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「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の新たな歩みに向けて

fumbaro

要約 (tl;dr)

  • 「ふんばろう」がアルス・エレクトロニカのデジタル・コミュニティ部門でグランプリに。おつかれ。
  • とはいえ活動のすべてを評価・肯定されたのではなく、同団体や活動方針には不備もいろいろある。
  • 危惧するのは、団体に対して批判的な見方をもつ人が批判の手を強めてしまうこと。(ふんばろう&代表氏がこの受賞でカンチガイして不備の方をエスカレートさせると想像すればそれは自然でもある)
  • 代表氏&一部のメンバーが対外的にいろいろ問題があったのは事実。問題とはたとえば「いくら論理的に言ってもある種の批判に対しては自分の感情を優先し聞く耳を持たなくなる」とか。ぼく自身もそこが嫌で今年からは本格的に活動を離れた。
  • 一方で、彼らのすべてが駄目なわけでもない。代表氏に働きかけ、対話を重ねたところ、先月ようやくコトの重要さを理解してもらった。これは大きな転換であり、論理的な批判者の人とふんばろうとの関係は、まだ時間はかかるかもしれないけど少なくともこれまでのような悪化傾向には進まないと考える。
  • しかしそれはあくまで批判者の人が冷静で論理的な観点から批判をしてくれている場合のことで、理不尽に攻撃的な批判を受ければまた自己肯定のカラにこもってしまうかもしれず、それではいろいろもったいない。
  • 「優しくしてあげて」ということではなく、これまで同様に何か問題があれば平熱で厳しく対してもらえたら良いと思う。代表たちの態度がこれまで以上にカタクナとかだったらそれは無意味かもしれないが、今はそうではなく、誤りは誤りとして認め、批判してくれる人もまた同じ人間であることを理解しつつある。その前提で接してもらえたら事態の全体はきっと今までよりは好転する。


前提

震災復興ボランティア団体の「ふんばろう東日本支援プロジェクト」(以下ふんばろう)が世界的なメディア・アートの祭典「Ars Electronica」(アルス・エレクトロニカ)の「デジタル・コミュニティ部門」というので2014年のグランプリを受賞した。
http://prix2014.aec.at/prixwinner/13847/
http://fumbaro.org/prix-arselectronica.html

ぼくは震災直後の2011年4月から、元々西條さんの知り合いだったこともあってふんばろうの手伝いを時々していたので、これは素直に面白い。嬉しいわけではないけど奇妙だ、新鮮だ、面白い、と思う。

アルス・エレクトロニカという存在を初めて知ったのはたぶん岸野雄一さん繋がりで知った吉田アミさんというボイスパフォーマー&文筆家の方がやはりグランプリを受賞したときのことで、たしかそうだ、東京大学菊地成孔さん&大谷能生さんが講義していたときに(ぼくはそれにモグって毎回文字起こしをしていた勝手に)、講義のゲストで来られた大友良英さんが話題に上げたのだったかもしれない。(あるいは話の流れで大谷さんが挙げたのだったか)

吉田アミさんの受賞に関するリリースはこれ。
http://www.aec.at/prix/winners/2003-prix-gewinner-digital-musics-sound-art/

2003年か。今見たらサチコMさんやユタカワサキさんも一緒なんだ。

あとは直近のscholaで一緒にお仕事をしました作曲家の三輪眞弘さんも2007年にやはりグランプリを受賞している。
http://archive.aec.at/prix/#9810

たぶん吉田さんも三輪さんも「デジタルミュージック部門」とかなのかな。あまり調べていない。
ともあれ、その他アルス・エレクトロニカに関する詳細はWikipediaとか、あとこの辺りで大体わかる感じ。
http://matome.naver.jp/odai/2136878762596320301

受賞理由は冒頭のリンクから確認できると思うけど(2本目のふんばろうサイトのやつに日本語訳がある)、ようはTwitterやWebサイト等々のITと現地での人海戦術的実行を組み合わせて、とくには震災直後にいろいろやった、という点の評価ではないかと思う。
ふんばろう内の人の印象としては、ふんばろうにおけるデジタル、といえばメンバー間の主要連絡場所がFacebookで、いわゆるリモートワークを団体全体でやってるようなものなので、そういう点なのかな、と最初は想像したけど、考えたらそのような内部事情はあまり知られてない&審査員にそれを知ってる人もいないだろうことを考えたらやはり物流系の対応でIT使ったことだろう、と思っていたらそうだった。

ぼくはふんばろうがFacebook導入するとかのメンバー間交流の円滑化には腐心したけど、そういう内部インフラ的なこと以外の作業にはほぼノータッチだったので今回の受賞への貢献はほとんどないと思っている。その意味でも「別に嬉しいわけではない」という感じではある。

本題

同受賞について聞いて真っ先に思ったのは、「ああ、これでまたふんばろうに批判的な人たちからの批判の手が強まるんじゃないかな」という不安だった。

もしもぼくが、ふんばろうに対して不信感や嫌悪感を抱いていたら、そういう相手がある種のステイタスを手にすることによって、発言力を強め、しょうもないことをさらにエスカレートさせてやっていく未来を想像し、そのような状況を回避するためにも批判の声を高める、ということは自然な反応であるように思ったからだ。

(もちろん、日本人の大半は「そんな賞なんて知らないよ」と言うかもしれないし、それならそれで杞憂でよかった、ということになるけど、知る人ぞ知るものではあるから今後どんな弾みで表舞台にさらされることになるかはわからない。気まぐれなどこかのニュースでセンセーショナルに取り上げられることもあるかもしれない。そうなれば本来のその賞の意義や規模とはかけ離れた印象がついてしまうことだってありえる)

ここで言う「批判的な人」という存在を、ぼくはふんばろうの敵、というふうにみなしてそう言っているわけではない。むしろ、時にはふんばろう代表の西條さん以上に論理的な、話の伝わりやすい人たちだと思っている。
そして、そうであっても尚、というかそうであるからこそ、今後そのように展開してしまう可能性はあるのでは、と思った。

ふんばろうに対して批判的な観点をもつ何人かの人と、今年の前半にたまたま何度かやり取りをしたけど、そこで感じたのはとても真摯で静かな前向きさみたいなものだった。
一方、それに浮き彫りにされるように見えてくるのは、ふんばろう代表の西條さんや、一部のメンバーによる外部へのひどい対応だった。
この対応じゃ、いくら批判されても文句は言えない。というか、これについて全然総括してないの? なんで? みたいなこともある。

そんな状況だから、今回の件(受賞)を受けて、もし今後さらに、たとえばニュース等で報じられる機会が増えたら、上記のような懸念が的中してしまう可能性はやはり高いのでは、ということを思ってこれを書いている。

というのも、その批判的な人たちとの対話を経て、しばらくぼくは西條さんに「あれはダメでしょ。これこれこういう対応が求められてるよ」みたいなことを(もう少し丁寧に)伝え、その後紆余曲折あって結局つい数週間前にようやく「たしかに言うとおりだ。改善しなきゃいけない」という話になったばかりだった。

これまでの西條さんやそれに類するメンバーの問題というのは、批判されると耳を閉じてしまい、非論理的な返答をしてしまうとか、人を人扱いしていないように思える態度をとってしまうとか、そういう不信を招くような対応が少なからず見られたということで、それ自体はまあ人間なら誰にでもあることだし、それをゼロにしろ、ということは言えないけれど、でも「それは良くないよね、ダメだよね」と言われて「うん、よくない」と言えるかどうかは大きな違いで、我々はようやくその壁を越えたところだと思っている。

よって、この受賞を機に同氏および同団体が調子に乗って不備を増していくかといえば、少なくともこれまでと同様の態度を通してそうなることはないと思う。
少しずつだけど進歩しようとしながら諸活動に努めているのでご理解頂きたい、と思っている。

補足

本題は以上。ここからは余談的なことで。

1. 西條さんに対して批判的な人が引っかかることとしては、「口では立派なことを言っているのに自分は実行できてないじゃないか。有言不実行だ」というものがあると思う。
それは状況によってはその通りで、そういうことも本人には指摘済みではあるけど、結局のところそれはふんばろうなどをやる前からずっとある問題でもあって、なぜなら彼の本業である理論工学的な話というのは、基本的に「こうすればうまくいく(問題が解決する)」という主旨のものだから、その成り立ちからしてつねに「こうすればうまくいく。俺はできてないけど」となる可能性を内包しながらの活動にならざるを得ない。
ある見方をすれば「彼は理論を作る人としては優秀だけど、その実践者としてはそうではない」みたいな言い方もできるかもしれない。
まあ、実践できないような理論がそもそも良い理論なのかどうか、という問題もあるだろうがその辺は問題提起までとしたい。

2. 西條さんが著書やTVを通して、あるいは今回の受賞を通して多少なり巷間の話題にのぼるようになったとしても、本の印税はふんばろうの活動資金になるだけで、TVのギャラがどの程度かは知らないが、基本的に彼自身にとって美味しいこと(収入が増えるとか)は僕の知る限りでは、ない。
なので、「ボランティアとかいってイメージ上げて裏ではいい思いしてるんだろう」みたいに思われることがあればそれは事実ではないのでは、と思う。

3. 僕自身は元々さして活動しておらず、古参の幽霊メンバーという感じだったけど、この春からさらに実活動からは離れている。だから団体全般に関する情報としては実情と異なる部分もあるかもしれないけどその辺はご容赦頂きたい。

4. ふんばろうにはいろんな側面があって、良いところも悪いところもある。アルス・エレクトロニカではその一部に対して、アルス・エレクトロニカが持っている観点と合致する部分があったから評価を送る、ということがあったに過ぎない。
しばらくの間は他のメンバーも「努力が報われた」とか、承認欲求が満たされたような感じになって嬉しい気持ちにもなるかもしれないし、それはそれでもちろん良いと思うけど、そのまま全てが肯定されたものとしてカンチガイし続ける人ばかりではない。
冷静にひとつひとつ、遅い歩みではあるかもしれないけれど、改善に向けて進み始めているとは思うので、周りの人にはそのように捉えて対してほしいし、中の人には上記のような俯瞰的な認識をなるべく持つようにしてほしい。

5. さらに余談だが、アルス・エレクトロニカが評価したのは基本的に震災直後からしばらくの活動システムに対してであるように感じた。もちろん、その後の継続的な様子も勘案はされているだろうが、実際にはふんばろうはその後も状況に応じてシステムや運営方法を変えていて、今年からはまた新たな、現状に最適化した体制が模索されているし、その点についてはアルス・エレクトロニカに(審査前の段階で)通達済みでもある。
その意味でも、今回の受賞というのはあくまで当時の活動やその際に採用された理念、システム等に関するものであって、存在全体を評価されたということではない、という点は認識してしすぎることはないと思う。

(以上)