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Evernoteにまつわる随想

今日は Evernote が料金プランを変える(値上げする)という話が少し話題になっていた。

blog.evernote.com

ぼくはEvernoteを無料プランで利用していて、かつブラウザからWeb版を使うだけなので、そもそもほとんど影響はないのだけど、金額の変化を見ても、それほど驚く内容ではなかった。

思ったほど強気というものでもなく、むしろ良心的かなと。

反発的な意見の中には、無料プランでできることに制限がかかるのが困る、というものがあるようだけど、個人的な感覚としては、これまで「無料でできる」と謳われていた内容が多すぎただけではないかと思っている。

さらに実際のところ、それら「できる」とされていたことの大半が「猛烈に重い挙動とともに」という条件付きのことだったりもして、もとよりあまりサービス自体に期待を持っていなかったとも言えるのだけど、この価格改定によって少しでも同社が潤い、それによってサービスが向上するなら、それは良いことではないかと思う。

ぼくとEvernoteの付き合いを振り返ると、おそらくサービス開始とほぼ同時に使いはじめて、当初はMacのクライアントも入れていたし、iPhoneの公式アプリやサードパーティの連携アプリも少なからず使っていたけど、今はそのどれも利用していない。

なにしろ公式のMacクライアントやiPhoneアプリは重すぎるし、これは以前から一貫して思っていることだが、結局のところEvernoteの印象をひとことで言えば、「情報を入れるのはラクだが出すのは困難」ということに尽きる。

サードパーティ製のアプリにしても、Evernoteに投稿する(入れる)ものは良くできたものが多いが、中身を検索したり読み出したりする(取り出す)もので良いものに当たったことがない。
これはそれらのアプリ自体の問題だったのかもしれないが、そもそもの公式アプリもけっして快適とは言えない動作だったので、サードパーティの開発者を責める気にもなれなかった。

一方、WebページのクリッパーとしてのEvernoteは良いもので、ブラウザの拡張機能を使ってページを保存しておきたい、という場合には今もよく使用している。

また、ブラウザ体験の補助というか、拡張のような方向で、少し前まで Evernote Clearly というサービスがそのクリッピング機能とうまく相互補完していると思っていたのだけど、それもいつのまにか無くなってしまい、果たして Evernote は自社ツールの魅力をどの程度理解しているのか……という気にもなった。

いずれにしても、ぼくはEvernoteをよくできたWebページクリッパー、言い換えれば「ソーシャルではないブックマークサービス」として使っているので、これほど手軽に、かつ綺麗にページを切り取ってくれるものは他にないとしても、代替となるサービスがないわけでもないから、無くなってもとくに困ることはない。

しかし、これをエディタとして使っている人からすると、上述の重さや、料金プランの改定はそれなりに影響するところだろう。

それで思ったのだが、なぜ自分がEvernoteをさほど頻用していないのかと考えると、「エディタ(メモ帳)として使っていないから」かもしれない。
あくまでブックマークがわりに使っていて、思考を整理するとか、誰かに情報を公開するとか、そういった日常的な用途ではない点がヘビーユーザーとの大きな違いかもしれない。

ぼくは普段、非公開のメモやテキストデータなどはMacでテキストファイルに書いて、ストレージサービスに保存している。
バイル環境で文書を作ることはほとんどないので、それでほとんど問題ない。

まれにモバイル環境で何かメモしておきたい、という場合には、プライベートのチャットルームにコメントしておいて、あとでテキストファイルにコピーするか、大した内容でなければそのまま放っておく。
(メールを自分に送ったり、メールの下書きで同様のことをする人もいるようだが、誤送信が怖くてできない)

くり返しになるが、Evernoteの本質的な問題は、ぼくにとっては「保存した内容を取り出せない」ということに尽きる。だから、ほとんど使(え|わ)ない。

そしてそのような用途で何らかのWebサービスを使うのであれば、GoogleドライブやDropboxのようなストレージサービスを使うのがいいのではないかと思っている。

Googleドライブにおける文書ツール、つまりGoogleドキュメントもけっして書きやすいものではないのだけど、それでも様々な環境からメモをとりたい、という使い道には対応できるだろうし、ひとまずコンピューターであれモバイルであれ、そのほうが一度入れた情報を(Evernoteに比べて)取り出しやすい印象がある。

あるいは、メモをとるツールに妥協したくない(Googleドキュメントでは満足できない)ような人でも、「テキスト保存」と「それ以外のデータ保存」とを別サービスに分けて、後者を上記のようなストレージサービスに移すという手はあると思う。

これは何も、脱Evernote を勧める意図で言っていることではない。ただ、自分が使っていた頃のことを思うと、何かひとつアクションをするたびに「………………」とその動作を待つ時間が発生し、あのまま使い続けていたら自分の人生のうちのどれほどが、「Evernote のレスポンスを待つこと」に費やされていただろう、と思ってしまうので、そのレスポンスを待たないという選択肢もあるよ、と言いたいだけ。

Evernote はもともと、「第2の脳」を謳うサービスなわけで、ユーザーがどんどんデータを放り込むことは大前提であるはずが、そのデータを入れるほど重くなる=使いづらくなる、というのはアイデンティティに関わる本質的な不備ではないだろうか。

個人的には、リマインダーとかノートブックへのショートカットのような泥縄的な追加機能にリソースを割くのではなく、その本質的な問題(挙動の速度)を徹底的に改善すべきではないかと思っている。

ところで、上で

「テキスト保存」と「それ以外のデータ保存」とを別サービスに分けて、後者を上記のようなストレージサービスに移すという手はあると思う。

と書いたが、では前者のテキスト保存に適したサービスはどうすればいいのかというと、これがけっこう不思議なことに、世の中にはあまり「プライベートなメモを預ける」ためのWebサービスというのがないように思える。

古株としては Simplenote、比較的最近では Day One があるようで、その他だと以前にこのブログでも紹介した wri.pe は良いものだと思うが、これという決定版、スタンダードと言えるものはない。

個人的には、はてなブログやQiita がそれらの機能を援用する感じで、そういったものを提供できそうな気もするが、まあ、ビジネスになるかといえば微妙なのかもしれない。

ちなみに、最近だと esa.io の名前もよく聞くが、これはそれこそ収益に目を配ってのことか、基本的には有料のようで、それ自体は構わないのだけど、このサービスは他者との共同作業をある程度前提にしているもののようだから、協業に必須の機能などは有料版に含めるとして、個人用途なら無料でもある程度充分に使える。みたいになっているとユーザー層が広がりそう、という気もしている。

Evernote が無料ユーザーにできることを制限する、というその方針に否定的な感想はなく、むしろ共感する。
広告などに頼らず、プロダクト自体への課金を通して成り立っていこうとする姿勢は健全だとも思う。

上で書いたような感想が、少しでもプロダクトの改善につながり、有償ユーザーの体験を向上させることにつながれば嬉しいのだけど。