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Only in Weezer

ここ2日ぐらい、半年以上つづいた大きな作業が残務処理モードに入ったこともあり張っていた気も抜け半死のような状態で細かくタスクをつぶしながらweezerを30〜40曲ぐらいYouTubeでBGMがわりに聴いているけどなかなかいい。というか、グリーンアルバムを最後にそれからCDも買っていないしよく知らなかったので10年近くフォローしていなかったんだけど、その辺のを一度に聴き返したらやっぱりアメリカのロックというのは目に見えない独特の語法をもっていてそれを知ってか知らずかきちっと押さえているソングライターだったのだなと思ったりした。アメリカのロック・リスナーはまたたびをかいだ猫のようにウィーザーを聴き悦び飛びあがる。ドラムがギタリストになったりしてるのも変わってていい。

リヴァースは可もなく不可もなく、といったルックスで少なくとも映画スターのようではないが、恐ろしく見づらい見た目とかでもないバランスの良さがどこかあって、そのバランスがどこまでも不思議ではある。不安定なところもある気はするけど少なくともここまで走ってくれたのだからそれだけでも感謝すべきかもしれない。マット・シャープはレンタルズの1stがけっこう良くて、たしかに自分の足で進みたい気にはなって仕方ないと思うけどウィーザーを一緒に大きくしたらどんなになったか、とちょっとは思わなくもない。いや、そうはならなかったからグリーンもできたしその後も続いてきたウィーザーだったということかもしれないとも言えるけど。

リヴァースの作る曲はどこまでもある意味まっとうで、目が覚めるような異様なメロディとかコード進行とか(スティーヴィー・ワンダーとかマイケル・マクドナルドみたいな)はないのだが、そのある意味王道な振る舞いの向こうから異様な持続力というか信念みたいのがいろいろ突き抜けてきてそれが他を圧しているとは言える。また王道だし非異様ではあるが退屈からも程遠いセンスがあって、それがXTC的な無尽蔵の快楽ポップスのようでもあり、一方チャーリーパーカーのビバップのような狂っていながら安心をもたらす、喧騒と廃屋の同居みたいな無感覚のカオスのようでもあり、そういうのが上記の凡庸でアンバランスな出で立ちをまとって出てくるのでただうーむ...と聞くだけになってしまっておもしろい。

グリーンアルバムが出るまでの数年、ぼくにとっては物凄く長く感じられて、もう次は出ない、と思うようにしていた。なぜなら、いつ出るか、なんて思っていたら失望に耐え続けることに耐えられないだろうと思ったからで、だからその頃(というのは22〜26才ぐらい)にもしかすると「自分の思いだけではどうにもならないことが世の中にはあり、それは基本諦めておくのがいい」ということを学んだのだと言われてもそうかもしれないとは言えなくもない。

25才のときに、結局まだ2枚目を出してから3年以上沈黙していた彼らが来るというのでサマソニの第1回をみに富士急まで行った。僕は大学を卒業してから何をするアテもない今から思えば、というか思い出したくもないおそろしく灰色の時期にいたけどけっこう冴えない感じのままの彼らが演奏するのをけっこう楽しんで見た気がする。驚いたのはぼくぐらいに彼らを好きな人間が無茶苦茶たくさんいたということで、それで熱が冷めもしたのだったが、2曲ぐらい披露された新曲がパッとしない印象だったのがまた逆に新鮮でもう少し追いかけたい気になった。そのパッとしない感じというのがもしかするとようするにリヴァースのアンバランスさそのものに近いのかもしれないという気もする。

彼らの曲を聴くと聴いているあいだ、あのおそろしく灰色で思い出したくもない時間の重なりを思い出す。それが匂いや空気の色のようになって目の前を通りすぎていく。まったく戻りたくはないのだが、手探りで目の前のただデカいだけの素っ気ない壁に拳を押し当ててなんか知らないけどなんとかしようとしていた、そんなぬるめの苦しさを思い出す。なんでもできる、どこへでも行けるはずなんだがどこにも行きようがない、方法がわからずとりあえずビール。な夢と悪夢と現実だけの時間を思い出す。こうして書いてみるとやっぱりどう考えても戻りたくはない。

3枚目を出す前のインタビューで、もう1枚目や2枚目みたいのは作らないことに決めたんだ、とリヴァースが発言してロッキングオンのインタビュアーが泣きながら残念がったインタビューを読み、そうか3枚目からは抜け殻のようにシステマティックに曲をつくるのか、と失望してみたが実際には抜け殻で魚のような目をしたままかもしれないもののそこそこいいのを作っていて、その体の内側と外側の永遠の乖離。のような無感覚さ。みたいな感じがずっと付きまとっているそれが剥がれるのを、もしかしたら今も僕は待っているのかな、待ちながらこの初期の曲を聴いてみているのかなと思ったりしている。