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雪道をゆく

降り続ける雪の中、任意の地点AからBへ移動すると、雪の積もった地面には足跡がつき、その連なりが道になる。
B地点からA地点への帰り道、同じ足跡を辿れば道はさらに深くなり、周りの積もった部分との差は大きくなる。

翌日も、その翌日も同じ軌跡をたどることで、かつて通った道はさらに通りやすくなり、その他の場所へは踏み出しづらくなる。
雪は依然として降り続き、やむ気配はない。

いつも同じことをやったり、言ったり、考えたりしていると、その動きや言葉は次第に洗練され、もうそのことについては考えなくてもできるようになってくるが、一方、他のことをしないでいれば、それらについては鈍くなるし、そもそもそれらをやろうという気もなくなってくる。

体はひとつだから、いろんなところに足跡をつけても結局中途半端になってしまいがちだが、だからといって単一的な考え方のみを良しとして、その他の可能性への想像ができなくなってしまうのもどうなのか。

歩き慣れた雪道の脇に足を踏み出せずにいるのは、すでにうずたかく雪が降り積もってしまったからで、しかしそれを崩すことは必ずしも難しくはない(大変なだけで)と考えることは有用であるかもしれない。