103

fuzkueに行ってきた

2020/1/11に渋谷で岸野雄一さんの新春恒例ライブがあり、これは毎年フルボリュームにつき終わる頃には体力が使い果たされており、帰宅するのが大変、ということで今年は近くに宿をとってラクをした。

翌日は午前11時チェックアウトで、家族からお土産を頼まれていたのでそれをゲットした後、ただ単調に帰途を歩むというのはなんだかつまらない上に、時間的にそろそろ正午。というぐらいで空腹にもなっていたので、以前から一回行ってみようと思っていた初台のfuzkueに行ってみることにした。

fuzkue.com

階段を2階へ上がっていくと、細長い感じのお店で奥にカウンターがあり、左手にはさぞかしゆったりできそうなソファも空いていたけど、そのときはもうお腹が減っていて定食を食べよう、と初めから決めていたので、たぶんソファよりイス席の方が食べやすいだろうと思ってそちらに座った。

食事ができるのを待っている間は、前日のライブでもらった折込チラシを一生懸命読んだり、物販で買った林以楽(リン・イーラー)さんの詩集を読んだりした。元々の予定(というか)では、iPhoneKindleアプリに入れっぱなしの積ん読電書本を読み進めよう、なんて思ってもいたけれど、そのチラシ1枚1枚や詩集だけでもそれなりの読みごたえがあり、何よりもうカラダが随分くたびれていたので、半ば眠るようにしてそれらに目を通しながら休んでいた。

食事は非常においしく、珍しいぐらいに綺麗に平らげた。基本的にぼくは少食で、大体会社の昼休みに近所の飲食店で買ってくる弁当などは3〜4割残して、タッパに入れて持って帰る(それで夕飯に合わせて食べる)ぐらいだけど、この定食は非常に好みに合っていて、なおかつたぶんちょうどいいぐらいに空腹だったこともあって、絵に描いたように最後まで食べきった。

本を読むことは、考えてみるとそもそもそんなに目的ではなかったというか、求めていたのは時間というか、空間というか、そういう「何もしなくて良い場所」、「何からもアクションを求められない時間」、あるいは「自分から動き出すまでは動き出す必要に迫られない状況」であって、fuzkueさん風に言ったらひと言で「静かな時間」としか確かに言いようがないようなそれで、とくに頑張って本を読んだりしなくても十分に豊かな雰囲気の中、何かを考えたり、考えなかったりしながら大体2時間ちょっとぐらい過ごした。(「何もしなくて良い」という環境に置かれると、普段考えたくてもなかなか考えられないある種のゾーン、みたいなものに思考の中で触れられる感じがする)

それでもつれづれに読んだ、店内に置いてあった本というのはあって、以下とか。

懐かしい。昔、2〜3本ぐらいDVDで見た。大切にしていた感覚がそこにある、というのを思い出した。

他にもジョナス・メカスの本とか、あと自分が座ったそばには南米のいわゆるマジック・リアリズム的な本や、トマス・ピンチョンなどがたんまり並んでいて、これらが大学の図書館に同様に並んでいて圧倒されたことを、生々しく思い出した。

店内・店員さんの雰囲気もとても良く、その感じの良さというのは、単にfuzkueさんならではの、あのオリジナリティに満ちたコンセプトによるものというよりは、たぶんここはかなり大事なところだと思うけど、何よりも第一に「どうすればお客さんに心地よく過ごしてもらえるか」を常に考えているからだろうと思った。

もしもそれ以上にコンセプトとか、店の目指すべきイメージみたいなものを優先していたら、それはお客さんを大事にすることと見た目はよく似ているが、やっぱりまったく違う感じになるんじゃないかと思う。

帰ったら、家族から「fuzkueはどうだった」と聞かれたので、「うーん、毎週行きたいぐらいだ」と伝えた。会社の最寄駅から都営新宿線で数駅で行けるところにあるから、それも不可能ではないが、仮に難しいとしても、1〜2ヶ月に1回は行きたいなあと思っているところ。

書き手と編み手の Advent Calendar 2019 全記事レビュー(後編)

後編のはじめに

以下の続きです。

note103.hatenablog.com

後編のこちらでは、全25本のうち14日目以降の記事を紹介します。
前編に比べると、ちょっと長くなってしまったものが多いかな・・。

ではどうぞ。

14日目: 万井さん

blog.ayako-m.work

図らずも前日の鹿野さんの記事と合わせて読むとより立体的に読めそうな文字起こしの話ですが。
タイトルを読みまして、「僕もです」と思いました。

ちなみに、2年前のアドベントカレンダーでは id:minesweeper96 さんが以下の記事を書かれていて、

インタビューで意識すること3つ - From The Inside

僕はテープ起こしをしません。テープは録るし、発言や正確な言い回しを確認するという意味で聞き返しはしますが、わざわざ頭から終わりまでを起こしはしません。インタビュー中のメモが基本的にはそのまま記事になります。

とのことだったので、いやー、様々ですね。

で、ここで書かれている

  • 自分にはこの過程がないと次の「編集」に移れないらしい
  • ICレコーダーとiPhoneのボイスメモの2台で冗長化
  • 壮絶に遠回りかもしれないけど、全部起こしてそこから再構成するとやりやすい

あたりは全部自分にも当てはまることで、当てはまりすぎ、と思ったぐらいです。

とくに

インデックスするというか、マッピングというか。記憶の映像と撮った写真の順番もなんとなくインデックスされて、このシーンならこれ、と思い出せるようになります。

なんてめちゃめちゃ同じ感じがします。逆にというか、ぼくの場合はそのぐらい、もう取材現場が終わると一旦完全に忘れてるというか、骨子も流れも全然覚えてないというか、データが自分の中に残ってないんですよね。

だから、それを取り戻すためにまずは最初の土台を作る、という感じで全起こしをする、みたいな感じだったと思います*1

たとえば、ぼくがやってたのってこういう本ですが。

【vol.17】 Romantic Music| commmons: schola(コモンズスコラ)-坂本龍一監修による音楽の百科事典- | commmons

大体この中に収録されている「座談会」というのが4時間半ぐらい喋っているもので、そのほとんど全部を起こしていて。7〜8万字ぐらい?

万井さんはタイムスタンプやキャプションを入れているそうですが、それも同じで、ぼくはMarkdown記法の見出し(#)で大まかな話題をメモしておいたり、タイムスタンプはリスト記法で地の文と見分けやすくしておくとか。

ただ雑談にしても、その中で超イイこと言ってたら採用したいので、「雑談だから切り捨て」とも行かなかったですが。結局、その発言が不要である、と確信するためには文字化されたそれを目で読む必要があって、だから文字化されてない時間帯がある、ということがもう不安なんですよね。そもそも覚えてないし。

ああ、でも「これはオフレコだな、外に出たら良くないやつだな」という話題があったら、それは起こさなかったですね。万が一、コンピュータウィルスとかに感染してPCから流出したら大変なので、そういうのはキャプション(見出し)だけにしていたかもしれません。そういう意味では、今後AIとかで音声ファイルからの自動文字起こしが実現した場合には、音声の段階でそういうのをカットしておく必要があるのかなあ・・。

話を戻すと、基本的にはそうやって全部の発言をわーっと文字化するんですけど、以前にその状況についてよくイメージしていたのが、ジョン・コルトレーンを評して言われる「シーツ・オブ・サウンド」というやつで。Wikipediaによれば「音を敷き詰めたような」演奏スタイルのことらしいですが(以下で言うと多分テーマが終わった0:28以降とか)

ジョン・コルトレーン - Wikipedia

www.youtube.com

ほんとにそのパタパタパタパタ・・とキーを打ちながら文字がエディタを埋め尽くしていくのがコルトレーンのあれみたいだな・・とよく思っていました。

「そもそもメモが取れない」もわかる気がしますね。取材現場って取り返しがつかない1回かぎりのものだから、まずはそれを成功させることに全力を投じる、みたいな。仮にそのせいで、その後に編集するエネルギーが残らないとしても、良い現場と記録さえ残れば他の人が引き継いでくれるかもしれないですし。

全起こしは無駄かもな・・とは僕もよく思っていましたけど、でもじゃあ効率的な方法というものがあるとして、その方法で作った場合にクオリティはどうなるのか。またその場合の労力・負担はどうなのか、という観点も大事な気はしますね。ぼくの場合、全起こしって確かに大変なんだけど、ただ同時にそれって全然頭を使わないというか、ある種のエクササイズみたいに機械的にできるものでもあるので、それがただ楽しかったり、面白かったりして、そういう理由でその方法を選択していた気もします。

ちなみに、そうは言っても時間的・分量的にどうしても全起こしは無理!ということはあって、そういう時は起こさずにマッピング・インデックス化をするためにこういう方法を取っていました。

文字起こししないインタビュー記事の作り方 - the code to rock

で、じつはその方法を考えたきっかけになったのが前記のミネさんによる「文字起こししない」という記事だったんですよね。つながってる〜。

いやあ、つい熱く語ってしまいました・・。

15日目: 安田理央さん

rioysd.hateblo.jp

名刺管理法、すごくいいですね。Evernoteは最近全然使ってないのですが、何かしら現在使っているツールで代替できないものか・・。

紙のノートとの併用というのもグッときました。ぼくも紙ノートめちゃ使っているのですが、これが常にリングノート、それもA5です。
リングノートを使うのは、狭い机でも片面だけ出しておけるからで、A5なのもそれより大きいと机の面積を取りすぎるし、それより小さいとしょっちゅうページをめくる必要が生じて面倒だから、という理由なのですが。

ちなみにぼくの名刺管理法は、古いのは全部ScanSnapでスキャンして、Dropboxに定期的に放り込み。以前はカテゴリ分けとかもしていたのですが、Dropboxって基本ツリー構造(フォルダ分け)で管理するので、複数のカテゴリにまたがるような場合はかえって探しづらくなるし、そもそも作業の手間が増えたりとデメリットの方が大きいので、今はスキャンした日付のフォルダを作ってそこに入れてるだけ。で、こんな使い方なのでそのデータを再利用すること自体ほぼないですね(笑)。

で、新しめの名刺については保存・管理・記録すらせず、右手のすぐ出せる引き出しに入れて、ただ下から上に積み上げていく。そうすると常に直近の名刺が一番上に出ていて、見つけやすい。という・・かなりやる気ないというか、単純に名刺を使う機会がないだけの気もしますが。

いずれにしても、ノートにいろいろ貼り付けるのはすぐ試せそうなので、やってみたいと思います。

16日目: 上野さん

note.com

編集者だけど様々な自由を得るためにInDesignを覚えた。という感じでしょうか。

ぼくも前述の音楽全集の仕事ではInDesignを使っていましたが、これはまさにこの記事で挙げられている以下、

・表現力の幅が広がる
・ギリギリまで作業できる

この辺りと同じ目的だったと思います。とくに前者。
ようは、他人に頼むっていうことは、その時点でもう自分のイメージからは必ず離れちゃうんですよね。

これが原稿執筆やブックデザインみたいな、依頼主にも正直どうなるかわからないようなものだったらまた別ですが、自分の頭の中に理想とする仕上がりがあって、しかし1人ではできないから分担する、みたいな場合にはどうしたって自分の頭の中のイメージを完全に共有することはできないので、あとはそのズレをどれだけ最小限に抑えられるか、あるいは許容できるか、みたいな話になるという。

で、そういう問題を解決するためのある種強引な手段として、ぼくは自分でInDesign買ったりしたわけですが。

これにより、たとえば一旦原稿をデザインに流し込んだ後に、たった1文字だけ助詞を変えたい(「〜が」を「〜を」にするとか)っていうとき。もし自分でInDesignを持っていたらスキマ時間に数秒で直せるけど、持ってなくてデザイナーさんに頼むしかなかったら、まずメールを書いて、そのたった1文字の詳しい箇所を相手が絶対勘違いしないようにいろいろデータも揃えて依頼して、ようやくそれが終わっても今度は相手がいつ修正してくれるか不明確、場合によっては別の作業にまぎれて双方忘れてしまうかもしれず、もし直ったとしても今度はその仕上がりをデザイナーからこっちに投げてもらって、それをこっちの時間があるときに見直して・・なんてことをやらないといけない。

そんなの、めっちゃバカバカしいけどInDesignが使えなかったらそうするしかない、というのがイヤでイヤで、まあ人によってはそんなことやってられないから、という理由で適当な内容で出版できたりもするかもですが、それもできないってなると逆に買うしかなかったんだよなあInDesign、って思い出しました。

あとは1ミリ単位でレイアウトを動かした、という話についても同じような経験があって、ぼくが初めて編集(&執筆)した本*2って、最初はデザインもInDesignオペレーションもデザイナーさんがやる予定だったんだけど、参考書籍の書影を入れる場所とかをほんとに1ピクセル単位で調整したい、それができないなら作る意味ない、みたいな感じだったのでデザイナーさんに頼んで事務所に泊まり込んでマシン借りて入稿当日まで徹夜で修正していたことがありましたが、そういうのも結局メールとか電話とかで頼んでできるような作業ではないし、自分でやった方が精神的にも肉体的にもラクだし、かつデザイナーさんの作業量も減るしで、メリットが多いんですよね。

一方、以下のあたりについては新鮮というか、自分でInDesignを使っていたときには考えたこともないメリットだったので、なるほどなという感じでした。

・ほかの案件と平行で作業できる
・適正価格での発注が可能

とくに、価格の件については切実に役立つ話というか、ぼくが携わっていた長期シリーズでも10年前のスタート時点とその終盤とでは、だいぶ使える予算が違ってきましたからね・・。後から初期の予算とか見直すと、うわー随分多かったな・・って思ったり。

でも上記のように、本来なくてもいいはずの無駄な時間ややり取りを削って、かつ自分の作業もラクにする中で結果的に予算の余裕を生んで外注費も維持できるっていうのは、いろいろヒントになりそうだなあと思いました。

17日目: 加勢さん

note.com

いやあ〜、いやちょっと、こちらは物凄いですね。物凄い。この1本だけでカレンダー1ヶ月分作れそうなぐらい、本1冊読むような奥行きのある話でした。あ〜、面白かった!!

教養・・本物の教養の片鱗に触れたような気がしますが。詩を読むように楽しめるのも良いなあ、と思いました。一週間ぐらいかけて寝る前に少しずつ読みふけりたい感じです。

内容的には、「語り手」とは誰か、またそこで19世紀末の女性たちが果たした役割とは、あるいはそこにタイプライターやオカルトがどう関わってくるのか・・みたいな興味が新たな興味を呼び込んでくる非常にカラフルな話で、このレビューを書くために今30分ぐらい読んでいましたが、まだまったくきちんと読み切れていないので、取りこぼしたところはこの後にあらためて味わってみたいと思います。

しかし1万字超の、かつ一見複雑に見えなくもない文章ですが、実際には読者とともに散歩しながら丁寧に語っていくような平明な内容で、その辺りも含めてほんとに「はあ、すごい」という感じでした。

ちなみに冒頭で紹介されているインタビューも拝見しましたが、これもめっちゃ興味深い!ぼくもある意味「1社に1編集者」みたいな立場で今は仕事をしているので*3、共鳴したり、いやここまでは全く及ばないな(笑)みたいな感じだったり大変面白く読みました。

18日目: Mmcさん

mmc.hateblo.jp

わ、暗黒通信団、知ってます。以前に何かの調べ物の最中にAmazonでヒットして、これは・・同人誌?それとも商業出版物?等々、悩んでいるうちに結局問題の方が解消して購入には至らなかったのですが、インパクトが強くて覚えていました。

自分の専門ではない分野の校正、というのはぼくもそこそこ経験があって、たしかに一定のルールを設定してそこから外れたものを検知していく、という作業なので結構できちゃう、というのはありますね。

むしろ、専門家ではないからこそ客観的に、誰が読んでもこれは変でしょ、という部分に冷静に気づけたり、あるいは入門書的な位置づけのものだったら余計に「これだとわかりづらいよ」と言いやすかったりするので、そういう意味でもあんまり深く理解していなくても大丈夫、というのはあるかなと思います。

まあ、それでも多少は自分から調べたり、興味を持ったり、という部分がないとアサッテな指摘ばかりしてしまいそうなので、結果的には続けているうちに何となく詳しくなっていく、というのもあるとは思いますが。

てにをは・統一・略称等の具体的なTipsは校正担当者がいない同人誌作者の人にも役立ちそうですね。

ちなみに、こうした校正時のチェック項目についてはラムダノートの鹿野さんによる以下も猛烈に役立ちます。

note.golden-lucky.net

最後のエピソード部分も、わかる気がします。基本的に出版物って最後はお客さんの手の中に残るもので、その場所でこそ生きるもの、その場所でおいしく味わってもらえるものを作るというのが最終目的だと思ってるので、その途中の段階でどんな登場人物がどんな理屈をこねようと、読者に不完全なものを届けることを正当化する理由にはならない、という姿勢で作業に臨んでいました。

「自分のせいではない理由」なんて100でも200でも作れるけど、お客さんには一切関係ないことだし、まあ最終的にはそれも愛情の問題というか、そういう作業に愛情を持てるかどうかの違いかもしれないですが・・。

19日目: カイさん

bloggingfrom.tv

ブログ「カイ士伝」はもう10年近く前から存じていますが、このアドベントカレンダーと結びつくとは思っていなかったのでびっくりでした。

しかし内容はカレンダーのテーマど真ん中で、原稿の書き出しから売上集計とその見方まで。電書を自作する際に必要な内容全部入りという感じでもの凄く参考になりますね。

ぼくはまだ電子書籍の自作って一度もやっていないですが、ここに書かれているとおりにやれば普通にできそうだな、と思いました。

まだツール紹介の部分などきちんと読めていないので、あらためてチェックしておきたいと思います。

20日目: 五味さん

g3-enterprise.com

ひー、これまためっちゃ参考になりますね。ぼくはITカンファレンスとかよく行くんですが、そういうところって英語圏からの参加者がけっこういて、しかしたまに喋ることになってもカタコトなフレーズをブツ切りで投げ合うぐらいしかできなくて、これがあんまりツライので会社にお願いして今期から英語学習支援をしてもらうことになったのですが、そういう進捗なので終始興味深く読みました。

とくに、

答えは簡単だ。英語でインタビューしたほうが、より中身のある情報を相手から引き出せるからである。

以降の話は超濃密。下線引きまくりたくなるような内容です。

最後の「仕掛け」のところも含めて、背筋が伸びるというか、凍るというか、一線で活躍してる人はこんな景色を見ているのか・・自分はかなりぬるいな・・と非常に啓発されました。

21日目: 近藤さん

kondoyuko.hatenablog.com

近藤さんは当カレンダーには3年連続のご参加で、Twitterでもいつもその中身が詰まったご活躍を拝見して敬服しています。

本との付き合い方の変遷、のような話ですが、とくにiPad使用の話から積ん読解消法、サブスク、オーディオブックの流れまで、すごく参考になりました。

iPad、てっきりProじゃないと使い物にならない感じかと思っていましたが、Pro以外でもペンシル対応してるんですね・・まったく知りませんでしたが。しかもメルカリ。よさそう・・

積ん読のくだりの「0と0.1の違い」もなるほど、という感じでした。
ちなみにぼくの最近の積ん読解消法は「数ページだけでもいいから読んでおく(全部読まなくてOK)」というもので、数ヶ月前にふとその方法にしてみたらけっこう解消されていったのですが、これも「全部読もうとしない」という点では共通してるかもしれないですね。

あとKindle Unlimitedについて、これを読んで「なるほど〜」と思って少し検討したのですが、ただUnlimitedってどの本が対象なのかちょっとわかりづらいんですよね・・「登録すればこれが無料で読めるようになるよ〜!」という書籍リストが簡便&網羅的にチェックできたら、もう少し検討しやすいんですが・・。

逆にというか、Amazonプライムの範疇で読める「Prime Reading」でもそこそこ無料読みができて、かつUnlimitedとの対象書籍の違いもわかりづらいので、今のところPrime Readingに甘んじているのですが。

あと1回に10冊まで、というのも微妙に足かせになっているので、Unlimitedの方ならこれが50冊までOKになる、とかだったらいいのになあ、とか。

オーディオブック(audiobook.jp)、たまたまですが、ぼくもこれは以前から使っていて、なかなかいいですね。それこそサブスクで、月750円とかで聴き放題というのもお得感ありますし、けっこう聴きたいものも入っているので(ぼくの場合は韓国語学習系とか)重宝しています。*4

「文喫」の話題がありましたが、少し近いところでぼくは最近、フヅクエ(fuzkue)さんにめちゃ注目しています。

fuzkue.com

すでにご存知かもしれないですが、近藤さんもお好きではないかな・・と。ぼくはまだメルマガを読んでるだけで、実際のお店には行けてないのですが、そういう前提ながらもお勧めしたいです。店主の日記もスゴイです。

22日目: 森嶋さん

www.facebook.com

取材・執筆全体の流れをツールという視点から辿っていく感じで面白かったです。万井さんなど他の記事ともテーマが重なるところがあって、その部分の異同がまた良いですね。どんなレコーダを使ってるのか、どんな手順で原稿化してるのか、iPadをどう使ってるのか・・などなど。

ちなみにぼくも以前はオリンパスのICレコーダを使っていましたが、その後にソニーのやつに買い替えて、それからはメインがソニーのそれ、サブがiPhoneのボイスメモ。という感じになりました。(オリンパスは引退。あまりいろいろ持ち歩くのも紛失が怖くて・・)

あと原稿はひたすらテキストエディタ(MacVim)で作って、音声はExpressScribeで細かく調整しながら繰り返し再生。原稿の履歴管理はDropboxとGit。著者さんとのやり取りは何でもどうぞ(Word、メール本文への直書き、ファクス、電話等)。という感じかなあ・・

ああ、あと校正の赤字はほとんどプリントアウトした紙に入れてます。この辺はそれこそiPad使っていたら変わっていたかもしれないですが、今のところは数ページ分デスクに広げて、全体を眺めながら地図にメモを書き込んでいくように進めていく、という。
この際に使うペンは自分用の赤字ならフリクションで、著者さんやデザイナーなど他の人に渡すものならゼブラのSALASAクリップの0.5で赤を入れて(色が綺麗に出るので)、それをスキャンしたのをメールとかGoogleドライブに入れて共有、とか。

あとそんな風に紙を使う都合上、自宅にはプリンタ必須で、今使ってるのはエプソンのEP-805AW。エプソンのこれ系のシリーズは今まで不便とか不満を感じたことがほとんど一度もなくて、本当にありがたい製品です。

あとそうだ、ScanSnap(iX500)もまじマスト。これを買うまではそのプリンタ(複合機)で1枚1枚撮っていましたが、その時期のコストを心底後悔するぐらいスキャンがラクになりました。ラクかつ速い。以前の編集仕事では何十枚も一気にその赤字原稿をスキャンしたりしていたので・・この価格でこの活用頻度はほんとにコスパ良いどころの話ではなく、もしスキャンよく使うのに持ってない、という人にはお勧めできます。(今はもっと新しい機種が出てるかもですが)

23日目: 中薗さん

note.com

ライター業とITエンジニアを組み合わせ・かけ合わせて仕事することについて、という感じのお話でした。

こちらも具体的な話が満載で参考になりました。とくに、選択と集中のくだりで写真・カメラは捨てた(物理的にも方針的にも)というのは実際に身銭を切って体験しないと言えない話なので、すごく貴重な情報だなあと思いました。

「ライター×コンビニ店員」では価値を提供できないけど「ライター×金融関係」なら需要はあるはず、という論も非常に説得力がありますね。

考えてみると、ぼくが以前に音楽全集の編集とかやりながら趣味でプログラミングを始めたのも、そのかけ合わせ・組み合わせで独自のポジションを築く、という目論見があった気がします。

結果的には、そういう世界ではまさに中薗さんのように、深いレベルまで食い込んで記事化できる人たちがいるわけで、あまりにも甘い見込みというか、何も考えてなかったに近い気もしますが、とはいえそれをやっていたおかげで今の会社(IT系)に転職できた*5とも言えるので、方針としては間違ってなかったな、とも思います。

まあ極論すれば、誰もが何かしら複数の要素を組み合わせて自分のウリにしているとは思うのですが、それが他人にとって価値あるものになるのかどうか、という事が大事なのかなあ・・。

同記事は全編にわたって自分の問題意識と重なっているようで面白かったですが、とくに後半の「パラレルキャリアだからこそ生まれた価値」以降の話はマーカー引きまくりたい感じでした。依頼主の欲しい役割を果たせる人が希少であるほど、仕事は入りやすくなるし、交渉もしやすくなる。これはぼくなりに表現すると、クライアントと対等な関係になれる、という事かなとも思います。

ちなみに中薗さん、どこかでお名前を見たような・・と思ったら、「エンジニアHub」でよく記事を作っている方ですね。比較的最近の記事で、ぼくの関心に近いものだと以下など。

じつはぼくは以前にこういう記事を作ったのですが、

山口の公共施設から世界最先端のアートを発信! ― ITを駆使して文化事業をハックするYCAMの取り組み - GeekOutコラム

これはぼくにとって初めてWeb媒体に掲載する取材記事だったので、肌合いが近いエンジニアHubの記事をいくつも参考にしていまして、そのときに中薗さんの記事も読んだなあ、と思い出しました。その節はお世話になりました・・。

24日目: ひうらさとるさん

note.com

おお、エッセイ漫画、今回はバラエティに富んでいるなあ・・などと思いながら読み始めて、どこかでお名前聞いたことがあるような・・と思ったら長年ご活躍の先生でした。光栄!

漫画家になれたのは、曖昧で抽象的な「夢」を追い続けたからというよりも、具体的に好きな状況・環境を実現するために着実に各種計画を立てては実行してきたから・・みたいな話だと思いましたが、いやあ、その実現したい状況はまさにぼくも超完全に一致するのですが(クーラーのきいた部屋であたたかい布団で漫画を読んで飲食)、でもそのための計画を着実に実行するのか、しないのか、という間には深くて長い河が流れているというか・・その実行の力がすごいなと思います。

最近時々思うんですが、テレビとかで見るわかりやすい物語では、つねに主人公はまず夢を思い描き、憧れを抱き、それを追い求める過程で挫折を味わい、しかし最後には成功を果たしたり、あるいは壮大な失敗を味わったりといったドラマを経験するわけですが、実際の人生ではそういう最後の「結論」に行き着かないまま死んでしまうことも大いにあるというか、むしろその方が大半かも、と思うんですよね。

言い換えると、たとえばぼくは普段ダラダラTwitterを見ている時間が長くて、ただボーッとしながら、でもそれが人生の目的というわけではないから、「もう少し休んだらなんかやる」というモラトリアムを過ごしているわけですが、その時ってじつは頭の中で、半ば無意識のうちに「人生というものは、いずれにせよ最後に成功なり失敗なりの結論がやってくる。今はあくまでそれに行き着くまでの途中段階である」とか、「そのうち放っておいてもドラマティックな展開がやってくる」みたいに思ってるフシがあって、でも実際にはそんなものが来る前に、地道にアクションを積み重ねていないとそういう変化や結果は手に入らないんですよね。

その「じっとしていても何かが手に入るはず。それが人生だから」という思い込みをどう打ち破ったらいいのか、地味だけど確実な仕方で仕事を積み上げていく、ということをどうしたらやっていけるのか、みたいなことをこちらの漫画を読みながら考えていました。

25日目: モーリさん

medium.com

最終日。Mediumを使っての、テキストエリア(編集画面・入力欄)の話でした。

ぼくはMediumとnoteってほとんど同じような編集画面だと思いこんでいましたが、なるほど、たしかに簡易記法(リストなど)はnoteの方ではサポートされてないですね。

それらは行(段落)にカーソルを入れると「+」からメニューを選んだりできるので、共通点は「行ごとのWYSIWYG」みたいな感じでしょうか。

で、おそらく現時点の結論的には、そのMediumの方で実現されているような「行ごとに編集できて、かつ簡易記法をサポートしてる」みたいな、「サクッと書いてシュッと共有するための仕組み」がますます洗練されていけばいいね、みたいな話かなと思いながら読みました。

ぼくが持っていた今までの観点では、ScrapboxやGoogleドキュメントって「編集画面イコール完成画面」で、一方のMediumやnoteって一見編集画面が仕上がりそのままのようでありながら、実際には公開するために投稿ボタンとかを押す必要があるので、「編集画面ノットイコール完成画面」であって、その違いで考えていたんですけど、たしかに「行(段落)ごと vs 画面全体」あるいは「WYSIWYG vs 簡易記法(Markdown的な)」という観点で分けていくのは新鮮というか、面白いなと思いました。

ブログを含む文書共有をいかに手軽に、ストレスなく実現できるか、というのはぼくもよく考えるんですけど、たしかにその「ボックス型」(簡易記法+行指向編集UI)にひとまず収斂していく感じはあるかもしれないですね。あまり緻密には作り込めないけど、ほどほどにカスタマイズできて、何もしたくなければそのままでも大体いい感じになる、という。

まあぼく自身は、今書いてるこの記事も含めて、普段はテキストエディタでわーっと書いて編集画面に貼り付けるだけなので、テキストエリアはあまり関係ないのですが、テキストエリアが進化してくれれば使うかもしれないし、その表現力も享受できると思うので、今後の展開(螺旋の先の風景)を楽しみにしたいところです。

終わりに

と、いうことで最後まで読みました&コメントしました。
後編の冒頭にも書きましたが、だんだん長くなってしまいまして、あと自分の話もどんどん増えちゃいましたね。まあ自分のブログなのでご容赦ください。

ぼくはこの企画が最初に発案されたときに、「やった方がいいですよ!」とモーリさんの背中を押した一人だったので、せっかくその企画に乗っかってくれた人たちの面白い記事が、十分に読まれないまま過ぎていくというのはどうしても抵抗があって、というのは単に自分が読んでなかったからそう思っただけかもしれないですが、なのでせめて自分は全部読んでみようと思って、とはいえただ読むだけというのも大変そうだから、「コメントするために(その前提で)読む」という方法で取り組んでみました。

と言いつつ、最初は全部コメントするつもりはあんまりなくて、というのも全部が全部自分の関心に合致するなんてことがあるわけないし、そもそもどう考えても大変すぎて、お金をもらっても引き受けないかもしれないような作業なので、だから本当はいくつか気になったものだけピックアップしようと思っていたんですけど、数本読んだ段階で「どれも面白いな・・これ全部コメントできるのでは」という感じになり、結果的にそうなった次第でした。

しかし思うに、本来ならこれって、各記事が公開された時点で何らかの通知がメールとかに飛んできて、その日のうちに読む、ということを毎日できたらよかったんですよね〜・・そういう設定って、このカレンダーに使ったAdventarのシステムではできないと思うんですが、Qiitaとかではできるんですかね・・。あるいは、IFTTTとかの他ツールと組み合わせればできるのかなあ。そうなったらもっといいのに、と思っていますが。

それにしても、今回の参加者には面白い人がたくさんいて、皆さんの存在を知れただけでも良かったです。直接会える機会はなかなかないかもしれないですが、文章や漫画といった静的な情報を通して(あるいはそれだからこそ)、各著者のより深い部分というか、頭の中の光景を垣間見れた感じがします。

あらためまして、企画を主催してくれたモーリさん、参加された皆さん、ありがとうございました!

adventar.org

*1:もう1年近くやっていないので過去形。

*2:大谷能生のフランス革命

*3:参考: ヘルプのバージョン管理・編集・デプロイの仕組みを整備した話 - ヴェルク - IT起業の記録

*4:ただちょっと、たまにヘイト本みたいのも含まれているので、これだけなんとかしてほしいんですが・・。頑張って妙なしがらみ乗り越えてほしい。

*5:ヴェルク株式会社に入社しました - 103

書き手と編み手の Advent Calendar 2019 全記事レビュー(前編)

はじめに

昨年(2019年)の12/1からクリスマスにかけて開催された以下のアドベントカレンダー。

adventar.org

企画としては3年目で、ぼくは初回から参加していますが、なんと今年は3回目にして初の完走!(全日程の記事が公開された)

一昨年もあと2日・・という惜しいところまで行っていましたが、こちらは本家の?エンジニアさんによるカレンダーに比べるとゆるい雰囲気もあり、コンプリートはなかなか難しいのかな・・と思っていたので、今回の完走は嬉しかったです。

なんというか、これがコンプリートするのって、25本の記事がただ公開されたっていうだけの話じゃなくて、そこに別の意味が加わるんですよね。ボウリングで言ったら8本とストライクの違い。単に2本の違いではないわけですよ。プラスアルファの特典が生じる感じ。わかりますかね・・!

ともあれ、過去回もそうでしたが、まったく面識のない、非常にバラエティに富んだ人たちが参加していて、かつ内容がまたどれも豊穣というか、初めて知るような話もすごく多くて、とにかく面白いカレンダーが仕上がりました。

でもそれはそれとして、これがスタートした当初からずっと思っていたんですが、とりあえずぼく自身は普段からけっこう忙しいというか、気ぜわしいというか、せっかくそんなに面白い記事が並んでいるのに全然読むチャンスがないというか、気がつくと別のことをしてしまっていたりして、なんか「もったいない!」という気がすごいしたんですよね。

たとえるならば、少し離れたテーブルにおいしそうなお寿司がたくさん並んでるのに、手を付けられないまま置きっぱなしになってる・・みたいな感じ。

実際には、すでに各所ですごい話題になってるかもしれないんですが、少なくともぼくの周辺ではこのカレンダーがその価値に比してあまり話題になってないように思えたので、せめてぼくが食べられるだけは食べておきたいこのお寿司、という感じで、とりあえず全部読んでそれぞれコメントをしてみることにしました。

全25本、普通はこのすべてを一気に読み切るなんてことはないとも思うので、この記事をある種のインデックスというか、ディスクガイドというか、「へえ、そんな話なんだ、じゃあ自分の関心に近いから読んでみるかな」みたいに利用してもらってもよいかなと思います。(感想自体は偏ってると思いますが・・)

なお、何しろ大変な量の記事にそれなりの文章を費やしているので、前後編に分けることにしました。
分量的にはもっと分割した方がいいと思うんですが、あんまり分かれるとたぶんこのインデックスすら追うのが面倒になると思われるので、強引に2本だけに分けて詰め込んでいます。

どちらも冒頭に目次(見出し)を入れておきますので、そこから興味のあるところだけ読む、という風にもできるかと思います。

では、お楽しみください。

1日目: モーリさん

mohritaroh.hateblo.jp

本カレンダー主宰のモーリさんによる宣言文というか、本件のコンセプトを示したような記事ですね。

随分しっかりした背景があったんだな・・と、ぼく自身の認識というか、姿勢としては、エンジニアの人たちがやってるお祭り騒ぎの編集者版というか、文系バージョンみたいのをできたらいいのでは、ぐらいの感じだったので、モーリさんのこうやって論をきっちり立てていく感じ、ほんとすごいなと思います。というか、モーリさんはそういうカチっとした部分と、柔らかさ・勢いみたいのが両立してるのがすごいんですよね・・。ちなみに、ぼくは後者(勢い)をしつこさで補強するタイプだと自己分析してるのですが。

2日目: 門松

note103.hateblo.jp

私です。本来ならもうちょっと後の日に、皆の様子を見た上で登場したいところなんですが、今回はどうしてもカレンダーを完走させたい、過去2回とは違う地平を見たい!という気持ちがあったので、その気合を示す意味でもとりあえず「タスキをつなぐ」というコンセプトで2日目に入った感じでした。

この他に1〜2日はやることになるかな、と思っていましたが、幸いモーリさん以外は誰も重複せずに書かれていて驚きました。素晴らしい・・

内容的には、そちらにある通りだいぶなんというか、再現性が低い話な気もしますが、一部の人にはヒットしたのではないでしょうか。

ちなみに、もしあと1日書くとしたら、「カスタマーサポートと編集者の類似性」みたいなことについて書いたかなと思っています。編集者の人はけっこうカスタマーサポート、向いてると思います(笑)。

3日目: 京岡さん

note.com

Mac版Wordの校正機能の良さ・悪さについて。いや悪さというか、バグですかね。その事象はまったく知らなくて、いま手元のMac版Wordで確認してみたら、自分が使ってる最新版のだと、落ちはしないもののたしかにまったく反応しなかったです。つまり実質、ここで言われてるとおりカスタマイズ不能な状態。

ぼくはWordの校正機能ってけっこう便利だと思っていましたが、デフォルトの設定しか使ってなくて、そもそもカスタマイズして使えるってこと自体全然知らなかったので、それだけでもお得情報でした。まあ、現状のMac版だとその恩恵には与れないわけですが・・。

ちなみに、別マシンに古いバージョンのが入っていたのでそちらで設定を試してみたら、けっこう細かくカスタマイズできるんですねえ。今度これはこれで試してみようかと思います。

でもそれはそれとして、マイクロソフトさんにはぜひ修正がんばってほしいですね。

4日目: 高橋さん

emasaka.blog65.fc2.com

テック!な記事ですね〜。Rubyを使ってExcelの台割を作る、という感じでしょうか。

ぼくも以前に音楽全集を編集していたときは、毎回台割をExcel(というかGoogleスプレッドシート)で作っていたのですが、この記事で例示されているのとほとんど同じような作りだったので、ちょっと驚きでした。

ぼくのはもちろん手動で、誰に教わったわけでもなく必要に迫られるまま作っていたのですが、なんというか、行き着く先はみんなこんな感じなんですかね。たしかに機能的というか、必要な情報をわかりやすく構成したら最終的にあんな感じになるとは思うんですけど。

あとRubyでExcelファイルを生成・操作できるというのもまったく知らなかったです。Ruby以前に、プログラミングってそんなこともできるんですね・・。

ぼくは2013年に趣味でプログラミング入門して、その時はPerlから入ったんですけど、今はRubyの会社に勤めているので、その繋がりでRuby入門しているところなんですけど、ちょっとこれも手元で試してみようと思いました。

5日目: Piroさん

piro.sakura.ne.jp

なんと『シス管系女子』の結城さんですね。親しみやすい絵柄でよく存じております。あー驚いた。

もう本当にいろんな角度から楽しめるみっちりした記事でした。めちゃめちゃ面白い・・たくさんの人が何度も読んで参考にできる内容ですね。いやすごいな。

漫画を描く人、ライター、編集者、読者・・いろんな人が楽しめると思いますが、とくに書き手(描き手)と依頼者であるところの編集者には非常に参考になりそうです。

ちなみに、最初にあったDTPの件で思い出しましたが、ぼくが以前に担当していた本は長期シリーズで、最初はそれこそただWordでデザイナーさんに原稿渡せば終わりみたいな前提で話が進んでいたんですけど、内容的にものすごい複雑かつ精緻さを求められるものだったので、デザイナーさんが使ってるのと同じInDesignを自費で買って、InDesignのデータをデザイナーさんと送り合って作ったりしてましたね。

やっぱり、「そっちはそっち、こっちはこっち」みたいな感じで分離して進めるとどうしても必要な情報が不足して、結局変なものができて最後に困るのはお金出して買ってくれるお客さん。てことになってしまうので、そうならないように強引に頑張ってやってました。

だから編集部的にも、「べつにこっちがどんなソフト使ってるかとか、関係ないでしょ?」とか思ったとしても、共有できる情報はしておくに越したことないので共有しましょう、と思っています。

6日目: 川野さん

www.njpwfun.com

これもめちゃ面白かった!現在進行系でライター業をされている川野さんによる「書くのが嫌になったときにどうするか」という話ですが、ただタイトルはそうなっているものの、実際はもうちょっと大きな・深い話だなあと。

率直に言って感動しました。そのタイトルにある「どうするか」についてはぜひ記事を読んでほしいですが、単に行為としてそれをすればいいっていうよりは、それまでに経てきた道の上で結果的にそれが解消法になった、という感じかなと思いましたが。

これまでのお仕事歴もひと筋縄ではいかない多様なもので、今はプロレスの話をメインに書いているそうですが、そしてぼくは小学生の頃に長州力・天龍源一郎・木村健悟などによる試合をテレビで見ていたという以外あまりプロレスの知識はないのですが、これを機に(まずは同ブログの読者登録から)プロレス再入門してみようと思いました。

7日目: zokkonさん

zokkon.hatenablog.com

ネット上でのお付き合いはだいぶ長いと思うのですが、こんな風に記事について感想を述べるのは初めてかも?
辞書の編集をされているのは知っていましたが、あと時々辞書関連の記事をブログで読んだりもしていましたが、こちらの記事ではものすごく具体的な話が読みやすく整理されていて、面白かったです。

序盤で触れられている『舟を編む』、ぼくは映画のTV放送を2回ぐらい見ましたが、まあ、泣きましたよね。なんであんなに泣いたのか・・主人公はべつに報われない役とかでもないのに、ひたすら地味・地道な作業をしている自分とリアルに重なったのか、普通に何度も泣きました。

で、そんな映画との違いを示すようにして、よりリアルな(といっても原作が間違ってるという意味ではなく、実在する現場の別の側面を知らせるように)具体的な作業や考え方が綴られていて、とても貴重な話だと思いました。

とくには、プログラムが介在する余地がけっこうあるんだな、と。あとは最後の「悪い例」が非常に印象的でした。

8日目: ハトコさん

hatoco.hatenablog.com

未知の世界でした。iPadは一応、最初に出たやつと、miniの昔のを1台ずつ持っていますが、どちらも「んー、重い」(物理的にも動作的にも)という印象しかなく、なんというか、アーリーアダプターならではの悪いクジを引いてしまったのかな・・と記事を読みながら思っていました。

最近の、とくにペンシルやProが出て以降のiPadは全然体験が違うんですかね・・(そもそも最近じゃないですか)

ぼくの周りでもiPadを常用している人が何人かいて、便利にフイフイ画面を操作しているのを見ると「へえ〜」とは思うんですけど、どうも上記のトラウマがけっこう大きくて。
1ヶ月リースで1,980円(税込)ぐらいで体験使用させてくれるサービスとかあれば使うのに!

最後のモーリさん、笑いました。なんという名編集者ぶり!知らないところで活躍されていたんですね・・ありがとうございました。

9日目: 風穴さん

windhole.hatenablog.jp

今年のbuildersconでようやく初対面させて頂きましたが。
builderscon 2019に行ってきた(2)〜本編初日〜 - the code to rock

風穴さんは一昨年のこちらも面白かったです。
windhole.hatenablog.jp

テーマはある意味で抽象的・全般的な感じですが、話の内容はすごく具体的で、引き込まれました。

じつはというか、ぼくが風穴さんを初めて知ったのは高橋信頼さんに関する記事を読んだときで、少しそれとつながる感じもあるかなと思いました。

あと、元はフリーランスの編集者として様々なプロジェクトに参加していたという話や、以下の部分など、

特に私は、IT業界に何の繋がりもない(大学にも行かなかったので)状態で編集者になりました。何かの企画が持ち上がると、先輩編集者たちは「同期の知り合い」「恩師の伝手」などを駆使して著者を見つけ出してくるのに比べ、徒手空拳、何の繋がりも持ってなかったので大変でした。

ぼくもどこかの出版社に勤めたとか、継続的に頼れるコネみたいなものはとくにないまま、ある意味流れに任せて行き着いた先々で仕事をしていた感じだったので、ちょっと通ずるところを勝手に感じたりしました。

タイトルにも繋がる「すべてはコミュニティにある」の部分には、なかなか言葉にされにくい大事な話が詰まっていると思います。

10日目: mktredwellさん

mktredwell.hatenablog.jp

こちらも面白かった!&参考になりました。「翻訳メモリ」と「Amazon Translate」はどちらも知らなかった〜・・。

Google翻訳と合わせて仕上がりを並べてくれているのもすごくわかりやすくて、面白かったです。

また自分の話をしますが、以前にGoogleドキュメントの文字起こし機能について一生懸命まとめていたことをちょっと思い出しましたね・・とくに2つめのこれ。

21世紀の文字起こし(2) - the code to rock

この機会にAmazon Translate、チェックしてみたいと思います。

11日目: narumiさん

note.com

非常に共感するところがありました。ぼくも少し前に技術系の雑誌に寄稿したことがあって、その時はたしか書く前から(ほぼ依頼段階で)「終わったらシェアしてください!」みたいなことを言われていて、ただそれについてはとくにイヤな感じはなく、何しろTwitterの知り合いの大半は技術系の人だし、実際「見て見て!すごいでしょ!」と言いたい内容だったので、自然にシェアしたりブログで宣伝したりしたのですが。

しかしそういう状況ではなく、とくに同意もないまま執筆仕事の中に著者自らの宣伝行為も含められてしまうと、ちょっと違和感というか、どちらかというと対応したくない感じになりますね。

考えてみれば、上記の自分の記事にしても「頼まれたから」というよりは、界隈における自分の存在感を上げるためというか、自己アピールを目的にやったことであって、編集者や出版社がやるべきことを代わりにやったわけではないので、もし気が乗らなかったらやらなかったと思いますし、実際に編集さんから「シェアしてください」と言われたときも、「そうですね、自分でその気になったらやりますね」という感じだったことを今書きながら思い出しました。

記事で書かれている女性ライターさんに少し近いかなと思うのは、依頼内容にそれ(シェアすること)も含まれているなら、そのことを事前に編集部から明言してもらった上で、対応期間なども含めて報酬にその内容が反映されていることを確認・同意する必要があるだろうということですね。逆に、そういうのはナアナアで、雰囲気的・空気的についでにやってほしい、ぐらいの感じだったら、やらなくてもまったく責任を問われる筋合いはないよね、と思います。

自分の記事や本などを宣伝することがステマやPRになるとまでは思わないですが、それよりも自分の貴重な時間や労力、あるいはツイートするときにはその文章をそれなり推敲するなどして技術を注ぎ込むわけなので、やっぱりそれを非自主的に(頼まれたから、という理由で)やるんだったらそれ用の対価が必要だろう、という。

なので、もしそういう対価が生じないんであれば、編集さん的にはせいぜい「よかったらシェアしてください」ぐらいにとどめておいて、著者さんがそれに対応してくれなくてもそれ以上は踏み込めない(諦める)という前提を持つべきだろう、という意見です。

12日目: 浅野さん

www.facebook.com

ゲーム制作の現場のリアルな情景が描写されていて、面白かったです。個々の作業は断片的で、でもそれを俯瞰して全体を見ている目も必要、という感じでしょうか。

短期記憶と長期記憶の組み合わせ、という話を読みながら、以前に大谷能生さんが言っていた本の書き方に少し近いかなと思いました。具体的には、執筆中にその原稿で使えそうなネタが何か浮かんだら、それを目の前の少し先のあたりの空間にぶら下げておく感じでちょっと覚えておいて(実際に何かに書いてぶら下げるとかではなく、そういうイメージを持つという話)、その上で全体を書き進めながら、その吊り下げておいたトピックが必要になったときにサッと使う、みたいな。(わかりづらいですか)

ぼくは結構、なんでもかんでもメモするタイプで、メモすることで安心して忘れられる、みたいなスタイルを取りがちなんですが、その話を聞いて「うわーそれ、自分的にはリスキーだけど確かにそうでもしないと書き進められないレベルってあるかもなあ」と思ったことを思い出しました。

逆にというか、その短期記憶用のネタの方が膨らみすぎそうな場合はとりあえずメモしておくとか、それが「後で読んで全く意味が分からないこともある」という話の方は僕もめっちゃよくあるので共感しました。で、それをメモしておくかどうか(サブの話がメインを上回るかどうか)の見極め、という辺りの話はじつにリアルというか、本職の雰囲気を感じられてとくに面白かったですね。

13日目: 鹿野さん

note.com

オンライン取材、へえ〜!と思うことの連続でした。へえ〜〜!

とくに以下、

オンラインミーティング終了から数時間後、録画・録音されたデータのURLが登録していたメールアドレスに届きます。

えええ、自動で録音・録画できるって、マジすごいですね、確かにこれは神機能!あーびっくりした。
具体的なテスト動画もすごいわかりやすくて参考になりました。

取材していて一番怖いのが、「録音しわすれる」「録音できていない」なのですが、この心配がないというのが本当に安心ですし、文字起こしを外注するときにURLを教えるだけでよいというのも地味に便利です。

いやあ、ほんとにイイですね、それは。

あとは「参加者は全員マイク付きのヘッドフォンを使用すること」というのも同感です。やっぱり「音」がダメだとめっちゃツライ感じになりますからね。全員同じ部屋にいても、全員ヘッドセットすべき。

たしか、以前に読んだ何かの記事でもそういう事を言っていたなあ、ソニックガーデンの倉貫さんの・・と思ったら、記事で紹介されている参考記事がまさにそれでした。

テレビ会議を劇的に円滑にする簡単なノウハウ | Social Change!

その他にもTipsが満載。隣り合ってログインすると音がずれるとか(笑)確かにある!それぞれのマイクに入っちゃうんですよね。

あと、以下も完全に同意です。

そう遠からぬ未来に

オンラインで取材

同時にクラウドに記録
同時に文字起こしも完了

ライターは文字起こしデータから構成・編集をする

そんなワークフローが現実のものになるように思います。

もちろん記事の作り方としては、文字起こしを使わずにやる人もけっして少なくないわけですが、そういう場合だって音声や文字起こしがあって困るわけではないですからね。多少お金がかかっても、そういう状況を実現できるならやってしまうなあ、と思います。

前編の終わりに

以上で前編は終わりです。全25本のうち、13日目までを扱いました。

後編は以下です。ぜひどうぞ。

note103.hatenablog.com

年末年始の記憶、日記にまつわる可能性

  • 昨日金曜(12/27)に仕事納め。会社員になって二度目の年末。
  • 昨年はそれでも掛け持ち期間というか、フリーの頃に引き受けていた仕事がまだこの時期は続いていて、どちらかというとそのピークというか、12月・1月・3月ぐらいに分割して入稿的な作業があったので、まったく年末感はなかったのだけど、今年はそういうのがないので、ほんとにどれだけぶりか、というぐらい物凄い久しぶりに外的なタスクというのがない。
  • 外的なタスクがなかったら何があるのか、といったらプライベートの方ではまあ、家族人としてのタスクみたいなことは結構あって、それはそれで忙しいのだが、それでも他人との約束事、とくにライティングや編集のような、その向こうに大勢のお客さんや関係者が腕組みをして待っているようなお仕事がナイというのは、やはり精神的にだいぶ違う。
  • 去年までの場合、むしろというか、年末年始というのは仕事の濃度・密度が高い時期で、大体クライアントというのは会社勤めの人がほとんどなわけで、彼らは12/26とか28とかで納まって、翌年の1/4とか6とか8とかから再開するわけだけど、その間にはパッタリ物事が止まるので、それが受注側からすれば安心感につながるというか、具体的には集中を阻害するような突然の連絡とかが来なくなるので、作業にかなり没頭・沈潜できたりする。
  • とくに、scholaの仕事ってなぜか年明けに印刷所へ入稿するようなケースが多く、だから3月末とかにリリースされるわけだけど(というか年度末のそこから逆算して入稿の締め切りが年明けになるということなんだけど)、ともあれそういうわけで僕的には原稿のかなり終盤の大事な作業を一気に年末年始で精錬・洗練して、それでできたものを年始にバッと印刷所へお渡し、みたいなパターンが多かった。
  • あとは何度か年始にscholaの座談会をやるようなこともあって、そうなると年末年始にその準備というか、リサーチみたいなことをしておく必要があり、というのも役割的に座談会の進行というか、話の途中で流す曲をこちらでPCに準備しておいてその話題になったらサッと流す、みたいなこともあったので、そういう時にすぐ対応できるように広めに勉強しておく、という感じで、そんな風に書きながら思い出すと、それなりに胃が痛くなるような日々を過ごしていたなと思ったりもするけれど、かつ実際には、なかなかそう上手く準備していたものが使われることもなかったり、逆に話題に出たものを準備できていなくて悔しい思いをしたり、という失敗の経験ばかりが思い出されてしまうのだけど・・。
  • ともあれそんな年末年始ばかりだったから、こんな風に何も考える必要がないのは久しぶり。まあ上記のとおり、プライベートではいろいろとあり、それはそれで大変なわけだけど、でも今までにあったそういうのは無くなったなあ・・と。
  • ただscholaや編集仕事が無くなったとしても、ちょっと気を抜くとぼくは「それ手伝いますよ」とか「これやっておきましょうか」とか、調子よく引き受けたり提案したり、立候補したりしがちなので、たとえばITカンファレンスで発表するとか、あるいは面白そうな雑誌に寄稿するとか、そういうのを簡単に受けがちなので、まあたしかにそういうのが自分を高みへ引き上げることは否定できないものの、しかしやっぱりそれ、やりすぎると本当に自分がやりたかったことって、それで良かったんだっけ、限られた人生、それでも大丈夫だったんだっけ、とか思わなくもないので、やはり気をつけないと、とは思っている。
  • さてこのような、何ということもない日記を、これからは、もっと少ない分量でも良いからたまに書いていきたいなあ、と思っている。これはたぶん、少し前からフヅクエというお店の店主である阿久津さんの日記を、彼のメルマガで読み始めて、その影響がすごくある気がしている。

fuzkue.com

  • 阿久津さんのことは、その日記本の存在ごと以前から知ってはいて、気にもなっていたのだけど、

  • 最近ふと、本当にどんなきっかけがあったというわけでもなくあらためて気になって、Webサイトを見るうちにこれ、メルマガ読んでおくべきでは、それもお金を出して読んでおくべきでは、と思ってそれで読み始めていて、それがすごく良く、また読みながら、「これって自分でもできるかもなあ」と、別に同じことをしたいという意味ではなく、なんというか自分なりの仕方でできるかも、と思って、ということ。
  • 「自分にもできるかも」なんていうと、ちょっとその阿久津さんの文章を軽く見ているように思われてしまうかもしれないが、そうではなく、まだやってもいないことを「できるかも」と思わせることができるというのは物凄いことで、それはサッカーとかのスポーツ選手が普段から子どもたちに対して成し遂げていることで、「これって自分でもできるかも」と思わせるというのは、誰にでもできることではまったくない。すごい才能だと思う。
  • 阿久津さんといえば、元々その存在を知ったのは内沼晋太郎さんがいたからで、内沼さんとは直接の面識はないけれど、もちろんというか、彼はぼくをscholaに招いてくれた後藤繁雄さんの教え子というのか、僕からしたら兄弟子のような人で、だから以前からその活躍は知っていたけれど、その内沼さんが最近は「日記屋」という話をよくしていて、

bookandbeer.com

  • なるほど、日記か、日記くるのか、みたいな感じでそれもあって、かつちょうど最近よく特定のタイトルを付けてブログを書くのが何となく面倒になり、日付だけのタイトルで、その時点で思っていることをメモしておく、というブログのスタイルを時々試していたこともあって、いろいろ重なりつつそういうのを始めているという感じ。
  • そういうのを、べつに毎日じゃなくても、とはいえそれなりに頻繁に続けられたらいいんだけどなあ、という。
  • 何も書くことがなくても、何もしていない日、何も考えてない日というのはあまりないので、ほとんど何もないまま、考えないままとりあえず書き始めるというのはイイのではないかな、と。
  • それは実際には、たぶんルーティンの「きっかけ」として大きめの意義を持つ可能性があり、それはひとつの「出口」のようなもので、たぶん僕の中には出口を求めながらもそれがないから、というだけの理由で外に出ていかない、そしてそのまま失われていくだけの「何か」があるように思われて、それはなんというか、せっかく福岡に行ったのに、福岡に行かなければ絶対に買うことができなかった何かを買わずに帰ってきて、帰ってきてから、「ああ、あれが欲しかったのに」と気づいて、でももう福岡にはいないし、取り寄せとかも不可能だから結局「そこにいるときに買うしかなかった」ということを思い知りながらただ諦めるという、そんな感じで「その時じゃなかったら絶対に表現できない、表現されうる何か」というのがあるはずで、そういうのを表現する可能性が少しは高まるんじゃないかなあ、みたいなことを考えている。

コスパがいい人の価値

コスパのいい人

  • 先日、会社帰りに市ヶ谷駅近くの文教堂書店に寄った。初めて行ったが、大量の本があり、感動した。図書館のようだった。
  • いわゆるチェーン店だから、しょうもない本も多いはずだが、それを補って余りあるほどの良いセレクト、手のこんだ企画、そしてやっぱり分量。
  • 雰囲気もなんだか薄暗く、それは古いからだろうが、でも大学や地元の図書館のようで、居心地がよかった。
  • こういう「良さ」はあまり共感されづらい気がする。この価値は、経営層や地主にもわかりづらいのではないか、とふと思った。新宿ジュンク堂もそういう店だった。今度は福岡ジュンク堂も入居ビルの建て替えにともない一時閉店することが決まっており、再開できるかは不透明らしい。
  • 高い価値を提供しているのに、それに見合う評価を得ていなかったり、サービスの価格が安かったりする状況が少なくなくて、そのような状況に遭遇するたび「コスパがいい」と感じる。でもそれは、必ずしも良い意味ではなく、もちろんそのように感じさせる高い価値を提供してくれる人に対してはリスペクトしかないが、それでも本来の価値に見合った価格になっていないことについては、それがいつまでも続いてほしいとは思えない。
  • 理想的なのは、高い価値には高い価格が設定されて、その価値の提供者に対して過不足のない報酬が支払われることだ。良い書店を作る良い書店員には、相応の評価と高い給料が払われてほしい。このような価値の高さを、上に立つ人ほどきちんとすくい取ってほしい。その責任がそういう人たちにはある。
  • また我々利用者にできることは、コスパがよいならその内容に見合うだけの利用を積極的にしていく、ということだろう。

韓国語書籍2冊

  • どちらも非常に面白い。前者はDVD付きで、以前にNHKハングル講座で放送されたミニドラマの評判があまりにも良くてDVD化されたとか。もちろん、語学テキストの役割も果たしている。ドラマの内容もよいが、書籍にある文法等の解説も非常にオリジナリティがあり、それこそコスパがいい。関わった人皆の熱意を感じる。
  • 後者もとても良い本。これはKindle版もあり、またaudiobook.jpで音声も販売しているので(といってもサブスクリプションであり、音声データは買えないようだが)それらも一緒に購入した。Kindle版はPDFだったら見送ったが、きちんとリフロー型になっていて、この辺の手のかけ方も素晴らしい。

差別・ハラスメント

  • ここ数日はハラスメントに関わるトピックがTwitterでいくつか話題になった。日本で言うと、何より伊藤詩織さんの勝訴があり、また身近なものとしては、或るIT勉強会でハラスメントに類いするインシデントがあり、また世界的には、JKローリングがトランスフォビアなツイートをしたということがだいぶ話題になっており、これをよく見ていた。
  • JKローリングの話題については、こちらの方の一連の解説がとてもわかりやすかった。

  • これは非常にハイコンテキストな話題というか、対象のツイートだけを見ていたら、英語の壁・ニュアンスということも含めてかなりわかりづらい事象だと思えるが、その辺の解説も上記のツリーに含まれる以下以降で丁寧に説明されている。

  • またこれもその中から辿れるが、なるほどと思える話だった。

  • 実際、マーク・ハミルなどはそのコンテキストを読み取れず、うっかりLikeを付けたら炎上してしまい、「いやそんな意味だとは知らなかった」と謝罪したらしい。英語人ですら読み取れない意図を、今回の件に初めて触れた日本人がすぐに理解する、というのはそれなりに困難なことだろうな、とハッシュタグのいろいろな反応を見ながら思った。(とはいえ半数程度の人は適切に読み取れているようにも感じたが)
  • ちなみに、これほど緻密な論理によるものでないとしても、たとえば上記のIT勉強会で生じるような、無意識のうちに行ってしまう差別についてはこの動画が非常に勉強になる。今でも差別の指摘や受け止め方といったら、最初にこれを思い出す。*1

www.youtube.com

  • それを見ても思うことだが、誰かが無意識のうちに行ってしまっている差別について、「それ、差別だよ」と指摘するのは非常に難しいというか、その指摘を機能させるための高い条件をクリアしている必要があって、一言でいうと「相互の信頼関係」がないとその指摘は効果を発揮しづらい。逆にいうと、そういう指摘を受け入れられる事態があるとすれば、それはたとえば自分が尊敬する相手から言われたときで、しかしそこから関係が離れるほど受け入れることは難しくなり、ましてや攻撃的に、叱られるように、あるいは馬鹿にされるように指摘されてもなかなか受け入れることはできないだろう。
  • 「言ってることは正しくても言い方が間違ってる」とはよく聞く話で、その指摘の目的が「問題を解決すること」なのか、それとも「自分より無知な人にマウンティングを取ることによって充足感を味わうこと」なのか、あるいは「得体の知れぬ『悪』を叩きつぶすことによって自らの心の平穏を取り戻すこと」なのか、よくよく自覚した上で事にあたる必要がある。
  • いかに自分の指摘が正しいもの(世界標準)だったとしても、その声を聞く側がそれを受け入れやすいように、「これは我々が抱えている共通の課題を解決するための指摘なのだ」と、誠実な態度とともに伝えなければ求める効果は得られないだろう。

*1:以前はこれを紹介する秀逸な日本語ブログがあったのだけど、今紹介しようと思って見に行ったら非公開設定になっていた。残念。