103

Five novelists(or writers) I read a lot, or that mean a lot to me (よく読む、または特別な思い入れのある 5 人の作家、または小説家)

■ 村上春樹 ・・・村上春樹について語る言葉を僕は持たない。のですが、せっかくの自前のメディア(ブログ)という事もありますので、間違いながら何か書いてみます。リトル・クリーチャーズという日本の誇るポップ・ミュージック・グループがいて、彼らを誰かに紹介する際に必ず僕が言うのは「最新作が常に最高作なんだ」ということで、ハルキ先生についてもいつも思うのはそのことです。不思議と『カフカ』や『アフター』といった近作については読了後の印象が弱いというマイ傾向があるにはあるのですが(なぜだろう。面白そうなのでそのうち考えてみたいですが)、とはいえ常に彼の作品は僕を魅了し続けます。それは第一に彼自身が常に更新され続けているからであろうと思うのですが、それ以上のことはすごく時間がかかりそうなので、また改めて考えてみたいです。
 とはいえ一つ確かに言えることは、僕のトップ・オブ・フェイヴァリット作家の座に鎮座しているのはいつでも彼だということで、その椅子は勿論彼の為だけにしつらえたものではないのですが、また何かにつけ更新を試みようとも思うのですが、そして順番をつけてどうするのさ。という一見クールにも見える視点があることも理解したうえで尚、ハルキチ先生は常にそこにいらっしゃいます。なぜでしょう。これもそのうち考えてみたいのですが。姫君 (文春文庫)
■ 山田詠美 ・・・山田詠美という作家に対して、”黒人男性におもねる女性を描く人”というイメージを持つ人って果たして未だにいるのでしょうか。いつだったか、『シスタ!』という藤代冥砂も参加した、当時(かなり前)の街行く”シスター”(修道尼さんではなく、黒人女性にインスパイアされて生きる女性群)にけっこう丹念な取材をして構成されたインタビュー&写真集を読んでいたら、「山田詠美の『ベッド・タイム・アイズ』は好きだけどエッセイは読まなきゃよかった。イメージ壊れた(笑)」と発言する”シスター”の話が出てきたので、「なんだなんだ、何も読んでいないじゃないか。」と憤りを越えて呆れたものでしたが、それというのも山田詠美のエッセイには彼女の哲学がふんだんに鏤められ込められているからで、『ぼくは勉強ができない』を読むまでは多くの例に違わず偏見光線で彼女を眺めていた僕が今「この人、良いこと言うなー」と思う最要因は、彼女の不断の努力で磨き抜かれてきた小説における唯一独自の文体によるもののみならず(それも特筆すべきところでしょうが)、数多あるエッセイ群から湧いては溢れ滲み出る彼女の変わらぬ哲学によるものなので、どうかその凝固した見方を取り払い、一度ちゃんと読んでみて下さいませ。とか何時ともなく誰にともなく思っています。
■ いとうせいこう(最右上) ・・・僕が小説というものを初めて楽しく読了することが出来たのはいとうさんの『ノーライフキング』で、もう少し言うと、文庫版『ノーライフキング』の表紙に佇む青空を眺める少年の後姿のイラストに釣られてそれを買っていなければ、僕は今頃こんなふうに読書を楽しんでいなかったかもしれない。とさえ思うほどそれはかけがえのない出会いだったのでしたが、最近作はとんと読んでおりません。
 とはいえ、小説というものをお金を出して買ったのも、買ったその日から読み終えるまでの数日間(多分2,3日)そのことしか考えていないなんていう経験も『ノーライフ』が初めてのことで、その頃の僕はといえば、おそらくあまねき影響もろに受けやすい高校期とかだったと思いますが、以来『全文掲載』、『ワールド・アトラス』、『ワールス・エンド・ガーデン』といったいとうさん本によって若葉萌える脳内へカルチャー快楽の嵐を吹き荒らさせては、現在に至る脳内骨子の方向性を定めて行ったのでした。ビバ、スペ中カンバセイション・ピース
■ 保坂和志 ・・・なんて取っ掛かりのない、普通の名前なんだ。とは図書館で見るたびいつも思っていて、これで芥川賞をとっていなかったら僕の関心はさらに後まで保坂さんに対して届いていなかったろうとも思うのですが、逆に言えばそのスマートにすぎる名前であるがゆえに(僕にとってということですが、勿論)常に関心を払っていたとも言える作家さんでした。読むきっかけになったのは「ほぼ日」のコンテンツで『カンバーション・ピース』の宣伝(というか)を展開していたからで、そこでの糸井・保坂対談を読んでまんまと購入(「ほぼ日」限定のサイン本)、めくるめく答えの出ない小説ワールドへと足を踏み入れてしまいました。
■ ぐるぐるまわるすべり台中村航 ・・・いつか『コインロッカー・ベイビーズ』級のビッグ・ホームランを放ってくれるだろうと思っています。『ぐるすべ』あたりでやってくれるかとも思っていましたが、まだ彼の関心にそういった部分はなかったようで、何というか、手の内にある名付けようのない壊れやすい大切なものに名前を付けるべく、慎重に時に大胆に(周りからはそう見えなくても)繊細な実験を息を詰め日々突き詰めているような印象があるのですが、それでも僕はかつてない大ホームランの弾道が激しく胸打つ日を待っています。