103

酒に鈍感

いくら飲んでも酔わない人を「酒に強い」と表現するが、それはたんに鈍感なだけではないか、と思うことがある。

通常、「強い」とは良いことであり、「弱い」とは悪いことを指すから、「強くなければいけない」と人は半ば無意識に考え、それが原因で酒を飲み過ぎ、それがまた引き起こす問題というのが少なくないように感じる。

見方によっては、何杯飲んでも表情が変わらない人というのは、強いのでもすごいのでもなく、単に鈍感なだけであり、すぐにつぶれる人は弱いのではなく敏感で繊細なのだと言うことができる。
そのように考えれば、「もっと飲まなきゃ」とか「飲めなくてすみません」とかいった雰囲気を今よりは薄めることができるかもしれない。

酒に強いとか弱いとか表現するのは日本だけのことでもなさそうで、海外の映画やTVを見ても、強い酒を飲み比べてどちらが最後までつぶれずにいられるか、みたいな競争(というか)をやっていたりする。

酒を飲んでいるうちにつぶれてしまう、寝てしまう、意識を失ってしまう、という状況があるから、それを「負けた=弱い」と形容しやすくなるのかもしれない。
それは理解できるが、しかし少なくとも、酒を大量に飲むことを「良いこと」「すごいこと」だと評価するのはそろそろ20世紀までの文化として終わりとしても良いような気がする。

町おこしなどの地域のイベントや、ギネスに挑戦するような企画において、通常であれば競わないような技能を競争するものがあるけれど(何時間片足で立っていられるか・・とか)、そのような非日常的な場で、ある種の特殊技能を測定する機会として考えるのは良いかもしれないが、「強い(から良い)」「弱い(からダメ)」のような人類普遍の価値観と結びつけて考えられる能力ではない気がする。