ参考になりますね。ぼくはITカンファレンスとかよく行くんですが、そういうところって英語圏からの参加者がけっこういて、しかしたまに喋ることになってもカタコトなフレーズをブツ切りで投げ合うぐらいしかできなくて、これがあんまりツライので会社にお願いして今期から英語学習支援をしてもらうことになったのですが、そういう進捗なので終始興味深く読みました。

とくに、

答えは簡単だ。英語でインタビューしたほうが、より中身のある情報を相手から引き出せるからである。

以降の話は超濃密。下線引きまくりたくなるような内容です。

最後の「仕掛け」のところも含めて、背筋が伸びるというか、凍るというか、一線で活躍してる人はこんな景色を見ているのか・・自分はかなりぬるいな・・と非常に啓発されました。

21日目: 近藤さん

kondoyuko.hatenablog.com

近藤さんは当カレンダーには3年連続のご参加で、Twitterでもいつもその中身が詰まったご活躍を拝見して敬服しています。

本との付き合い方の変遷、のような話ですが、とくにiPad使用の話から積ん読解消法、サブスク、オーディオブックの流れまで、すごく参考になりました。

iPad、てっきりProじゃないと使い物にならない感じかと思っていましたが、Pro以外でもペンシル対応してるんですね・・まったく知りませんでしたが。しかもメルカリ。よさそう・・

積ん読のくだりの「0と0.1の違い」もなるほど、という感じでした。
ちなみにぼくの最近の積ん読解消法は「数ページだけでもいいから読んでおく(全部読まなくてOK)」というもので、数ヶ月前にふとその方法にしてみたらけっこう解消されていったのですが、これも「全部読もうとしない」という点では共通してるかもしれないですね。

あとKindle Unlimitedについて、これを読んで「なるほど〜」と思って少し検討したのですが、ただUnlimitedってどの本が対象なのかちょっとわかりづらいんですよね・・「登録すればこれが無料で読めるようになるよ〜!」という書籍リストが簡便&網羅的にチェックできたら、もう少し検討しやすいんですが・・。

逆にというか、Amazonプライムの範疇で読める「Prime Reading」でもそこそこ無料読みができて、かつUnlimitedとの対象書籍の違いもわかりづらいので、今のところPrime Readingに甘んじているのですが。

あと1回に10冊まで、というのも微妙に足かせになっているので、Unlimitedの方ならこれが50冊までOKになる、とかだったらいいのになあ、とか。

オーディオブック(audiobook.jp)、たまたまですが、ぼくもこれは以前から使っていて、なかなかいいですね。それこそサブスクで、月750円とかで聴き放題というのもお得感ありますし、けっこう聴きたいものも入っているので(ぼくの場合は韓国語学習系とか)重宝しています。*4

「文喫」の話題がありましたが、少し近いところでぼくは最近、フヅクエ(fuzkue)さんにめちゃ注目しています。

fuzkue.com

すでにご存知かもしれないですが、近藤さんもお好きではないかな・・と。ぼくはまだメルマガを読んでるだけで、実際のお店には行けてないのですが、そういう前提ながらもお勧めしたいです。店主の日記もスゴイです。

22日目: 森嶋さん

www.facebook.com

取材・執筆全体の流れをツールという視点から辿っていく感じで面白かったです。万井さんなど他の記事ともテーマが重なるところがあって、その部分の異同がまた良いですね。どんなレコーダを使ってるのか、どんな手順で原稿化してるのか、iPadをどう使ってるのか・・などなど。

ちなみにぼくも以前はオリンパスのICレコーダを使っていましたが、その後にソニーのやつに買い替えて、それからはメインがソニーのそれ、サブがiPhoneのボイスメモ。という感じになりました。(オリンパスは引退。あまりいろいろ持ち歩くのも紛失が怖くて・・)

あと原稿はひたすらテキストエディタ(MacVim)で作って、音声はExpressScribeで細かく調整しながら繰り返し再生。原稿の履歴管理はDropboxとGit。著者さんとのやり取りは何でもどうぞ(Word、メール本文への直書き、ファクス、電話等)。という感じかなあ・・

ああ、あと校正の赤字はほとんどプリントアウトした紙に入れてます。この辺はそれこそiPad使っていたら変わっていたかもしれないですが、今のところは数ページ分デスクに広げて、全体を眺めながら地図にメモを書き込んでいくように進めていく、という。
この際に使うペンは自分用の赤字ならフリクションで、著者さんやデザイナーなど他の人に渡すものならゼブラのSALASAクリップの0.5で赤を入れて(色が綺麗に出るので)、それをスキャンしたのをメールとかGoogleドライブに入れて共有、とか。

あとそんな風に紙を使う都合上、自宅にはプリンタ必須で、今使ってるのはエプソンのEP-805AW。エプソンのこれ系のシリーズは今まで不便とか不満を感じたことがほとんど一度もなくて、本当にありがたい製品です。

あとそうだ、ScanSnap(iX500)もまじマスト。これを買うまではそのプリンタ(複合機)で1枚1枚撮っていましたが、その時期のコストを心底後悔するぐらいスキャンがラクになりました。ラクかつ速い。以前の編集仕事では何十枚も一気にその赤字原稿をスキャンしたりしていたので・・この価格でこの活用頻度はほんとにコスパ良いどころの話ではなく、もしスキャンよく使うのに持ってない、という人にはお勧めできます。(今はもっと新しい機種が出てるかもですが)

23日目: 中薗さん

note.com

ライター業とITエンジニアを組み合わせ・かけ合わせて仕事することについて、という感じのお話でした。

こちらも具体的な話が満載で参考になりました。とくに、選択と集中のくだりで写真・カメラは捨てた(物理的にも方針的にも)というのは実際に身銭を切って体験しないと言えない話なので、すごく貴重な情報だなあと思いました。

「ライター×コンビニ店員」では価値を提供できないけど「ライター×金融関係」なら需要はあるはず、という論も非常に説得力がありますね。

考えてみると、ぼくが以前に音楽全集の編集とかやりながら趣味でプログラミングを始めたのも、そのかけ合わせ・組み合わせで独自のポジションを築く、という目論見があった気がします。

結果的には、そういう世界ではまさに中薗さんのように、深いレベルまで食い込んで記事化できる人たちがいるわけで、あまりにも甘い見込みというか、何も考えてなかったに近い気もしますが、とはいえそれをやっていたおかげで今の会社(IT系)に転職できた*5とも言えるので、方針としては間違ってなかったな、とも思います。

まあ極論すれば、誰もが何かしら複数の要素を組み合わせて自分のウリにしているとは思うのですが、それが他人にとって価値あるものになるのかどうか、という事が大事なのかなあ・・。

同記事は全編にわたって自分の問題意識と重なっているようで面白かったですが、とくに後半の「パラレルキャリアだからこそ生まれた価値」以降の話はマーカー引きまくりたい感じでした。依頼主の欲しい役割を果たせる人が希少であるほど、仕事は入りやすくなるし、交渉もしやすくなる。これはぼくなりに表現すると、クライアントと対等な関係になれる、という事かなとも思います。

ちなみに中薗さん、どこかでお名前を見たような・・と思ったら、「エンジニアHub」でよく記事を作っている方ですね。比較的最近の記事で、ぼくの関心に近いものだと以下など。

じつはぼくは以前にこういう記事を作ったのですが、

山口の公共施設から世界最先端のアートを発信! ― ITを駆使して文化事業をハックするYCAMの取り組み - GeekOutコラム

これはぼくにとって初めてWeb媒体に掲載する取材記事だったので、肌合いが近いエンジニアHubの記事をいくつも参考にしていまして、そのときに中薗さんの記事も読んだなあ、と思い出しました。その節はお世話になりました・・。

24日目: ひうらさとるさん

note.com

おお、エッセイ漫画、今回はバラエティに富んでいるなあ・・などと思いながら読み始めて、どこかでお名前聞いたことがあるような・・と思ったら長年ご活躍の先生でした。光栄!

漫画家になれたのは、曖昧で抽象的な「夢」を追い続けたからというよりも、具体的に好きな状況・環境を実現するために着実に各種計画を立てては実行してきたから・・みたいな話だと思いましたが、いやあ、その実現したい状況はまさにぼくも超完全に一致するのですが(クーラーのきいた部屋であたたかい布団で漫画を読んで飲食)、でもそのための計画を着実に実行するのか、しないのか、という間には深くて長い河が流れているというか・・その実行の力がすごいなと思います。

最近時々思うんですが、テレビとかで見るわかりやすい物語では、つねに主人公はまず夢を思い描き、憧れを抱き、それを追い求める過程で挫折を味わい、しかし最後には成功を果たしたり、あるいは壮大な失敗を味わったりといったドラマを経験するわけですが、実際の人生ではそういう最後の「結論」に行き着かないまま死んでしまうことも大いにあるというか、むしろその方が大半かも、と思うんですよね。

言い換えると、たとえばぼくは普段ダラダラTwitterを見ている時間が長くて、ただボーッとしながら、でもそれが人生の目的というわけではないから、「もう少し休んだらなんかやる」というモラトリアムを過ごしているわけですが、その時ってじつは頭の中で、半ば無意識のうちに「人生というものは、いずれにせよ最後に成功なり失敗なりの結論がやってくる。今はあくまでそれに行き着くまでの途中段階である」とか、「そのうち放っておいてもドラマティックな展開がやってくる」みたいに思ってるフシがあって、でも実際にはそんなものが来る前に、地道にアクションを積み重ねていないとそういう変化や結果は手に入らないんですよね。

その「じっとしていても何かが手に入るはず。それが人生だから」という思い込みをどう打ち破ったらいいのか、地味だけど確実な仕方で仕事を積み上げていく、ということをどうしたらやっていけるのか、みたいなことをこちらの漫画を読みながら考えていました。

25日目: モーリさん

medium.com

最終日。Mediumを使っての、テキストエリア(編集画面・入力欄)の話でした。

ぼくはMediumとnoteってほとんど同じような編集画面だと思いこんでいましたが、なるほど、たしかに簡易記法(リストなど)はnoteの方ではサポートされてないですね。

それらは行(段落)にカーソルを入れると「+」からメニューを選んだりできるので、共通点は「行ごとのWYSIWYG」みたいな感じでしょうか。

で、おそらく現時点の結論的には、そのMediumの方で実現されているような「行ごとに編集できて、かつ簡易記法をサポートしてる」みたいな、「サクッと書いてシュッと共有するための仕組み」がますます洗練されていけばいいね、みたいな話かなと思いながら読みました。

ぼくが持っていた今までの観点では、ScrapboxやGoogleドキュメントって「編集画面イコール完成画面」で、一方のMediumやnoteって一見編集画面が仕上がりそのままのようでありながら、実際には公開するために投稿ボタンとかを押す必要があるので、「編集画面ノットイコール完成画面」であって、その違いで考えていたんですけど、たしかに「行(段落)ごと vs 画面全体」あるいは「WYSIWYG vs 簡易記法(Markdown的な)」という観点で分けていくのは新鮮というか、面白いなと思いました。

ブログを含む文書共有をいかに手軽に、ストレスなく実現できるか、というのはぼくもよく考えるんですけど、たしかにその「ボックス型」(簡易記法+行指向編集UI)にひとまず収斂していく感じはあるかもしれないですね。あまり緻密には作り込めないけど、ほどほどにカスタマイズできて、何もしたくなければそのままでも大体いい感じになる、という。

まあぼく自身は、今書いてるこの記事も含めて、普段はテキストエディタでわーっと書いて編集画面に貼り付けるだけなので、テキストエリアはあまり関係ないのですが、テキストエリアが進化してくれれば使うかもしれないし、その表現力も享受できると思うので、今後の展開(螺旋の先の風景)を楽しみにしたいところです。

終わりに

と、いうことで最後まで読みました&コメントしました。
後編の冒頭にも書きましたが、だんだん長くなってしまいまして、あと自分の話もどんどん増えちゃいましたね。まあ自分のブログなのでご容赦ください。

ぼくはこの企画が最初に発案されたときに、「やった方がいいですよ!」とモーリさんの背中を押した一人だったので、せっかくその企画に乗っかってくれた人たちの面白い記事が、十分に読まれないまま過ぎていくというのはどうしても抵抗があって、というのは単に自分が読んでなかったからそう思っただけかもしれないですが、なのでせめて自分は全部読んでみようと思って、とはいえただ読むだけというのも大変そうだから、「コメントするために(その前提で)読む」という方法で取り組んでみました。

と言いつつ、最初は全部コメントするつもりはあんまりなくて、というのも全部が全部自分の関心に合致するなんてことがあるわけないし、そもそもどう考えても大変すぎて、お金をもらっても引き受けないかもしれないような作業なので、だから本当はいくつか気になったものだけピックアップしようと思っていたんですけど、数本読んだ段階で「どれも面白いな・・これ全部コメントできるのでは」という感じになり、結果的にそうなった次第でした。

しかし思うに、本来ならこれって、各記事が公開された時点で何らかの通知がメールとかに飛んできて、その日のうちに読む、ということを毎日できたらよかったんですよね〜・・そういう設定って、このカレンダーに使ったAdventarのシステムではできないと思うんですが、Qiitaとかではできるんですかね・・。あるいは、IFTTTとかの他ツールと組み合わせればできるのかなあ。そうなったらもっといいのに、と思っていますが。

それにしても、今回の参加者には面白い人がたくさんいて、皆さんの存在を知れただけでも良かったです。直接会える機会はなかなかないかもしれないですが、文章や漫画といった静的な情報を通して(あるいはそれだからこそ)、各著者のより深い部分というか、頭の中の光景を垣間見れた感じがします。

あらためまして、企画を主催してくれたモーリさん、参加された皆さん、ありがとうございました!

adventar.org

*1:もう1年近くやっていないので過去形。

*2:大谷能生のフランス革命

*3:参考: ヘルプのバージョン管理・編集・デプロイの仕組みを整備した話 - ヴェルク - IT起業の記録

*4:ただちょっと、たまにヘイト本みたいのも含まれているので、これだけなんとかしてほしいんですが・・。頑張って妙なしがらみ乗り越えてほしい。

*5:ヴェルク株式会社に入社しました - 103