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提案の範囲と目的

提案というアクションに「案が採用されること」は含まれない。提案とは事態に対して有効と思われる案を明確に示すことまでを指す。提示された案を採用するかどうかは採用する権利をもつ人間が検討し決定することであり、提案者の使命は、いかに過不足なくその案を示すことができるかという一点に尽きる。

同様に、 謝罪というアクションに「許してもらうこと」は含まれない。それは「私が悪かった」と明確に相手に伝えることを指す。もしも「許されること」を目的とするならば、「間違いを認める」だけではアクションが完結しない。「許されること」を目的とするならばそれに見合った行為を付加する必要がある。

一方で、ひとが提案をするときには「採用されたい」という思いが、謝罪をするときには「許してほしい」という思いが、多くの場合動機になっている。だから、そこに明確な分断はない。
しかし同じことではない。

案が採用されることや自らが許されることを目的に置くことによって、提案や謝罪のアクションに可逆的な影響を及ぼすことがある。言い換えれば、アクションの純度を薄め、その効果を落とす可能性がある。
よってそれらが「つながってはいるが別の目的に向かう行為である」ことを留意することは、アクションを有効に運用することに役立つと思われる。