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 5月に赤アイラー刊行記念トークショーサイン会を行うという新宿ジュンク堂で、保坂さんの新刊『途方にくれて、人生論』と、明日発売予定の(でもあると思ったので探してやっぱりあった)『アトモスフィア2』も買ってきてしまう。3か月分ぐらいの買い物じゃないか、今日。
 『途方にくれて〜』を読んでいたら、数日前に宮沢章夫さんを引きつつ書いたことに超近い、というかほぼ同じことが書かれていてうっとりした。

 だから、この本には生きるために便利な結論はひとつも書かれていない。しかし安易に結論だけを求める気持ちがつまずきの因(もと)になるということは繰り返し書いている。生きることは考えることであり、考えることには結論なんかなくて、プロセスしかない。

 今、これまででいちばん苦心して「大谷能生フランス革命」の岸野さんの回を書き起こしているが、保坂さんはこんなことも書いているので息が延びた。

 だから小説を書くときもプロらしくすらすら書くなんていうことは絶対できず、いつもこの先をどう進めたらいいかと、戸惑いつつ、途方に暮れつつ書くような書き方しかできないし、そういう書き方しかしようとも思わない。もっと言ってしまえば、プロというのは経験を頼りに、ためらわずすらすら仕上げてしまうような人間のことではなく、戸惑い途方に暮れるようなやり方を自分から引き受けられる人間のことだとも思っている。

 オーケー。がんばろう。